うつ病などの精神疾患で休職している人の中には、「就労移行支援とリワークは何が違うの?」や「様々な復職支援があるが、違いが分からない」といった疑問を持っている人もいるかもしれません。
この記事では、目的や料金、対象者といった就労移行支援とリワークの違いや、復職支援の種類についてご紹介していきます。
就労移行支援とリワーク・復職支援の違いは?
就労移行支援とリワーク・復職支援の違いは、その目的や対象者にあります。一般的に、リワークは「Return To Work」の略称で、休職中の人が元にいた職場に復帰するためのサポートを行います。一方、就労移行支援は離職中の障害や病気のある人が一般企業等へ就職するためのサポートを行います。
ただし、一部の就労移行支援事業所では、休職中の人の職場復帰を支援するリワークプログラムを行っているところもあります。
就労移行支援(リワークなし) | 就労移行支援(リワークあり) | 医療リワーク | 職リハリワーク | |
---|---|---|---|---|
実施主体 | 就労移行支援事業所 | 就労移行支援事業所 | 医療機関 | 地域障害者職業センター |
目的 | 就職 | 復職 | 復職 | 復職 |
対象者 | 離職中の人 | 休職中の人 | 休職中の人 | 休職中の人 |
料金 | 月額0円~3万7,200円(所得に応じて変動) | 月額0円~3万7,200円(所得に応じて変動) | 月額0円~2万円(所得に応じて変動、自立支援医療適用の場合) | 無料 |
就労移行支援(リワークなし)とは
就労移行支援事業所は、障害や病気のある人が訓練を通して一般企業等への就職を目指すサポートを行うサービスです。
リワークプログラムを行っていない就労移行支援事業所には、長い間働いていない人や一度も一般企業等で働いたことがない人向けに、ビジネスマナーやPCスキルを学んだり、生活リズムを整えたりするプログラムが用意されているところもあります。
また、職場実習や応募書類の添削、模擬面接といった就職活動のサポートも行ってくれます。
就労移行支援(リワークなし)の対象者
就労移行支援を利用できるのは、以下の4つの条件を満たしている人が対象です。
- 一般就労を希望している
- 障害・難病がある
- 65歳未満である
- 適性に合った職場への就労等が見込まれる
就労移行支援(リワークなし)の料金
就労移行支援は障害者総合支援法に基づいて定められた障害福祉サービスのうちのひとつで、利用料金は1日あたりおよそ500円〜1,400円です。ただし、所得に応じてひと月当たりに支払う上限金額が決まっているため、自己負担額なしで就労移行支援を利用する人も多いです。
厚生労働省によると、障害福祉サービスを利用している人(98.5万人)のうち、約92.7%が無料で利用していることが分かっています。
また、企業によっては、リワーク費用を負担してくれる場合もあります。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満)ただし、入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除く※ | 9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「一般2」に該当。
就労移行支援(リワークあり)とは
就労移行支援の中には、休職中の人が元の職場に戻るためのサポートをするリワークプログラムを行っている事業所もあります。
リワークプログラムを行っている就労移行支援では、復職後も安定して就労を続けられるように、不調の原因を明らかにしたうえで対策を考えたり、体力を回復したりするプログラムを行います。
就労移行支援(リワークあり)の対象者
休職中に就労移行支援でリワークプログラムを受けるためには、前述した条件に加えて、以下の要件をいずれも満たす必要があります。
- 休職者を雇用する企業、地域における就労支援機関や医療機関等による復職支援の実施が見込めない場合、または困難である場合
- 休職中の障害者本人が復職を希望し、企業及び休職に係る診断をした主治医が、就労系障害福祉サービスによる復職支援を受けることにより復職することが適当と判断している場合
- 休職中の障害者にとって、就労系障害福祉サービスを実施することにより、より効果的かつ確実に復職につなげることが可能であると市区町村が判断した場合
就労移行支援(リワークあり)の料金
リワークプログラムを行っている就労移行支援の利用料金は、リワークプログラムを行ってない就労移行支援と同じ考え方で、所得に応じてひと月当たりに支払う上限金額が決まっています。
休職している人で、前年度にある程度の収入がある場合は、自己負担額が発生する場合が多いです。
医療リワークとは
医療リワークは、精神科や心療内科といった医療機関のデイケアなどで実施する、休職中の人の復職と再休職を予防するための治療プログラムです。
医療リワークでは、医師や看護師などの医療スタッフと共に、規則正しい生活リズムの中で症状を安定させることや、集団でのソーシャル・スキル・トレーニング、認知行動療法といったプログラムを行い、復職への準備を進めます。
医療リワークの対象者
医療リワークの対象者は、うつ病などの精神疾患により休職中で、復職を希望している人です。リワークプログラムを受けるためには、主治医の許可が必要です。
医療リワークの料金
医療リワークは医療保険に基づいて行われるため、原則3割の料金を自己負担する必要があります。
通院が必要な精神疾患やてんかんのある人が利用できる自立支援医療(精神通院医療)が適用された場合、通院にかかる医療費の自己負担額が原則1割になります。ただし、世帯の収入状況に応じて自己負担額に上限が設けられており、世帯の範囲は健康保険証の場合と同じです。
また、企業によっては、リワーク費用を負担してくれる場合もあります。
所得区分 | 重度かつ継続以外 | 重度かつ継続 |
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市町村民税所得割235,000円以上(年収約833万円以上) | 対象外 | 20,000円 |
市町村民税所得割33,000円以上235,000円未満(年収:約400~833万円未満) | 総医療費の1割または高額療養費(医療保険)の自己負担限度額 | 10,000円 |
市町村民税所得割33,000円未満(年収約290~400万円未満) | 5,000円 | |
市町村民税非課税(「本人又は障害児の保護者の年収80万円以下の世帯」を除く) | 5,000円 | |
市町村民税非課税(本人又は障害児の保護者の年収80万円以下) | 2,500円 | |
生活保護世帯 | 0円 |
職リハリワークとは
職リハリワークは、全国47都道府県に設置されている地域障害者職業センターが、主治医の助言を得ながら、企業の担当者と協働してうつ病等の疾患により休職している人の職場復帰のための支援を行います。
リワークの支援計画に基づいて、地域障害者職業センターに通ってプログラムを受講するほか、必要に応じて職場との調整によるリハビリ出勤を行うなどして、職場への復帰を目指します。
職リハリワークの対象者
職リハリワークは、民間企業等の雇用保険適用事業所に雇用されている休職中の人で、精神疾患の診断を受けており、復職する意思がある人が利用できます。
雇用保険加入の事業所に雇用されている従業員が対象となるため、国、地方公共団体、行政執行法人及び特定地方独立行政法人の職員は利用することができません。
職リハリワークの料金
職リハリワークのプログラム等の受講料は必要ありません。
復職を目指すためにはどのリワークに通えばいい?
ここまでご紹介してきたように、様々なリワークプログラムが存在するため、どのリワークに通えばいいか迷っている人もいるのではないでしょうか。
人によって障害も状況も様々ですので一概には言えませんが、一般的にどんな人にどのリワークプログラムが向いているのかご紹介していきます。
就労移行支援のリワークはこんな人におすすめ
就労移行支援が行っているリワークプログラムは、事業所ごとにプログラム内容が様々ですが、就職後の職場定着に対するノウハウを多く持っているため、復職後に安定的に働き続けたい人におすすめです。また、もしも復職ではなく転職をしたいと考えが変わった場合にも、就職のサポートを行ってくれます。
医療リワークはこんな人におすすめ
医療リワークは、医師や看護師といった専門職と一緒に復職を目指すことができるため、治療や再休職予防に力を入れたい人におすすめです。また、集団でのトレーニングを行いたい人にも医療リワークは向いています。
職リハリワークはこんな人におすすめ
職リハリワークは、休職者本人と職場の担当者、主治医の3者をまきこんで職場復帰までの支援を行います。リハビリ出勤の調整も行ってくれるので、職場でのコミュニケーションが不安な人に向いています。また、無料で利用できるため、費用負担が気になる人にも職リハリワークはおすすめです。
リワーク・復職支援を行っている就労移行支援事業所5選
ここからは、リワークプログラムを行っている就労移行支援事業所をご紹介していきます。ここでは一例として東京都や埼玉県、大阪府の就労移行支援事業所を挙げていますが、デイゴー就労支援ナビではお住まいの都道府県や駅から、就労移行支援事業所を探すことができます。
ベスリ就労支援センター
ベスリ就労支援センターは、大手町駅より徒歩4分、短期間での職場復帰を目指して復職を中心に支援しています。
- 大手町駅より徒歩4分、神田駅より徒歩8分
- 心療内科医、心理士、産業医、保健師、企業の総務人事経験者など様々な立場を経験したスタッフがサポート
- 「短期間での職場復帰」を目指す
ニューロリワーク 大塚センター
ニューロリワーク 大塚センターは、大塚駅前駅より徒歩3分、メンタル不調のある人を中心に、就職や職場定着へ向けたサポートをしています。
- 大塚駅より徒歩3分
- 科学的根拠に基づいたプログラムを提供
- 毎年90%以上が安定して就労を継続
リカバリーらぼ 自分らしさ
休職・復職支援 リカバリーらぼ 自分らしさ事業所は船橋駅から徒歩12分にある、就労移行支援・リワーク支援の両支援を受けることができる事業所です。
- 京成船橋駅より徒歩10分
- 医療機関の治療方針にそった形での支援
- 早期の復職実績あり
ニューロリワーク大宮南センター
ニューロリワーク大宮南センターは、大宮駅東口より徒歩10分、就職後の定着支援や昼食・交通費の補助、PC無料貸与等の支援が充実している事業所です。
- 大宮駅より徒歩10分
- 復職後の就労定着支援サービスあり(最大3年間)
- メンタル不調でお困りの方、生活リズムを自力で整えるのが苦手な方、対人関係でお困りの方へのサポート
ラ・レコルト茨木
ラ・レコルト茨木は、在宅通所に対応した支援を提供し、利用者が自宅から職場適応力を高めるためのトレーニングを受けられる環境を整えています。社会適応力向上に重点を置いたプログラムが充実しています。
- 茨木市駅より徒歩3分
- 交通費・お弁当・資格試験代金の補助あり
- 復職後の就労定着支援サービスあり(最大3年間)
就労移行支援事業所のリワークを利用して復職した人の体験談
双極性障害・適応障害で復職した人の体験談(20代)
就労移行支援事業所に通う前は生活リズムが崩れていて、眠れないことが多い日々を送っていましたが、通所をし始め、生活習慣の乱れを改善する「ブレインフィットネスプログラム」を受けることで生活リズムが整っていきました。また、物事への柔軟性を高める「FITプログラム」では考え方の柔軟さを身に付けることができ、感情に振り回されずに論理的に考えられるようになりました。
職場への復帰の段階では、リワーク活動報告書を職場に提出してもらえたことで、活動の状況をスムーズに把握してもらうことができ、リハビリ勤務につなげることができました。リハビリ勤務期間中は担当支援員の心理師さんに沢山話しを聞いてもらえたことが、心の支えになりました。
適応障害で復職した人の体験談(30代)
就労移行支援事業所の通所中は、担当支援員の心理士さんから「自分の心だけでなく、身体の変化にも関心を向けること」というアドバイスがとても心に残っています。今まで、自分の体調の変化に興味がなかったため、就労ができなくなるまで自分を追い込んだことを反省して、今後は毎日自分の体調や気持ちに関心を向けて、どちらの健康も欠けることなく過ごしたいという意識が高まりました。
復職面談のための資料作成がかなり大変でしたが、たくさんのアドバイスとお力添えをいただき無事完成することができました。担当支援員の心理師さんが親切に何でも相談にのってくれたので、とても心強かったです。
最後に
この記事では、目的や料金、対象者といった就労移行支援とリワークの違いや、復職支援の種類についてご紹介してきましたが、いかがでしたか。
うつ病等の精神疾患がある人は、復職後に疾患が再発しないか不安に思っている人も多いかと思います。再休職を防ぐためにも、ご自身の状況にあったリワークプログラムを選んでみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。