就労移行支援と就労定着支援の違いを目的・期間・料金等から解説

仕事から離れている人や就職後に働き続けられるか不安な人の中には、「就労移行支援と就労定着支援って何が違うの?」と疑問を持っている人もいるかもしれません。

この記事では、就労移行支援と就労定着支援の違いについて、目的・期間・料金といった観点から解説していきます。

この記事の監修者

メンタルエイド代表。サービス管理責任者、社会福祉士、精神保健福祉士、ジョブコーチ、心理カウンセラー、幼稚園教諭。就労移行・就労定着支援サービスを行う事業所に12年従事。120名の障がい者就労の実績があり、面談は1,000人以上。多くの面談実績からオリジナルの上村式認知整理面談技法を発案。

目次

就労移行支援と就労定着支援の違いは?

就労移行支援と定着支援の大きな違いは、それぞれの目的です。就労移行支援が「障害のある人が一般企業等に就職をすること」が主な目的としているのに対し、就労定着支援は「一般企業等に就職をした障害のある人の長期的な職場定着」を目的としています。

さらに以下の表が示す通り、利用期間や対象者など細かな違いも多いです。

就労移行支援就労定着支援
目的障害のある人が一般企業等に就職をすること一般企業等に就職をした障害のある人の安定した職場定着
利用期間最長2年最長3年
利用料・費用所得によって異なる所得によって異なる
対象者一般企業等への就職を望む障害のある人で、適正に合った職場への就労が見込める65歳未満の人就労移行支援などの障害福祉サービスを経て就職し、6ヶ月が経過して生活面・就業面の課題を抱えている人
利用者の職場定着率・就労定着率※189.6%(6ヶ月後)※2約1,550か所の就労定着支援事業所のうち、98%以上が就労定着率5割以上 ※3

※1 就労定着支援の就労定着率は、過去3年間に就労定着支援を受けた総利用者数のうち、前年度末において就職が継続している人の割合。
※2 (引用:2017年障害者の就業状況等に関する調査研究p120|障害者職業総合センター)
※3 (引用:就労定着支援に係る報酬・基準について≪論点等≫p7|厚生労働省

就労移行支援と就労定着支援の【目的】の違い

就労移行支援と就労定着支援の大きな目的の違いは「就労に向けた支援」か「就労後の定着に向けた支援」かです。就労移行支援は主に一般就労(一般企業等への就職)に向けたスキルの習得や就職活動のサポートが目的である一方、就労定着支援は支援期間の終了後に特別な支援無しでも仕事を続けていくことができるような状態※を目指すことを目的としています。

※企業と本人で自立して安定した就労を継続していけるような状態を目指すことも目的のひとつです。また、就労定着支援の利用期間が終了したあとも地域の就労センターの支援を受ける場合もあります。

就労移行支援と就労定着支援の【利用期間】の違い

就労移行支援と就労定着支援には、利用期間にも違いがあります。就労移行支援の利用期間は原則として最長2年間ですが、就労定着支援の利用期間は最長3年間です。

ただし、就労移行支援は2年間を超えても利用が必要な場合、審査を経て必要と認められた場合のみ最大1年間支給決定期間が更新されます。※

また、就労定着支援も3年が経過した後も支援が完全に打ち切られるわけではなく、必要に応じて関係機関に引き継がれた後、引き続き定着支援を受けることができます。

グラフ, じょうごグラフ

自動的に生成された説明

図のように、就労移行支援を利用して就職した場合、6ヶ月間の定着支援が義務付けられています。この定着支援は、就労移行支援の中に含まれている障害福祉サービスです。

就労移行支援中の定着支援が終了した後は、引き続き就労の長期的な定着を目指して「就労定着支援」という別の障害福祉サービスをうけるかどうか選択することができます。

※ただし、市区町村によっては対応が分かれる場合がありますので、事前に確認が必要です。

就労移行支援と就労定着支援の【利用料】の違い

就労移行支援と就労定着支援の利用料は、どちらも1割が自己負担で残りの9割は自治体が負担します。また、所得による自己負担額は両者ともに違いはなく、以下の表のように世帯の収入状況によって利用料が決定する仕組みとなっています。

利用料は前年度の収入によって決まります。そのため、就労定着支援は、1年目の利用料は0円でも、2年目は利用料が変わる場合があります。

区分世帯の収入状況負担上限月額
生活保護生活保護受給世帯0円
低所得市町村民税非課税世帯※10円
一般1市町村民税課税世帯(所得割16万円未満※2)ただし、入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除く※39,300円
一般2上記以外37,200円
(出典:厚生労働省「障害者の利用者負担」により作成)

※1
3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入がおおむね300万円以下の世帯が対象。

※2
収入がおおむね670万円以下の世帯が対象。

※3
入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「一般2」に該当。

世帯の範囲は、障害のある人とその配偶者となっています。例えば同居している親の収入が700万円あったとしても、世帯収入とみなされるのは本人の収入のみとなります(18歳以上の場合)。ただし、配偶者がいる場合は、配偶者の収入も世帯収入に加えられます。

就労移行支援と就労定着支援の【対象者】の違い

就労移行支援と就労定着支援は、支援の目的が異なることから対象者にも違いがあります。

支援の種類対象者
就労移行支援一般就労を望む障害のある人のうち、技術や知識の習得、職場探しなどを通じて企業への就労が見込める18歳以上65歳未満の人
就労定着支援就労移行支援や自立訓練などの障害福祉サービスを利用して一般就労し6ヶ月が経過した後、就労によって私生活や就業面で課題を抱えている人

上の表が示す通り、就労移行支援はまだ一般就労をしていない人でも利用できますが、就労定着支援は既に一般就労をしている人が対象です。上記で解説した2つのサービスの目的にも目を向けると、理解がしやすいでしょう。

就労移行支援と就労定着支援の【定着率】の違い

就労移行支援と就労定着支援の定着率は、以下の通りとなっています。

支援の種類定着率
就労移行支援89.6%(6ヶ月後)※1
就労定着支援約1,550ヶ所の就労定着支援事業所のうち、98%超の事業所が就労定着率5割以上 ※2,3

※1(引用: 2017年障害者の就業状況等に関する調査研究p10)

※2(引用:就労定着支援に係る報酬・基準について≪論点等≫p7|厚生労働省

ただし、両者の定着率は支援を提供する事業所によっても差がありますから、事業所を選ぶ際には、事業所が公表している定着率を事前に確認してみましょう。

※3 就労定着支援の就労定着率は、過去3年間に就労定着支援を受けた総利用者数のうち、前年度末において就職が継続している人の割合。

就労移行支援と就労定着支援以外の就労支援は?

障害のある人への就労支援は、就労移行支援と就労定着支援だけではありません。今回は以下の4つの就労支援機関を取り上げ、それぞれの支援内容を解説します。

ジョブコーチ

ジョブコーチは、就労先の企業にジョブコーチ(職場適応援助者)が出向き利用者と事業主双方への援助を通して、障害のある利用者の職場適応を支援するサービスです。ジョブコーチには以下の3種類があります。

配置型地域障害者職業センター所属のジョブコーチが事業所(企業)に出向き支援をする
訪問型就労支援を提供している社会福祉法人などに所属するジョブコーチが事業所(企業)に出向き支援をする
企業在籍型利用者と同じ企業に所属し、その企業の業務と支援を並行して行う

ジョブコーチの支援期間は1~8ヶ月となっており、就労移行支援や就労定着支援と比べると短めです。ただし、期間終了後も数週間~数ヶ月に1度フォローアップを受けることができます。

障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)

障害者就業・生活支援センターは、ハローワークや地域障害者職業センター、特別支援学校などさまざまな機関と連携して障害のある人の就労や生活を支援する機関です。

就労移行支援・就労定着支援と大きく違うのは、利用料がかからない点です。就労移行支援・就労定着支援共に所得に応じて利用料が発生しますが、障害者就業・生活支援センターの支援は無料で受けられます。

ただし、ハローワークのような職業のあっせん(紹介)は行っていません。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、全国47都道府県に設置されており、障害のある人の就労に向けて、ハローワークと緊密に連携をしながら専門的な職業リハビリテーションを実施する機関です。

センター内に設けられた模擬的な仕事場で仕事の流れを身につけたり、レクリエーショを通して社会生活へ慣れたりと、就労に向けてさまざまなサポートを受けることができます。

就労継続支援A型/B型事業所

就労継続支援事業所は、どちらも障害のある人が工賃や給与を受け取りながら仕事の機会を得ることができる事業所ですが以下の違いがあります。

就労継続支援A型就労継続支援B型
対象年齢65歳未満年齢の定めなし
雇用契約ありなし
報酬最低賃金以上を保証事業所ごとに決定

A型は事業所と利用者が雇用契約を結んで仕事をするため、仕事に対して最低賃金以上の報酬が保証されています。一方B型は雇用契約を結ばずに事業所が独自に定めた報酬の元で作業をする仕組みです。

就労移行支援と違い、就労継続支援の対象者は「障害がある人で、なおかつ一般就労が難しい人」となっています。

就労定着支援サービスのある就労移行支援事業所の例

ここからは、就労定着支援サービスがある就労移行支援事業所をご紹介します。

東京都や千葉県の就労移行支援事業所を一例としてご紹介していますが、デイゴー就労支援ナビでは、お住まいの地域で就労定着支援サービスのある就労移行支援事業所を一覧で比較検討することができます。

カレント(東京都)

カレントは、新宿御苑前駅から徒歩3分、アクアリウムの設置や少人数制の採用など、利用者が落ち着いて支援を受けられる環境を整えています。

就職定着率90%以上
昨年の就職人数10~14名(定員12名)
平均利用期間6~12ヶ月
対象障害精神/知的/発達
デイゴー求人ナビ・就労支援ナビ
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Linkキャリアサポートセンター(東京都)

Linkキャリアサポートセンターは、JR池袋駅から徒歩7分、公認心理師や産業カウンセラーとの個別面談が受けられる事業所です。

就職定着率80%以上
昨年の就職人数10~14名(定員20名)
平均利用期間6~12ヶ月
対象障害精神/知的/発達/身体/難病
デイゴー求人ナビ・就労支援ナビ
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ラルゴ神楽坂(東京都)

ラルゴ神楽坂は江戸川橋駅から徒歩5分にあり、うつやADHDなどさまざまな障害別プログラムを導入している事業所です。

就職定着率90%以上
昨年の就職人数6~9名(定員10名)
平均利用期間3~6ヶ月
対象障害精神/発達
デイゴー求人ナビ・就労支援ナビ
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就労移行支援事業所リバーサル浦安(千葉県)

リバーサル浦安は、東京メトロ東西線浦安駅から徒歩1分にあり、検定受験料を全額補助してくれる事業所です。

就職定着率90%以上
昨年の就職人数6~9名(定員20名)
平均利用期間6~12ヶ月
対象障害精神/知的/発達/身体/難病
デイゴー求人ナビ・就労支援ナビ
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ニューロリワーク 新松戸センター(千葉県)

ニューロリワーク 新松戸センターは新松戸駅から徒歩2分で、脳科学や認知行動療法に基づいた支援を提供する事業所です。

就職定着率90%以上
昨年の就職人数10~14名(定員18名)
平均利用期間3~6ヶ月
対象障害精神/発達
デイゴー求人ナビ・就労支援ナビ
\復職や就職を希望する方へ、心身の健康からサポートする就労移行支援事業所/ ニューロリワーク 新松戸センターは千葉県 松戸市の就労移行支援事業所です。雰囲気やサポート内容を確認してから、気になる事業所には無料でお問い合わせが可能です。就労...

就労移行支援と就労定着支援に関するよくある質問

そもそも就労移行支援とは?

就労移行支援事業所は、障害や病気のある人が一般企業等へ就職するために、就職するためのスキルを身に付けたり、就職活動のサポートを受けたりすることができる障害福祉サービスです。

そもそも就労定着支援とは?

就労定着支援とは、障害のある人が一般企業に就職した後、職場で安定して働き続けるために提供される支援サービスです。最大3年まで利用でき、利用期間後に特別な支援無しでも仕事を続けていくことができるような状態を目指します。

就労移行支援事業所を利用したあとに、引き続き同じ事業所による就労定着支援サービスを受けたい場合でも、新しく就労定着支援を利用するための「受給者証」を発行する必要があります。

就労移行支援事業所は必ず就労定着支援を行っているの?

就労移行支援事業所の中には、就職後6ヶ月間の職場定着支援と最大3年間の就労定着支援の両方を提供しているところもあります。しかし、すべての事業所が最大3年間の就労定着支援を提供しているわけではありません。

就労移行支援を利用する際には、最大3年間の就労定着支援にも対応しているか事前にチェックしましょう。

最後に

この記事では障害のある人の就労を支援する「就労移行支援」と「就労定着支援」について、両者の違いや類似のサービス・機関を解説しました。

就労定着支援が就労後のサポートに主眼をおいているのに対し、就労移行支援はこれから就労する人への支援が主な目的です。

両者以外にも頼れる福祉サービスや機関はたくさんあるので、興味があれば問い合わせてみましょう。

また、数ある事業所の中からご自身に合う事業所を見つけるには、まず2〜3ヶ所の事業所の見学や体験をおすすめします。

就労移行支援事業所の検索サイトデイゴー就労支援ナビでは、ご希望の地域や最寄り駅から、就労定着支援サービスの有無や就職実績、プログラム内容などから様々な事業所を比較検討できるので、ぜひご活用下さい。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

この記事を書いた人

就労継続支援B型事業所で職業指導員として勤務経験がある。そのほか、宿泊施設や工場、Webライターなどの仕事に従事。現在はフリーランスのWebライターとして活動中。

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