就労支援の種類とは?障害のある人が自分にあった支援を見つける方法をジョブコーチが解説

障害や病気がありしばらく働いていない人の中には、「就労支援を利用して働きたい」や「自分にはどんな就労支援があっているの?」といった疑問を持っている人もいるかもしれません。

この記事では、障害のある人が利用できる就労支援の種類を一覧でご紹介するほか、それぞれの就労支援の目的や対象者の違い、自分にあった支援を見つける方法をジョブコーチである筆者が説明していきます。

この記事の監修者

メンタルエイド代表。サービス管理責任者、社会福祉士、精神保健福祉士、ジョブコーチ、心理カウンセラー、幼稚園教諭。就労移行・就労定着支援サービスを行う事業所に12年従事。120名の障がい者就労の実績があり、面談は1,000人以上。多くの面談実績からオリジナルの上村式認知整理面談技法を発案。

目次

障害のある人への就労支援の目的とは?

障害のある人への就労支援は、働く意欲のある人に対して、就労のために必要な訓練を提供し、安定して働き続けられるよう様々な支援を行います。

日常生活だけでなく社会生活も含めて全体的に支援し、障害や病気のある方が自立していくことを目的としています。

障害のある人が利用できる就労支援の種類一覧

障害のある人が利用できる就労支援には、以下のように様々な種類のサービスがあります。

障害のある人が利用できる就労支援の種類一覧
  • 就労移行支援
  • 就労継続支援A型
  • 就労継続支援B型
  • 自立訓練(生活訓練)
  • 障害者就業・生活支援センター
  • ハローワーク
  • 障害者雇用に特化した人材紹介エージェント
  • 就労定着支援
  • ジョブコーチ

このように、「就労支援」と一言で言っても、それぞれ目的や対象者、提供するサービスの内容が異なります。「働きたい」という意欲がある人がどのサービスを利用しても同じかというと、そうではありません。

中には就労移行支援のように利用期間に限りのあるサービスもあるため、自分の状況や希望をより具体的に把握し、それに合ったものを利用することが非常に重要です。

そのためには、自分ひとりで考え込まず、ご家族や主治医、お住まいの市区町村の相談窓口等を活用し、客観的な意見をもらうことで、より適切な判断ができるでしょう。

就職前・就職活動のサポート

就労移行支援

就労移行支援とは、就職を目指している人に向けたサービスです。

就労を希望しており一般企業に雇用されることが可能と見込まれる障害のある人に対して、一定期間、必要な訓練・支援を行います。

就労継続支援A型

就労継続支援A型とは、雇用契約を結んだ上で働く場を提供し、能力等向上のための訓練、支援提供をするサービスです。

一般企業に雇用されることは難しいが、雇用契約に基づく就労が可能である障害のある人に対して、雇用契約の締結を行います。訓練を通じて能力等が向上した人へは、一般就労へ向けた支援も実施していきます。

就労継続支援B型

就労継続支援B型とは、一般企業に雇用されることが難しく、雇用契約に基づく就労が困難である障害のある人に対して、就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供を行うサービスです。

訓練を通じて能力等が向上した人へは、一般就労等へ向けた支援も実施していきます。

自立訓練(生活訓練)

自立訓練(生活訓練)とは、障害のある人が自立して日常生活を送ることができるよう、生活能力を身につける場です。

買い物、料理、洗濯等、生活する上で必要となる能力を向上させるためのプログラム、体力づくりや体調管理を向上させるためのプログラムなど様々な訓練・支援が提供されます。

※自立訓練は「就職のための訓練」ではなく「日常生活を送るための訓練」を受けることができるサービスですが、自立訓練を利用して体調やメンタルを整えてから、ゆくゆくは就労移行支援等を利用して就職を目指す人も多いです。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害のある人の職業生活をサポートする機関で、全国に337ヶ所設置されています(2024年4月時点)。

これから仕事を始める、または仕事を継続するにあたって困っている人の「仕事面」と「生活面」の相談に応じます。

ハローワーク

ハローワーク(公共職業安定所)は、仕事を探している方や求人事業主の方に対して、様々なサービスを無償で提供する総合的な雇用サービス機関です。運営は、厚生労働省が行っています。

ハローワークには、障害のある求職者のための職業相談窓口や、子育て中の方が仕事を探すときに、お子様連れでも利用しやすい環境で専門的に相談できる窓口、シニア世代の方に向けた求人情報を提供している窓口など、それぞれ専門性の高い職員を配置した専門窓口が数多く設けられています。

障害者雇用に特化した人材紹介エージェント

障害者雇用に特化した人材紹介エージェントは、障害者枠での就職や転職を希望する障害のある人と、障害者雇用に取り組む企業とをマッチングするエージェントです。

障害者雇用を行っている企業がどの様な人材を求めているかなどのニーズを把握し、障害のある人の状況や希望をヒアリングしてアドバイスを行ったり、希望に沿った求人を紹介したりします。

特徴として、一般雇用向けの人材紹介会社が保有していない障害者雇用枠の求人を数多く取り扱っていることが挙げられます。

就職後のサポート

就労定着支援

就労定着支援とは、就職先で長く働き続けるための支援です。

就労移行支援等を利用して一般企業に雇用された障害のある方に対し、働く上で生じる問題に関する相談対応等、必要な支援を行います。

ジョブコーチ

ジョブコーチは、障害のある人の職場適応を図ることを目的としたサービスです。

目的は同じですが、大きく分けて3種類のジョブコーチが存在します。それぞれについて、以下にご紹介します。

1.配置型ジョブコーチ

配置型ジョブコーチは、地域障害者職業センターに配置するジョブコーチです。就職等で困難を抱えている障害のある人を主な対象として支援を行う他、訪問型ジョブコーチ及び企業在籍型ジョブコーチと連携し支援を行うこともあります。

2.訪問型ジョブコーチ

訪問型ジョブコーチは、障害のある人の就労支援を行う社会福祉法人等に雇用されるジョブコーチです。訪問型職場適応援助者養成研修を修了しており、かつ必要な相当程度の経験及び能力がある人が、事業所に出向いて支援を行います。

3.企業在籍型ジョブコーチ

企業在籍型ジョブコーチは、障害のある人を雇用する企業に所属するジョブコーチです。企業の従業員がジョブコーチ養成研修を受けて、企業で雇用している障害のある人の支援を行います。

障害のある人が利用できる就労支援の違い

ここまでご紹介してきたように、障害のある人へ向けた就労支援は様々なものがあります。自分に合ったサービスを利用するために、それぞれの目的や対象者、サービス内容は押さえておきたいですね。以下に就労支援のサービスの違いをまとめています。是非、参考にしてみてください。

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就労移行支援就労継続支援A型就労継続支援B型就労定着支援
対象者一般就労等を希望し、事業所での訓練等を通じて、就労が見込まれる障害のある人通常の事業所へ雇用されるのが困難で、適切な支援があれば雇用契約に基づく就労が可能な障害のある人就労のための体力やスキルはまだ少し整っていないが、雇用契約を結ばずに働くことで、知識・能力の向上が期待される障害のある人就労移行支援等の利用を経て一般就労した障害のある人で、一般就労後6ヶ月を経過した人
目的一般就労及び職場定着のための訓練・支援提供雇用をして就労の機会を提供し、能力等の向上のための必要な訓練の実施就労の機会の提供と、能力等の向上のための必要な訓練の実施職場定着のため支援提供
賃金なしあり(最低賃金以上の給与)あり(月額3,000円以上の工賃)なし
利用期間原則2年間制限なし制限なし原則3年間(経過後は必要に応じて関係機関等へ引き継ぐ)
年齢制限65歳未満(65歳以上も要件を満たせば利用可能)65歳未満(65歳以上も要件を満たせば利用可能)なしなし
利用料月額0円~3万7,200円(所得に応じて変動)月額0円~3万7,200円(所得に応じて変動)月額0円~3万7,200円(所得に応じて変動)月額0円~3万7,200円(所得に応じて変動)

自分にあった就労支援の選び方とは?

ここでは、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、自立訓練(生活訓練)それぞれについて、おすすめである人の特徴について記載しました。もちろん、例外もありますので、実際に事業所を見学したり体験利用を行ったりしながら、ご自身に合うサービスを見つけていきましょう。

就労移行支援がおすすめなのはこんな人

  • 一般就労(一般企業等への就職)したい気持ちがある
  • 一般就労に向けて課題解決やスキルアップをしたいという意欲がある
  • 日常生活を概ね問題なく送れている
  • 自身で事業所に通所できる
  • 2年間の利用期間の中で一般就労が可能であると見込まれる

就労継続支援A型がおすすめなのはこんな人

  • 現状、一般就労が難しいが、働く意欲がある
  • 自身で事業所に通所できる、もしくは送迎サービスを利用して通所できる
  • 支援があれば事業所での就労や訓練が可能である
  • 雇用契約にのっとって働くことができる

就労継続支援B型がおすすめなのはこんな人

  • 現状、一般就労が難しい
  • 自身で事業所に通所できる、もしくは送迎サービスを利用して通所できる
  • 支援があれば事業所での就労や訓練が可能である
  • 自分の体調に応じたペースで訓練を受けたいと考えている

自立訓練(生活訓練)がおすすめなのはこんな人

  • 入所施設や病院を退所・退院したばかりである
  • 自立して日常生活を送りたいと考えている
  • 身体機能の不安はなく、生活能力に課題を感じている

就労移行支援を利用して就職した人の体験談・口コミ

30代女性(精神障害・発達障害)の体験談・口コミ

通所前、鬱症状がかなりひどい時期に、就労移行支援事業所に通うことで気が紛れることを期待して、利用を検討していました。周囲に馴染めるか、毎日通えるかなど不安が多かったですが、通所することに。

通い始めて、自分の特性を理解できるようになり、規則正しく通所することができるようになりました。鬱症状が悪化したこともありましたが、全体的には寛解の方向に向かいました。 

就職後は、1日6時間、無理なく勤務できています。また、自分の能力を評価していただいており、「特性を活かして社会の役に立っている」という自己肯定感が得られています。 鬱症状についても、良い方向に向かっています。

就労継続支援A型から就労移行支援に転所した人の体験談・口コミ

就労移行支援に通う前は、A型作業所に約5年通所していましたが、その作業所が閉所されることになり、スタッフの方に現在の就労移行支援事業所を紹介され見学、通所することになりました。 知らない人たちばかりで、通所する前は不安でいっぱいでした。

人と話すことが得意ではなかったので、初めは他の利用者さんともコミュニケーションがとれなかったのですが、様々なプログラムを受けて徐々に話せるようになってきました。 だんだん他の利用者さんとも仲良くなって、知らなかったことをたくさん覚えることができ、毎朝、「今日はどんなことをするのかな?」と楽しみに通うようになりました。作業で訓練したハンコ押しを、今、仕事でも活用できていると思います。また、報告・連絡・相談の習慣がついたので、職場でも実践しています。

現在は、アパレル関連の物流センターに勤務し、入荷や荷受け・返品処理作業・倉庫内整理作業・検針・伝票整理・ハンガー掛け・出荷用段ボール準備・掃除など色々な業務を担当しています。様々な洋服や小物が毎日見られることがとても楽しいです。利用していた就労移行支援事業所には、仕事が休みの日に顔を出して、利用者さんやスタッフの方とお話をしたり、卓球をしたりしています。 皆さんも今は不安な気持ちかもしれませんが、明るく楽しい雰囲気の事業所なので、一度は見学に来てみてください。

30代男性(発達障害)の体験談・口コミ

就労移行支援事業所に通う前は、自分の感情をコントロールすることが苦手で、人とすぐに壁を作ってしまうことがありました。通所後も、スタッフの方に気持ちをぶつけてしまうことがありましたが、受け止めてもらいました。

また、スタッフの方は、自分の将来のことを一緒に真摯に考えてくれたのです。人との関わりの中で、相手を信頼し、自分と向きあうことができたことが本当に嬉しかったです。 

現在も定着支援でお世話になっていますが、そのおかげで楽しく安定して働けています。 ありがとうございます。これからもよろしくお願いします!

最後に

ここまでご紹介してきた通り、就労支援には多種多様なサービスが存在します。どれも「働きたい」という気持ちを応援するサービスですが、目的、対象者、サービス内容はそれぞれ異なります。ご自身の状況や希望をよく把握し、適切なサービスを利用することが大切です。そのために、ご家族や主治医といった客観的な視点を取り入れること、お住まいの市区町村の担当窓口に相談すること、また、就労支援に特化した検索サイト等を活用することをおすすめします。

就労移行支援事業所の検索サイト『デイゴー就労支援ナビ』では、就職実績、職員の専門性、プログラム内容などを一括で比較することができますので、ぜひご活用ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事を書いた人

ジョブコーチ。大学卒業後、就労移行支援や特例子会社など障害のある人の就労支援に14年間携わる。自身も指定難病である。

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