障害や病気があり働くことが難しい方や、休職している方の中には、「就労移行支援事業所を探すときにランキングから選ぶときの注意点は?」や「他の利用者はどんな理由で通う就労移行支援事業所を選んでいるの?」といった疑問を持っている方もいるかもしれません。
この記事では、就労移行支援を利用したことがある人が事業所を選んだ理由をランキング形式でご紹介するほか、就労移行支援事業所のランキングを見るときの注意点や、自分にあった事業所を探すときのポイントを解説していきます。
利用した就労移行支援事業所を選んだ理由ランキング
ここでは、就労移行支援事業所を実際に利用している人が「今通っている事業所で働きたいと思った理由」をランキング形式でご紹介していきます。
1位は「見学や仕事を体験していて、よいと思ったから」が31.9%、2位は「働くための技術が身につきそうだったから」が23.6%となっており、上位2つの理由が全体の半分以上の割合を占めています。
理由 | 割合 | |
---|---|---|
1位 | 見学や仕事を体験してみて、よいと思ったから | 31.9% |
2位 | 働くための技術が身につきそうだったから | 23.6% |
3位 | 周りの人にすすめられたから | 13.0% |
4位 | 自分のやりたい仕事ができると思ったから | 12.6% |
5位 | その他 | 6.3% |
1位:見学や仕事を体験しみて、よいと思ったから
就労移行支援は、本格的な通所を決定する前に、見学や体験の期間が設けられています。見学でプログラム内容や就職までの流れなどについて説明を受け、「この事業所に通ってみたい」と思った場合は、体験期間で実際に通所をしながらプログラムを受けていくことになります。
見学や体験では他の利用者の雰囲気やスタッフとの相性など、パンフレットやホームページだけでは分からないことを確かめることができます。そのため、見学や体験を通して良いと思った事業所を選ぶ人が多くなっています。
2位:働くための技術が身につきそうだったから
ご自身の適正にあった企業等へ就職することは、就労移行支援事業所に通う目的の一つでしょう。ですから、働くためのスキルが身に付けられるかどうかは事業所選びのおおきなポイントになります。
就労移行支援のプログラム内容は事業所によって様々ですが、一般型とIT特化型、障害・疾病特化型の3つに大きく分かれます。
一般型の就労移行支援事業所では、自己理解や生活リズム・日常生活の管理、ビジネスマナーなどを学びます。こうしたプログラムに加えて、IT特化型ではプログラミングやWebデザイン等の専門的なスキルを学ぶことができるほか、障害・疾病特化型では発達障害など特定の障害や疾病に対する理解や困りごとへの対処法を身に付けることができます。
就労移行支援事業所のランキングから選ぶ際の注意点
インターネットでは就労移行支援事業所に関する様々なランキングが公開されています。これらのランキングを参考にして、ご自身にあった就労移行支援事業所を探すためには、以下のようにいくつか注意点があります。
- ランキングの評価軸
- 複数の情報を比較
- ランキングの信頼性
- ランキングの作成日
それでは、就労移行支援事業所のランキングを参考にして選ぶ際の注意点を一つひとつ確認していきましょう。
注意点①ランキングの評価軸
ランキングがどのような基準で作成されているかは必ず確認してみてください。就職実績、プログラムの内容、交通費・昼食の補助、スタッフの資格など、就労移行支援事業所を選ぶ基準は人によって異なるため、自分にとって重要な要素が含まれているかをチェックすることが大切です。
注意点②複数の情報を比較
先ほどお伝えしたように、評価軸はランキングによって異なります。そのため、一つのランキングだけに頼らず、他のランキングや口コミ、事業所検索サイトといった複数の情報源を比較することで、より客観的な視点で事業所を選ぶことができます。
注意点③ランキングの信頼性
ランキングがどのような情報をもとに作成されているのかどうか、信頼できる情報元なのかどうかは確認しておきましょう。例えば、アフィリエイトサイトは収益を目的としているため、特定の事業所を優先的に紹介している可能性があります。中立的で信頼性の高いランキングは、第三者機関や公的機関による評価に基づいていることが多いです。
注意点④ランキングの作成日
ランキングは更新されることが多く、古い情報では現状を正しく反映していない場合がありますから、いつ時点の情報なのかは確認しておきましょう。
特に就労移行支援事業所の就職人数や就職後の職場定着率といった就職実績は、年によって違いがあるため、最新の情報をチェックしておいた方がよいでしょう。
自分に合った就労移行支援事業所を探すポイント
自分に合った就労移行支援事業所を探すためには、見学や体験をする前に、気になる事業所を2〜3つ絞り込む必要があります。ここでは、見学をする就労移行支援事業所を探すためのポイントをご紹介していきます。
こうしたポイントを比較して2~3つの事業所に絞り込んだら、通いやすさや環境、スタッフや利用者の雰囲気を確認するためにも、ぜひ見学・体験の申込みをしてみてください。
就職後の職場定着率
就労移行支援事業所の利用期間は2年間と決まっているため、「できるだけ就職したい」という思いから就職するまでの利用期間を選ぶ際の基準としている人もいるかもしれません。就職するまでの期間が短くても、生活リズムが整っていない・自己理解が進んでいない状態で就職してしまうと、就職後に同じ職場で働き続けるのが難しい場合もあります。
就職後の職場定着率は適切なタイミングで就職活動を行ってくれる事業所であるひとつの指標になるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
就職実績
就労移行支援を利用する目的は、ご自身の適性に合った企業や職種へ就職をすることですから、就職実績は事業所を選ぶ上で大切なポイントになります。
就職実績は、「直近数年間で何人の利用者が就職をしているのか?」や「就職半年後に仕事を続けている人の割合(職場定着率)はどのくらいなのか?」、「就職するまでの平均期間はどのくらいなのか?」といった観点から比較してみるのがおすすめです。
昼食や交通費の補助
就労移行支援事業所に通っている間は、原則アルバイトなどで働くことができません。少しでも利用者の経済的な負担を減らす観点から、交通費の補助や昼食の提供を行っている事業所もあります。
また、交通費や昼食費のほかにも、就職活動で有利になる資格取得費用の補助がある場合もあります。
プログラムの内容
プログラムの内容は、以下のように事業所によって様々な種類があります。
講座・訓練 | 自己理解、生活リズム・日常生活管理、睡眠チェック、服薬管理、感情コントロール、ストレス管理、パソコンの基礎スキル、事務スキル、在宅ワークスキル、会計・経理プログラミング、HTML・CSS |
---|---|
就職活動の支援 | ビジネスマナー、対人スキル・コミュニケーション、キャリア⾯談、キャリアプランの作成、応募書類添削、⾯接練習、定着支援 |
障害に特化したプログラム | うつ症状に特化したコース、双極性障害に特化したコース、LDに特化したコース、ASDに特化したコース、ADHDに特化したコース、難病に特化したコース、高次脳機能障害に特化したコース、視覚障害に特化したコース、聴覚障害に特化したコース |
プログラムの内容によっては、IT系などの専門的な職種に就職を目指す利用者が多い事業所もあるため、ご自身の希望にあったものかどうかを見極めてみてください。
おすすめの就労移行支援事業所の一覧
ここからは、就職後の定着率や交通費・昼食補助の有無といった観点からおすすめの就労移行支援事業所をご紹介していきます。
ここでは一例として東京都や大阪府、神奈川県、埼玉県、千葉県の就労移行支援事業所を挙げていますが、デイゴー就労支援ナビではお住まいの市区町村や駅から、就労移行支援事業所を探すことができます。
就職後の定着率が90%以上の就労移行支援事業所4選
ラルゴ神楽坂(東京都)
ラルゴ神楽坂は、神楽坂駅から徒歩10分で、精神障害や発達障害がある方々に特化した就労支援を行っており、個別のニーズに応じたカリキュラムを提供します。
平均利用期間 | 3〜6ヶ月 |
---|---|
昨年就職人数 | 6-9名(定員10名) |
就職定着率 | 90%以上 |
対応障害 | 精神/発達 |
ディーキャリアITエキスパート 中野オフィス(東京都)
ディーキャリアITエキスパート中野オフィスは、JR中野駅から徒歩7分で、発達障害がある人々に特化した職業トレーニングとキャリアサポートを提供しています。
平均利用期間 | 12〜18ヶ月 |
---|---|
昨年就職人数 | 6-9名(定員20名) |
就職定着率 | 90%以上 |
対応障害 | 精神/発達 |
アイトライさいたまセンター(埼玉県)
アイトライさいたまセンターは、浦和駅より徒歩5分の事業所で、利用者の多くはうつ病、適応障害、統合失調症、双極性障害などの精神疾患や発達障害のある人です。
昼食・交通費 | 補助あり |
---|---|
昨年就職人数 | 6-9名(定員20名) |
就職定着率 | 90%以上 |
対応障害 | 精神/知的/発達/身体/難病 |
manaby大宮事業所(埼玉県)
manaby大宮事業所は、大宮駅より徒歩10分で、ITスキルを在宅でも学ぶことができる事業所です。
平均利用期間 | 6〜12ヶ月 |
---|---|
昨年就職人数 | 10-14名(定員20名) |
就職定着率 | 90%以上 |
対応障害 | 精神/発達/身体/難病 |
昼食や交通費の補助がある就労移行支援事業所4選
就労移行・定着支援事業所ビンゴ横浜
就労移行・定着支援事業所ビンゴ横浜は、元町中華街駅より徒歩2分で、資格取得や昼食、交通費の補助など、支援制度が充実した事業所です。
平均利用期間 | 6〜12ヶ月 |
---|---|
昨年就職人数 | 6-9名(定員20名) |
就職定着率 | 80%以上 |
対応障害 | 精神/知的/発達/身体/難病 |
ディーキャリア川越オフィス
ディーキャリア川越オフィスは、川越駅より徒歩1分で、発達、精神障害に特化した就労移行支援事業所です。
昼食の補助 | あり |
---|---|
交通費の補助 | あり |
対応障害 | 精神/発達 |
ぷらす守口
ぷらす守口は、太子橋今市駅より徒歩2分、京阪土居駅より徒歩7分で、精神疾患や大人の発達障害の就職支援に特化した事業所です。
平均利用期間 | 3〜6ヶ月 |
---|---|
昨年就職人数 | 10-14名(定員20名) |
就職定着率 | 90%以上 |
対応障害 | 精神/知的/発達/身体 |
ディベアスサポート就労移行支援事業所
ディベアスサポート就労移行支援事業所は、草加駅より徒歩5分で、職場適応力とメンタルヘルスケアに重点を置いたプログラムが特徴です。
昼食の補助 | あり |
---|---|
対応障害 | 精神/知的/発達/身体/難病 |
就労移行支援事業所を利用して就職した人の体験談
ここからは、就労移行支援事業所を利用して就職した人の体験談をいくつかご紹介していきます。
30代男性の体験談(発達障害)
就労移行支援事業所を利用する前までは、思い通りにいかないと「障害だから」と悩んでいました。周囲からは「気にし過ぎじゃないか」「甘えじゃないか」と言われてきましたが、就労移行支援事業所に思い切って相談したところ、障害特性に対する向き合い方が変わりました。
自分は、「マルチタスクが苦手、指示理解が入らない、まとまりのないコミュニケーションなど…」課題が山積みで、そもそも問題自体に気付いていないこともありました。
色々なプログラムにチャレンジし、スタッフと現状を整理することで、自分がやりやすい解決方法を考えていくことができました。
自分自身と向き合う=個人戦のイメージを思い描くと思いますが、スタッフや他のメンバーからの声掛けにより励まされ、気づきになり、自信が持てるようになったことで、情報通信業の一般事務職として就職できました。
20代女性の体験談(精神障害・発達障害)
就労移行支援事業所に通う前は、対人コミュニケーションに自信を持てず、人とどう話したらいいか分かりませんでした。アルバイトの契約が打ち切りになったことで、就職する必要性を感じたため、就労移行支援へ通うことを考えました。
通い始めてからは、事業所で行うボード・ゲームをきっかけに、話をできる利用者と巡り会いました。皆それぞれ苦労をしているので、共感できるものがあり、一緒にランチを食べるほか、「好きなことを語ろう会」での発表を経て、自発性が目覚めていきました。
以前のアルバイト先でレジを扱うなど、数字に関心があり、得意ということが判明したため、訓練ではそこを伸ばしていきました。障害を開示して経理補佐の仕事で就職が叶い、上司や同僚も、暖かく見守ってくれています。
40代男性の体験談(精神障害・発達障害)
前に勤めていた会社では、上司から言われたことに対して自分の意見を言えず、悶々としていました。そうしていると、次第に人間関係がうまくいかなくなり、結果、会社を辞めることになりました。その時点である程度歳を重ねていたこともあり、また就職できるかという不安がありました。
就労移行支援事業所に通ったことで、自分一人では見つけられない「強み」と「苦手」を確認することができ、特性に対する対処方法を見つけることもできました。また、「何のために働くのか」「自分のなりたい姿はどういうものなのか」といったことを深掘りすることができました。
就職後は、公私ともに安定した生活を送っています。就労移行支援事業所で受けた訓練のおかげで、周囲の人たちとうまくコミュニケーションをとれるようになり、順調に仕事を続けられています。また自分に自信がついたことで、プライベートも充実し、家庭も円満です。このままのペースで続けていきたいと思います。
最後に
ここまで、就労移行支援を利用したことがある人が事業所を選んだ理由をランキング形式でご紹介してきたほか、就労移行支援事業所のランキングを見るときの注意点や、自分にあった事業所を探すときのポイントを解説してきましたが、いかがでしたか。
ご自身にあった事業所選びをするために、Webサイトなどが公開している就労移行支援事業所のランキングだけでなく、情報を確認したうえで、事業所を2〜3つ選び、実際に見学・体験を行ってみるのが大切です。
最後までお読みいただきありがとうございました。