就労定着支援サービスって?就職・転職後の利用期間や内容を紹介

就職後に働き続けられるか不安な人の中には、「就労定着支援ってどんなサービス?」や「就労定着支援サービスは利用した方がいいのかな?」と悩んでいる人もいるかもしれません。

この記事では、就労定着支援サービスの内容や利用条件、サービスを受けるメリットなどについてご紹介していきます。

この記事の監修者

メンタルエイド代表。サービス管理責任者、社会福祉士、精神保健福祉士、ジョブコーチ、心理カウンセラー、幼稚園教諭。就労移行・就労定着支援サービスを行う事業所に12年従事。120名の障がい者就労の実績があり、面談は1,000人以上。多くの面談実績からオリジナルの上村式認知整理面談技法を発案。

目次

就労定着支援サービスって何?簡単に紹介

就労定着支援は、障害のある方が一般企業等での就労を長期的かつ安定的に続けるためのサポートを受けることができるサービスです。

就労移行支援、就労継続支援、生活介護、自立訓練などのプログラムを経て一般就労(一般企業等への就職)を果たしてから6ヶ月が経過し、なおかつ就労による環境の変化で日常的・社会的な生活に課題を抱える障害のある人を対象としています。

就労定着支援サービスでは、支援員が障害のある従業員(利用者)と雇用主の間に立ち、職場や日常生活でのさまざまな課題や不安に対処し、障害のある人の働きを多角的に支援してくれます。

グラフ, じょうごグラフ

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就労定着支援と就労移行支援の違い

就労定着支援と間違えやすいサービスとして「就労移行支援」がありますが、対象者や支援内容に違いがあるため注意が必要です。

就労移行支援が既に一般企業等への就職をしてから6ヶ月が経過している障害のある人が対象であるのに対し、就労移行支援は一般就労を希望し適正に合った職場への就労が見込める障害のある人が対象となっています。

支援の種類対象者主な目的支援内容
就労定着支援一般就労してから6ヶ月経過後、職場や日常生活に課題を抱える障害のある人支援期間終了後の、特別な支援無しで職場に定着すること企業や関係機関との連携月1回以上の対面相当での支援など
就労移行支援一般就労が見込める人で、一般就労に向けたサポートを望む障害のある人一般就労に向けたスキル習得や職場探し、長期的な定着など利用者の職場開拓就労に向けた訓練
など

両者の違いについては以下の記事でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にして下さい。

就労定着支援サービスの内容

就労定着支援は、障害のある人の長期的な一般就労に向けて様々な支援が受けられます。

就労定着支援サービスの支援例
  • 職場の人間関係や業務内容(量や質)についての相談
  • 障害・病気の症状が悪化したときのクリニック同行
  • 本人が企業へ伝えたいが伝わらないことをかみ砕いて企業へ説明
  • 薬の飲み忘れや金銭管理など、日常生活改善のためのアドバイス
  • 業務中の居眠りや身だしなみなど、長期的な就労を困難にしている課題への助言
  • 利用者の自宅や勤務先に対し、月1回以上の対面相当でのヒアリングを通した課題把握
  • 家族や勤務先との連絡調整 など

このように、就労先で抱える問題だけでなく就労によって起こり得る私生活の課題も支援してくれるのが心強い点です。日常生活がおろそかになってしまうと長期的な就労が困難になることからも、両面からの支援は利用者にとって頼りになる存在と言えます。

就労定着支援サービスを受けるメリット

ここでは、就労定着支援サービスを受けるメリットとして特に注目したいものを3点ピックアップし、それぞれ詳しく解説します。

メリット①担当者と定期的に課題や問題を共有できる

まず挙げられるメリットは、担当者が緊密に連携してくれるため、課題や問題を常に共有しあえる点です。

長期的に働き続けることを実現するには、課題や問題を都度クリアしていかなければなりません。

就労定着支援は、月1回以上の対面相当(テレビ電話等を含む)の支援が行われます。

このように、利用者の課題や問題を定期的にヒアリングし、都度サポートをしてくれる担当者は、長期的な職場定着を狙う上で心強い存在です。

メリット②利用者に馴染み深い担当者が支援を継続してくれる場合も

就労定着支援は、卒業した就労移行支援事業所や就労継続支援事業所等の職員が引き続き担当してくれます。利用者にとって馴染み深い相手なので安心して相談しやすい上、障害の特性や抱える課題などをよく理解してくれるでしょう。

就職後は環境が大きく変わって負担に感じる場合もあります。そのような中で、信頼できる人に支援を担当してもらえるのは大きなメリットと言えます。

ただし、就労定着支援を行っていない就労移行支援事業所や就労継続支援事業所等を利用している場合は、就労定着支援を行っている別の事業所で新しい担当者のサポートを受けることになります。

メリット③就職・転職後に安定して働き続けることができる

課題点の共有や個人に合わせた支援計画により、就職や転職後に安定して働き続けられる点も、見逃せないメリットです。厚生労働省が発表した資料によると、約1,550ヶ所の就労定着支援事業所のうち、98%以上の事業所の就労定着率が5割以上となっています。

(参考:就労定着支援に係る報酬・基準について≪論点等≫p7|厚生労働省

就労定着支援サービスがある就労移行支援事業所の例

ここからは、就労定着支援サービスがある就労移行支援事業所をご紹介します。

東京都や千葉県、埼玉県、神奈川県、大阪府の就労移行支援事業所を一例としてご紹介していますが、デイゴー就労支援ナビでは、お住まいの地域で就労定着支援サービスのある就労移行支援事業所を一覧で比較検討することができます。

カレント(東京都)

カレントは、新宿御苑前駅から徒歩3分、アクアリウムの設置や少人数制の採用など、利用者が落ち着いて支援を受けられる環境を整えています。

就職定着率90%以上
昨年の就職人数10~14名(定員12名)
平均利用期間6~12ヶ月
対象障害精神/知的/発達
デイゴー求人ナビ・就労支援ナビ
自己理解は最大の武器!!ひとりひとりのベストな働き方を実現・職場定着率100%!!(2017~2023年度)・水草ア... カレントは東京都 新宿区の就労移行支援事業所です。雰囲気やサポート内容を確認してから、気になる事業所には無料でお問い合わせが可能です。就労移行支援の検索ならデイ...

就労移行支援事業所 Pinto(千葉県)

Pinto(ピント)は東武野田線流山おおたかの森駅から徒歩2分、作業療法士や公認心理師による支援が受けられるアットホームな雰囲気の事業所です。

就職定着率90%以上
昨年の就職人数15名以上(定員20名)
平均利用期間6~12ヶ月
対象障害精神/知的/発達/身体/難病
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できることを活かし「自分らしさ」をつくる 就労移行支援事業所 Pintoは千葉県 流山市の就労移行支援事業所です。雰囲気やサポート内容を確認してから、気になる事業所には無料でお問い合わせが可能です。就労移行支...

アクセスジョブさいたま(埼玉県)

アクセスジョブさいたまはJR東大宮駅東口から徒歩30秒で、一人ひとりの特性や事情に合わせた訓練プログラムを提供してくれる事業所です。

就職定着率90%以上
昨年の就職人数6~9名(定員20名)
平均利用期間6~12ヶ月
対象障害精神/知的/発達/身体/難病
デイゴー求人ナビ・就労支援ナビ
JR東大宮駅東口徒歩30秒!個別支援プログラムが充実 アクセスジョブさいたまは埼玉県 さいたま市見沼区の就労移行支援事業所です。雰囲気やサポート内容を確認してから、気になる事業所には無料でお問い合わせが可能です。就...

就カレワークス(神奈川県)

就カレワークスはJR関内駅から徒歩6分に位置し、1人の利用者に対して複数のスタッフによるチーム体制の支援に力を入れています。

就職定着率90%以上
昨年の就職人数10~14名(定員20名)
平均利用期間12~18ヶ月
対象障害精神/知的/発達/身体/難病
デイゴー求人ナビ・就労支援ナビ
【関内駅6分】イラストが学べる就労移行支援!就カレワークス 就カレワークスは神奈川県 横浜市中区の就労移行支援事業所です。雰囲気やサポート内容を確認してから、気になる事業所には無料でお問い合わせが可能です。就労移行支援の...

Coco Color(大阪府)

Coco Color(ココカラー)は京阪本線御殿山駅から徒歩8分で、最大4年をかけて自分のペースでじっくりと就労を目指せる事業所です。

就職定着率90%以上
昨年の就職人数1~5名(定員10名)
平均利用期間6~12ヶ月
対象障害精神/知的/発達/身体/難病
デイゴー求人ナビ・就労支援ナビ
自立訓練(生活訓練)+就労移行支援の最大4年間で無理のない就労を目指します。 Coco Colorは大阪府 枚方市の就労移行支援事業所です。雰囲気やサポート内容を確認してから、気になる事業所には無料でお問い合わせが可能です。就労移行支援の検索ならデ...

就労定着支援に関するよくある質問

つづいては、就労定着支援に関してよくある質問にQ&A形式で回答します。今回は特に多い質問として、以下の5点を取り上げました。

就労定着支援サービスの利用条件は?

就労定着支援サービスを受けるには、以下の条件をクリアしている必要があります。

【就労定着支援サービスの利用条件】

  • 就労移行支援や就労継続支援、自立訓練、生活介護などの障害福祉サービスを利用したうえで一般就労をした人
  • 上記を経て就職した後、6ヶ月が経過した人
  • 就労定着にあたり、なんらかの社会的・日常的な課題や問題を抱えている人

上記の通り、就労定着支援を受けるには就労移行支援などの福祉サービスを利用していなければなりません。

たとえば、就労移行支援などの福祉サービスを利用せずにハローワーク等を利用して就職した場合、就労定着支援の対象外となるので注意しましょう。

就労定着支援サービスの料金・費用はどのくらい?

就労定着支援サービスの料金は、利用者が1割を負担し残りの9割を自治体が負担する仕組みで、一ヶ月あたり1,050円~4,500円ほどになります。(同じ事業所の定着支援ではなく、ほかの就労移行支援や就労継続支援A型/B型からの転所の場合、初回のみ初期加算がかかります)。

区分世帯の収入状況負担上限月額
生活保護生活保護受給世帯無料
低所得市町村民税非課税世帯※1無料
一般1市町村民税課税世帯(所得割16万円※2未満)
※入所施設利用者(20歳以上)・グループホーム利用者は除く※3
9,300円
一般2上記以外37,200円
(引用:厚生労働省「障害者の利用者負担」

※1 3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入がおおむね300万円以下の世帯。

※2収入が概ね670万円以下の世帯。

※3入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「一般2」扱い。

さらに、利用者が負担する分の料金には上記の表のように上限が設定されており、上限を超えた分の料金は発生しません。

利用者の負担上限額は、収入に応じて4つの区分に分けられており、生活保護を受給している人や市町村住民税非課税世帯の人は無料で利用できますが、負担上限月額は前年度の所得状況によって変わるため、就職後に所得が発生し、非課税世帯でなくなった場合は利用料が発生する可能性があるため注意しましょう。

就労定着支援の利用料金は以下の記事でも詳しく解説しているので、あわせてチェックして下さい。

就労定着支援サービスの利用期間は?

就労定着支援サービスが利用できる期間は、最大で3年間(就労後3年6ヶ月)です。ただし、3年が過ぎた後も支援の一切が打ち切られるわけではありません。

3年経過後にも就労定着への課題や懸念がある場合は、障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)などに引き継がれるので、焦らず取り組みましょう。

就労定着支援サービスの利用手続きの流れは?

就労定着支援サービスの利用は、以下の流れにそって手続きを進めましょう。

  1. 就労定着支援サービスを行っている事業所を探す
  2. お住まいの市区町村の役所や地域保健福祉センターに利用申請をする
  3. 障害の特性や心身の状況について聞き取り調査を受ける
  4. 相談支援事業所もしくはご自身で作成したサービス等利用計画書(案)を提出する
  5. 市区町村の役所から受給者証が発行される
  6. 支給決定に関するサービス等利用計画を提出する
  7. 就労定着支援がスタートする

就労定着支援サービス以外に定着支援を受けることができるの?

就労定着支援サービス意外にも、障害のある人の就労定着を支援するサービスがあります。たとえば「なかぽつ」の愛称で知られる障害者就業・生活支援センターでは、就労定着支援の利用期間である3年を過ぎた利用者に対して、引き続き定着支援を提供してくれます。

また就労移行支援は、就労後6ヶ月間は職場定着のための支援を実施していることも覚えておきましょう。

最後に

この記事では福祉サービスの1つである「就労定着支援」にスポットを当て、サービスの概要や利用対象者などを解説しました。

就労定着支援は就労移行支援などの福祉サービスを経て一般就労を果たした人が対象で、就労後6ヶ月が経過してから受けられるサービスです。最大で3年の利用期間が設定されているものの、3年後は障害者就業・生活支援センターなどの関係機関で引き続き支援が受けられます。

利用料金は利用者の所得によって異なるため、記事内の表を参考にしてご自身がどの区分に属するのかチェックしましょう。

また、ご自身に合う事業所を見つけるにはまず2〜3ヶ所の事業所の見学・体験をおすすめします。

就労移行支援事業所の検索サイトデイゴー就労支援ナビでは、就労定着支援サービスの有無や就職実績、プログラム内容などから様々な事業所を比較検討できるので、ぜひお役立て下さい。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

この記事を書いた人

就労継続支援B型事業所で職業指導員として勤務経験がある。そのほか、宿泊施設や工場、Webライターなどの仕事に従事。現在はフリーランスのWebライターとして活動中。

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