難病のある人が利用できる就労移行支援の一覧!就職率や就職先の職種も紹介

難病があるために就職が難しいと感じているや休職している方の中には、「難病があり、障害者手帳を持っていないけど就労移行支援事業所を利用できるの?」や「就労移行支援事業所を利用したら本当に就職できるの?」といった疑問を持っている方もいるかもしれません。

この記事では、就労移行支援を利用できる疾病の具体例や就労移行支援を利用した難病のある人の就職率、難病のある人が利用できる就労移行支援事業所をご紹介していきます。

目次

難病のある人が利用できる就労移行支援とは

就労移行支援事業所は、一般企業で働くことを希望する障害や難病のある人が、訓練や実習等を通して、適性に合った職場への就労や定着を目指すサービスです。

利用期間は原則24ヶ月(2年)以内で、利用料金は1日あたりおよそ500円〜1,400円となっています。ただし、所得に応じてひと月当たりに負担する上限金額が決まっているため、自己負担額なしで就労移行支援事業所を利用する人も多いです。

厚生労働省によると、障害福祉サービスを利用している人(98.5万人)のうち、約92.7%が無料で利用していることが分かっています。

プログラムの内容は事業所によってさまざまですが、特に難病のある人に対しては、合理的配慮や休憩など働く上での環境面の整理や、企業に対する伝え方の訓練を行うところが多いです。

就労移行支援事業所を利用できる難病の例

障害者総合支援法では、2013年4月1日から障害者の定義に難病等が追加されましたが、2024年4月1日から対象となる難病がさらに追加され、366疾病から369疾病へと見直されました。以下は就労移行支援事業所の利用対象となる疾病の例です。

  • アトピー性脊髄炎
  • アンジェルマン症候群
  • 関節リウマチ
  • 筋ジストロフィー
  • 海馬硬化を伴う内側側頭葉てんかん
  • 潰瘍性大腸炎
  • 甲状腺ホルモン不応症
  • 神経線維腫症
  • 骨髄異形成症候群
  • 先天性横隔膜ヘルニア
  • 若年性特発性関節炎
  • ダウン症候群
  • パーキンソン病
  • ペリー病
  • 肥大型心筋症
  • ミトコンドリア病
  • もやもや病
  • 突発性難聴
  • MECP2重複症候群※
  • 線毛機能不全症候群(カルタゲナー症候群を含む)※
  • TRPV4異常症※

※2024年4月1日より追加された疾病

(参照:厚生労働省 「周知用リーフレット」)

就労移行支援を利用した難病のある人の就職率

「就労移行支援を利用した難病のある人の中で、どのくらいの人が就職できるの?」と疑問を持っている方もいるかもしれません。ここでは、東京都の調査を例に、難病の人で、就労移行支援事業所を利用して就職した人の割合をご紹介します。

以下の図のように、就労移行支援を利用した難病のある人の就職率は、2021年度に『44.8%』となっており、約2.2人に1人が就労移行支援に通って就職をしていることが分かります。

(東京都福祉局 令和2年度3年度4年度就労移行等実態調査より作成)

難病がある人の就職先の職種・業種

難病のある人が働く職種は、障害者手帳の有無にかかわらず、デスクワークでの就労が多く、販売や生産工程の仕事が少ないと言われています。

また、難病のある人の就職先の業種は、「医療・福祉」が25.5%と最も多く、次いで「サービス業」が12.0%となっています。

(参照:難病者の社会参加を考える研究会 「2021年 難病のある人の就労・社会参加に関するアンケート」、厚生労働省 「令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書」)

難病のある人が利用できる就労支援

就労移行支援事業所以外にも、難病のある人が利用できる就労支援はいくつかあります。ここでは、難病のある人が利用できる就労支援の種類や特長についてご紹介していきます。

就労移行支援以外で難病のある人が利用できる就労支援
  1. ハローワーク
  2. 難病相談・支援センター
  3. 就労継続支援A型事業所
  4. 就労継続支援B型事業所

①ハローワーク

ハローワーク(公共職業安定所)は、国(厚生労働省)が運営する就労をサポートするサービスです。

全国のハローワークには、障害や難病がある人向けに専門的に相談にのる窓口が設置してあり、専門知識のあるスタッフが担当制によって応募書類の作成支援や模擬面接といった支援を行っています。

また、各都道府県に1ヶ所以上、「難病患者就職サポーター」が配置されており、個々の希望や特性、配慮事項等を踏まえ、職業相談や職業の紹介、職場への定着支援等を行っています。

②難病相談支援センター

難病相談支援センターは、難病のある人や家族等からの療養生活に関する相談に応じ、必要な情報の提供・助言等を行い、難病のある人の生活の質の維持向上を支援することを目的とする施設で、都道府県および指定都市に設置されています。

難病のある人が適切な就労支援サービスを受けられるよう、関係機関(ハローワーク、障害者職業センター等)と連携して就労・相談支援を実施しています。

就労支援のほかにも、電話、面談等による療養生活上、日常生活上の相談や各種公的手続き等の相談支援といったサポートも行っています。

③就労継続支援A型事業所

就労継続支援A型は、一般企業等で働くことが難しい障害がある人等が、雇用契約を結んで最低賃金以上の給料をもらいながら働くことができるほか、能力等の向上のために必要な訓練を行うサービスです。

就労継続支援A型事業所で働く中で、一般就労に必要な知識や能力が高まった場合は、一般企業で働くためのサポートを受けることもできます。

また、就労継続支援A型事業所から就労移行支援事業所に移る人もいます。

④就労継続支援B型事業所

就労継続支援B型は、一般企業等で働くことや雇用契約に基づく就労が難しい障害のある人が、工賃をもらいながら働くことができるほか、能力等の向上のために必要な訓練を行うサービスです。

就労継続支援B型事業所へ通う中で、一般就労に必要な知識や能力が高まった場合は、一般企業で働くためのサポートを受けることもできます。しかし、一般就労への移行者割合は令和3年度時点で『10.1%』と、就労移行支援事業所や就労継続支援A型事業所に比べると低くなっています。

(参考:厚生労働省 就労移行支援に係る報酬・基準について

難病のある人も利用対象の就労移行支援事業所の一覧

ここからは、難病がある人に向けて、就労移行支援事業所を一覧でご紹介していきます。ここでは一例として東京都や千葉県の就労移行支援事業所を挙げていますが、デイゴー就労支援ナビではお住まいの都道府県や駅から、難病のある人が利用できる就労移行支援事業所を探すことができます。

コンフィデンス日本橋

コンフィデンス日本橋のポイント
  • 三越前より徒歩1分
  • 交通費助成・昼食サービス・年金社労紹介・通院同行
  • 卒業生の職場定着率95%

就労移行支援事業所リスタート

就労移行支援事業所リスタートのポイント
  • 高田馬場駅より徒歩4分
  • 資格試験(MOS、TOEIC、簿記、漢検など)の補助あり
  • 交通費補助・昼食提供

テレワーカーズ柏

テレワーカーズ柏のポイント
  • 在宅勤務(テレワーク)での就職を目指すことに特化し、完全在宅で訓練(ただし月1回の通所が必要)
  • 訓練用PCは無料貸与
  • 新柏駅より徒歩8分

就労移行支援事業所 Pinto

就労移行支援事業所 Pintoのポイント
  • 流山おおたかの森駅より徒歩2分
  • リワークプログラムあり
  • 一般就労移行率94%(2022年)

就労移行支援事業所natura

就労移行支援事業所naturaのポイント
  • PCの基礎講座・コミュニケーション講座・ヨガ・手話等の多彩な講座あり
  • 一人ひとりにあった就職活動をサポート
  • バス停「新川橋」前すぐ

難病のある人におすすめの就労移行支援事業所の選び方

難病のある人が就労移行支援事業所を選ぶ際には、以下のようなポイントからいくつかの事業所を比較してみるのがおすすめです。

  • 駅から事業所までの距離はどのくらいか?
  • 事業所の就職実績・定着率はどのくらいか?
  • どのような活動内容(IT、ビジネスマナー、PCスキル等)か?
  • オンライン・在宅での支援はあるか?
  • 難病のある人への支援実績はあるか?

デイゴー就労支援ナビでは、お住まいの地域や最寄り駅から通いやすい就労移行支援事業所を探し、活動内容や支援内容を比較検討できますので、ぜひご活用ください。

就労移行支援事業所に関連するよくある質問

難病のある人は障害者手帳なしでも就労移行支援事業所を利用できる?

2013年4月1日より障害者総合支援法で定められている「障害者」の範囲に「難病」が追加されたため、難病のある人は障害者手帳を持っていなくても、就労移行支援事業所を利用することができます。

ただし、医師の診断書や特定疾患医療受給者証等といった対象疾病に罹患していることが分かる証明書が別途必要になります。

就労移行支援事業所では給料をもらえるの?

就労移行支援事業所は、就職するために必要な知識やスキルを身に付けたり、サポートを受けながら自分にあった職場を探したりすることを目的としたサービスのため、原則として給料は支払われません。

ただし、企業から受託した作業分には工賃を支払うなど、一部の事業所では工賃を受け取ることができるところもあります。

就労移行支援事業所の利用条件・対象者は?

就労移行支援事業所は、以下の4つの条件を満たしている人が対象者とされています。

就労移行支援事業所の対象者
  1. 一般就労を希望している
  2. 障害・難病がある
  3. 65歳未満である
  4. 適性に合った職場への就労等が見込まれる

サービスを利用できるかどうかの判断は市区町村が行っているため、「自分は就労移行支援事業所の利用対象者なのだろうか?」と不安の場合は、お住まいの市区町村の障害福祉担当部署にまずは相談してみてください。

※65歳以上の人は、以下の条件のいずれも満たしている場合は、65歳を過ぎても就労移行支援事業所を利用することができます。

65歳以上の人が就労移行支援を利用する条件
  • 65歳に達する前5年間に障害福祉サービスの支給決定を受けていた人
  • 65歳に達する前日までに就労移行支援の支給決定を受けていた人

最後に

ここまで、就労移行支援を利用できる疾病の具体例や就労移行支援を利用した難病のある人の就職率、難病のある人が利用できる就労移行支援事業所をご紹介してきましたが、いかがでしたか。

就労移行支援事業所には、自宅からの通いやすさやスタッフの雰囲気など、実際に事業所へ行ってみなければ分からない違いもあります。ぜひいくつかの事業所へ見学・体験に行き、ご自身にあった事業所を見極めてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事を書いた人

監修者情報:メンタルエイド代表。社会福祉士、精神保健福祉士、ジョブコーチ、心理カウンセラー、幼稚園教諭。就労移行・就労定着支援サービスを行う事業所に12年従事。サービス管理責任者として個別支援計画をはじめ利用者との認知面談を中心にプログラム講師・支援機関連携・クリニック同行・企業開拓・面接同行・応募書類添削・定着支援・新規立ち上げ・スタッフ育成などを行う。120名の障がい者就労の実績があり、面談は1,000人以上。多くの面談実績からオリジナルの上村式認知整理面談技法を発案。

目次