就労移行支援で就職できなかった人もいる?元支援員が事例と就職のためのポイントを紹介

就労移行支援事業所の利用を検討している人の中には、「就労移行支援に通って就職できなかったらどうしよう」と不安な人もいるかもしれません。

この記事では、就労移行支援を利用して就職できなかった事例と原因や、就労移行支援を利用して就職するためのポイントについて、元支援員である筆者がご紹介していきます。

この記事の監修者

メンタルエイド代表。サービス管理責任者、社会福祉士、精神保健福祉士、ジョブコーチ、心理カウンセラー、幼稚園教諭。就労移行・就労定着支援サービスを行う事業所に12年従事。120名の障がい者就労の実績があり、面談は1,000人以上。多くの面談実績からオリジナルの上村式認知整理面談技法を発案。

目次

就労移行支援事業所を利用して就職できなかった人はいる?

就労移行支援を利用しても、必ずしも全員が就職できるわけではありません。

就労移行支援は障害や難病のある人が就職できるようにサポートするサービスではありますが、利用者の体調や適性、もしくは事業所のサポート内容によっては就職につながらないケースもあります。

就労移行支援事業所の就職率・就職実績は?

厚生労働省のデータによると、2022年度に就労移行支援を利用して就職した人の割合は『57.2%』でした。

一定数の利用者は就職に結びついていないことがわかりますが、就職率は年々上昇傾向にあり、5年前と比較すると約10%上昇しています

また、2022年度に就労継続支援A型事業所を利用して就職した人の割合は『26.2%』、就労継続支援A型事業所を利用して就職した人の割合は『10.7%』ですから、就労移行支援事業所の就職率は他の障害福祉サービスと比較して高いことが分かります。

(参考:厚生労働省 「一般就労への移行者数・移行率の推移(事業種別)」)

就労移行支援を利用して就職できなかった事例と原因

就労移行支援を利用して就職しなかった事例とその原因について解説します。

もともと持っていた疾患が悪化した

持病の内科的な疾患が悪化して入院になった、うつ病が悪化して通所が困難になった、というケースです。

就労移行支援では体調やメンタルが安定するようにサポートしますが、それでも様々な要因で悪化してしまうことはあります。

特にメンタルの悪化は回復のペースが個人によって異なり、就労移行支援が利用できる期限内に体調の回復が見込めない場合は、市町村と相談して一度退所をして体調が安定してから再度使用する形をとる場合もあります。

就労意欲が低いまま、無理して通所をしていた

「就職したくない」という本心を隠しながら、周囲に言われるまま就労移行支援の通所を続けていた、というケースです。

就労移行支援のスタッフや家族は本人のためだと思って就職活動のサポートをしますが、それが本人にとっては負担となり、心身の不調を招くことがあります。

真面目な人ほど周囲の期待に応えようと我慢し、最終的にメンタル不調を起こして通所すら困難になることがあります。

スタッフと信頼関係が築けなかった

スタッフが利用者のニーズに対応しきれず、信頼関係が築けなかったケースもあります。

就労移行支援は、事業所ごとに支援が得意な分野が異なります。

利用者のニーズと、事業所が対応できる支援にミスマッチが起こると、不信感につながってしまいます。

スタッフに不信感がある状態で良い支援を受けるのは難しく、退所という選択肢を選ぶしかない場合があります。

就労移行支援を利用して就職できなかった場合の選択肢

就労移行支援を利用して就職ができなかった場合は、いくつかの選択肢があります。

再チャレンジのための準備期間を設ける

体調やメンタルを崩してしまった場合は、十分な休息を取ることが重要です。一旦就職活動を休んで、体調やメンタルを整える準備期間を設けることも一つの手段です。

他の障害福祉サービスを利用する

就労継続支援A型やB型など、より柔軟な働き方やトレーニングを提供する他のサービスを利用することができます。

これによって、より自分に合ったステップを踏んで就職を目指すことが可能です。

就労移行支援の事業所を変える

スタッフと信頼関係を築けないと感じた場合は、今の事業所が自分に合っていない可能性があります。

事業所を変えることで、自分のニーズにあった支援が受けられ、再び就職へのステップを踏めるかもしれません。

就労移行支援を利用して就職するためのポイント

就労移行支援を利用して就職するためには、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。

①ミスマッチのない事業所を選ぶ

事業所ごとに得意とするサポートの分野が異なります。

例えば、パソコンスキルを専門的に教えている事業所があれば、軽作業が中心の事業所もあります。

自分の希望やニーズに合った事業所を選ぶことが、就職を成功させるための鍵となります。

②自己理解を深める

自己理解を深めるプログラムを受講して自分の得意・不得意を知ることで、自分に合った職場環境がわかるようになります。

このことによって適切な就職先を選べるようになり、就職できる可能性が上がります。

③就職に必要なスキルを身につける

仕事で必要なスキルとは、パソコンのスキルや、作業系のスキルだけではありません。コミュニケーションスキルやビジネスマナーは、多くの企業で求められるスキルです。

また、就職活動においては、ご自身の障害や病気の特性を理解し、サポートを受けたいことをしっかり伝えられることも、多くの企業で求められます。

そのため、実習や就労移行支援のプログラムを通して、自分の適性や職場の雰囲気、サポートの頻度などを理解することが大切です。

④焦らず自分のペースで就職活動を進める

就職活動をする上で、体調やメンタルを整えることは何よりも大切です。

他の利用者と比較することなく、自分に合ったペースで就職活動を進めることで、より良い就職につながる可能性が高まります。

就労移行支援を利用して就職した人の例・体験談

ここからは、「就労移行支援を利用したからこそ就職できた」という体験談をご紹介します。

20代女性(精神障害)の口コミ・体験談

就労移行支援に通所する前は、先が見えない不安な気持ちでしたが、相談できる人がいなくて時間だけが過ぎていくような状況でした。

不安から逃れるために無理して行動し、体調を崩したこともあります。

通所開始後は、わからないことが質問できる環境になり、先の見えない就職活動への不安が軽減しました。

また、自分自身の障害特性を分析できるようになって、就職までに何をしたらいいのかが明確になり、行動しやすくなりました。

自己理解が進むことで、気持ちや体調を整えやすくなったのも嬉しかったです。

今は事務職として働いています。就労移行で身につけたスキルを使って自分を整えていきながら、長期就労を目指しています。

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20代男性(精神障害)の口コミ・体験談

就労移行支援に通いはじめた直後は、「もっと早く就職したい」と自分を追い詰めてしまい、体調を崩すことが多かったです。

スタッフと相談するうちに、自分が何をしたいのか、そのためにはどうするべきなのか、という問いに真剣に向き合うことができました。

信頼できるスタッフばかりで、いつも適切なアドバイスをくれ、そのアドバイスによって自分自身の理解が深まり、就職活動を進めることができました。

その結果、無事に就職でき、スタッフには感謝の気持ちでいっぱいです。就職後もサポートしてもらえるのがありがたいです。

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40代男性(精神障害、発達障害)の口コミ・体験談

以前勤めていた会社では、上司から言われたことに対して自分の意見を言えず、悶々としていました。次第に人間関係がうまくいかなくなり、会社を辞めることになりました。その時点である程度歳を重ねていたこともあり、再就職できるか不安でした。

就労移行支援に通いはじめ、自分一人では見つけられない「強み」と「苦手」を確認することができ、特性に対する対処方法を見つけることもできました。また、「何のために働くのか」「自分のなりたい姿はどういうものなのか」といったことを深掘りすることができました。

 就職した今は、公私ともに安定した生活を送っています。就労移行支援の訓練のおかげで、周囲の人たちとうまくコミュニケーションを取れるようになり、順調に仕事を続けられています。

また、自分に自信がついたことでプライベートも充実し、家庭も円満です。このままのペースで続けていきたいと思います。

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都道府県別!就職実績のある就労移行支援一覧

都道府県ごとに就職実績のある就労移行支援事業所をまとめていますので、こちらも合わせてご覧ください。

  1. 東京都で就職実績のある就労移行支援
  2. 大阪府で就職実績のある就労移行支援
  3. 神奈川県で就職実績のある就労移行支援
  4. 千葉県で就職実績のある就労移行支援
  5. 埼玉県で就職実績のある就労移行支援

最後に

ここまで、就労移行支援を利用して就職できなかった事例と原因や、就労移行支援を利用して就職するためのポイントについて、元支援員である筆者がご紹介してきましたが、いかがでしたか。

体調やメンタルを整えて自分に合ったペースで就職活動を進めることで、より良い就職につながる可能性が高まります。また、ミスマッチのない事業所選びも大切です。

就労移行支援事業所の検索サイト『デイゴー就労支援ナビ』では、就職実績、職員の専門性、プログラム内容などを一覧で比較することができますので、ぜひご活用ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事を書いた人

社会福祉士。総合病院で医療ソーシャルワーカーとして8年間勤務した後に、就労移行支援事業所で12年間勤務。サービス管理責任者、生活支援員、職業支援員を担当。就労移行支援事業所では発達障害のある人を中心に約300人の支援に携わってきた。

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