うつ病があり就職が難しいと感じている方や休職をしている方の中には、「うつ病の人が就労移行支援事業所を利用するメリットってあるの?」や「うつ病を発症して復職を目指す場合も就労移行支援を利用できるの?」といった疑問をお持ちの方もいるかもしれません。
この記事では、うつ病の人が就労移行支援事業所を利用して就職するまでの流れや、就労移行支援を利用して就職を目指すメリット、就職・復職を目指す上での注意点について、就労移行支援事業所を利用して一般就労をしている経験のある筆者がご紹介していきます。
うつ病の人が利用できる就労移行支援とは?
就労移行支援とは、障害のある人が一般企業等へ就職する「一般就労」を支援する障害福祉サービスです。「うつ病で長い間仕事をしていないが、働きたいと考えている人」や「うつ病の治療を続けており、いきなりひとりで就職活動は難しいので誰かのサポートを受けたいと思っている人」は、就労移行支援事業所を利用するのがおすすめです。
就労移行支援を利用する際には、所得に応じて料金がかかる場合もありますが、本人が負担することはほとんどありません。厚生労働省によると、障害福祉サービスを利用している人のうち、約92.7%が負担金は0円であることが分かっています。
同じ就労系の障害福祉サービスには「就労継続支援(A型・B型)」もあります。就労継続支援と比較したうえでの特徴は、やはり就労移行支援には2年間の期限が設けられていることが挙げられるでしょう。
うつ病を発症して復職を目指す場合も就労移行支援を利用できるの?
元の職場へ復帰する「復職」を目指す一つの選択肢として、就労移行支援を利用できるケースがあります。
リワーク(復職支援)は、休職中の人がもとにいた職場に復帰するためのサポートを行うプログラムです。リワークプログラムは、精神科や心療内科といった医療機関や地域障害者職業センターのほかに、就労移行支援事業所でも実施している場合があります。
ただし、休職中に就労移行支援事業所のリワークプログラムを利用するためには、以下のような条件があるので、自治体への確認が必要です。
- 当該休職者を雇用する企業、地域における就労支援機関や医療機関等による復職支援の実施が見込めない場合、又は困難である場合
- 休職中の障害者本人が復職を希望し、企業及び休職に係る診断をした主治医が、就労系障害福祉サービスによる復職支援を受けることにより復職することが適当と判断している場合
- 休職中の障害者にとって、就労系障害福祉サービスを実施することにより、より効果的かつ確実に復職につなげることが可能であると市区町村が判断した場合
うつ病の人が就労移行支援を利用して就職・復職するまでの流れ
ここからは、うつ病の人が就労移行支援を利用して一般企業等で働くまでの流れを、就職する場合と、休職中の人が復職する場合に分けて紹介していきます。
うつ病の人が就労移行支援を利用して就職する場合
うつ病の人が就労移行支援を利用して就職する場合、訓練を通して一般企業等で働くための準備を整えてから求人に応募することになります。うつ病のある人が他の精神疾患のある人が就職するまでの流れと大きく異なるようなことはありませんが、週に5日通所できる心身づくりやご自身の病気の理解が重要となります。
就労移行支援には原則2年間の利用期限がありますが、これは決して長い期間ではありません。就労移行支援事業所を休んでいる間も期限は消費されてしまうため、最低でも週1回以上は通所できる状態になってから利用するのが望ましいでしょう。
うつ病で休職中の人が就労移行支援を利用して復職する場合
休職中の人が就労移行支援を利用して復職する場合、うつ病の治療と職場復帰後に向けた心身づくりを並行して行います。職場への復帰を目指すため、就職活動は挟みません。事業所によってプログラムの長さは異なりますが、概ね6~7ヶ月で行う所が多いです。
うつ病の人が就労移行支援を利用して就職するメリット
うつ病の人が就職をする上で就労移行支援を利用するメリットは、以下が挙げられます。
- 徐々に生活リズムを整えることができる
- 気持ちが落ち込んだときの対処法など、病気に関する理解を深めることができる
- 負担が少なく安定的に働くことができる就職先を見つけやすい
- 模擬面接や履歴書の添削など、スタッフが就職活動のサポートをしてくれる
中々外に出るのが難しい場合でも、週一日から通所をはじめて、徐々に事業所への通所日数を増やすことで、生活リズムが整っていきます。
うつ病の人で就労移行支援を利用して就職した事例
ここからは、うつ病の人が就労移行支援事業所を利用して就職した事例をご紹介していきます。
50代の男性が就職した事例(うつ病)
就労移行支援に通う前は、精神的にうつの状態がひどく何に対してもとにかくやる気が出ない・疲れやすい・不安感がとれないといううつ病特有の症状に悩まされていました。そんな状態のため、ほとんど部屋に閉じこもっていました。うつ病により心にゆとりがなく、毎日服薬をして耐えていくだけの日々でした。
就労移行支援に通い始めて、まず、ひとりで悩む悪循環がなくなりました。通所をして毎日、毎週、いろいろなプログラムをこなし、自分にも何かできることがあるのではと考えたからです。世の中にどんな仕事があるのか考えられるようになりました。また、うつの状態がひどくなることがほぼなくなり、通所することで普段から身だしなみに気をかけるように。週5日で1日4時間利用することで、障害を開示して就職することができました。
30代の女性が就職した事例(うつ病)
就労移行支援に通う前は、事業所になじめるか、毎日通えるかなど不安がありましたが、うつがかなりひどい時期だったので、通うことで気がまぎれることを期待していました。
就労移行支援に通い始めてからは、自分の特定を自己理解できるようになり、規則正しく通勤することができるようになりました。一時はうつが悪化したこともありましたが、全体的には寛解の方向に向かいました。
事務職として障害を開示して就職してからは、1日6時間、無理なく勤務することができています。自分の能力を評価していただいており、「特性を活かして社会の役に立っている」という自己肯定感が得られています。
うつ病の人が就労移行支援を選ぶポイント
うつ病のある人が就労移行支援の事業所を選ぶうえで何が大事になるのでしょうか。それは「実績」や「通いやすさ」、「訓練の内容」、「相談できる環境」、「在宅訓練の有無」です。
ポイント①実績
就労移行支援の実績とは、利用者が一般就労へ結びつくことです。一般企業等へ就職した利用者の割合や、就職件数については必ずチェックしておいた方がいいでしょう。
また、就職後の職場定着率も重要です。職場定着率が高い事業所は、就職活動の時点でミスマッチがないようなサポートをしてくれている可能性が高いほか、定着支援サービスも手厚く行ってくれる場合が多いです。
ポイント②通いやすさ
無理なく通所できるかどうか、距離や交通手段などから判断するのも大事です。どれほど実績の豊かな事業所でも、毎日通うには無理のある距離だと、途中で通えなくなってしまう可能性もあります。ですから、事前に片道で何分かかるかは調べておくべきです。
また、満員電車の狭さやにおいが苦手な人の場合、就労移行支援事業所への通所時間に合わせて電車の込み具合なども確かめておくと良いかもしれません。
ポイント③カリキュラムの内容
就労移行支援事業所で何を学べるかも重要です。通所を始めてから自分の適性に気付くこともあります、あらかじめ分かっている適性に合った勉強や訓練ができる方がより確実でしょう。そのため、作業内容やカリキュラムは見学・体験の段階で把握するつもりでのぞむのがおすすめです。
就労移行支援を受けることができる期間は2年間と限られています。性急に選ぼうとせず、自分が一般就労に至れるかどうか、実績と通所と内容の観点からチェックしてみましょう。その判断を大いに助けるのが事業所の見学・体験になりますので、いくつかの事業所の見学・体験に行き、比較・検討をしてみてください。
ポイント④相談できる環境
就労移行支援事業所に通所し始めたころは、慣れない環境で不安を感じることもあるかもしれません。また、病気の影響で気分が落ち込んでしまうときもあるでしょう。
そのような時に、気軽にスタッフに相談できる環境があるのは心強いかもしれません。事業所によっては、臨床心理士や精神保健福祉士による無料のカウンセリングを行っているところもありますから、事業所を選ぶ際はぜひ確認してみてください。
ポイント⑤在宅訓練の有無
利用しはじめのためいきなり週5で就労移行支援事業所に通えない場合や、体調を崩してしまった場合などに、在宅で訓練を受けることができるところもあります。
こうした在宅訓練と併用できる事業所は、継続的に訓練を受けるためにも大切なポイントになるかもしれません。
最後に
ここまで、うつ病の人が就労移行支援事業所を利用して就職・復職するまでの流れや、就労移行支援を利用して就職・復職を目指すメリット、就職・復職を目指す上での注意点について、就労移行支援事業所を利用して一般就労をしている経験のある筆者がご紹介してきましたが、いかがでしたか。
就労移行支援は、事業所によっては週1日から通所を行い、生活リズムや体調を整えて、徐々に通所日数を増やすことができるところもあります。また、はじめから通所するのが難しい場合は在宅で支援を受けることができる場合もあります。ご自身にあった事業所を選ぶためにも、ぜひいくつかの事業所を比較検討してみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。