特化型の就労移行支援10選!元支援員が一般型との違いや選び方のポイントを解説

障害や病気があり働くことが難しい方や、休職している方の中には、「特化型は一般的な就労移行支援事業所とは何が違うの?」や「どんな特化型の就労移行支援事業所があるの?」といった疑問を持っている方もいるかもしれません。

この記事では、10の特化型の就労移行支援事業所をご紹介するほか、就労移行支援事業所で働いていた筆者の経験から、特化型と一般型の違いや、職種や特定の障害に特化した就労移行支援事業所を選ぶ上でのポイントを解説していきます。

この記事の監修者

メンタルエイド代表。サービス管理責任者、社会福祉士、精神保健福祉士、ジョブコーチ、心理カウンセラー、幼稚園教諭。就労移行・就労定着支援サービスを行う事業所に12年従事。120名の障がい者就労の実績があり、面談は1,000人以上。多くの面談実績からオリジナルの上村式認知整理面談技法を発案。

目次

特化型の就労移行支援事業所とは

就労移行支援事業所とは、一般就労を希望する障害・難病のある人に対し、就職活動を支援する事業所です。長期就労を目指して必要な訓練プログラムを提供し、就職後も継続してサポートします。

就労移行支援事業所の中には、「特化型」とよばれる事業所があります。特化型の事業所では、IT分野など特定の職種や、特定の障害のある人に特化した支援を行っています

一般型と特化型の就労移行支援の違いは?

一般型と特化型の就労移行支援は、主に訓練の内容に違いがあります

就労移行支援事業所の多くは「一般型」とよばれ、どのような障害のある人でも受け入れ、職域を特定せずに就職活動に必要なビジネスマナー等のプログラムを提供しています。

一般型はさまざまな障害のある人の対応をし、職域を特定せずに就職活動のサポートをしているため、「いくつかの障害を持っている」「現時点では目指したい職種が決まっていない」という方は相談しやすいでしょう。

一般型の就労移行支援事業所の訓練内容の例
  • ビジネスマナー
  • コミュニケーション
  • 運動プログラム
  • 模擬就労
  • 応募書類添削

一方、特化型は、「特定の障害のある人」に特化している就労移行支援事業所と、「特定の職域」に特化している就労移行支援事業所の2種類があります。

特定の障害特化型では障害理解を促すプログラムが充実していたり、同じ障害や病気のある人同士で困りごとについて話し合えたりするため、自己理解を深めたい人に向いています。職業特化型では主にIT系のスキルを専門的に学べるところが多く、IT系の職種に就きたい人に向いています。

特定の障害特化型の就労移行支援事業所の訓練内容の例
  • 障害や疾病の特性理解
  • 自己理解
  • 仕事場でのコミュニケーションの方法
  • 集中力を持続させる方法
  • リフレッシュの仕方
職業特化型の就労移行支援事業所の訓練内容の例
  • プログラミング
  • Webデザイン
  • 動画編集
  • 資格取得
  • 特定の職種の業界研究

特化型の就労移行支援事業所のおすすめの選び方

一般型と特化型で迷っている場合、まずは、就労移行支援事業所で何を学びたいかを考えましょう。どのような仕事に就きたいかは決まっておらず、一般的なことを幅広く学びたい場合は一般型が適しているでしょう。

一方で、「自身の障害について理解を深めたい」「ITのスキルを身につけたい」等目的がはっきりしているのであれば、それに特化した就労移行支援事業所を探してみるのがおすすめです。

特化型の就労移行支援事業所を選ぶ時は、以下の6つのポイントを比較してみてください。ほとんどの就労移行支援事業所では見学を受け付けているので、ホームページ等でわからない情報があれば、見学時に直接聞いてみるといいでしょう。

ポイント①就職実績

就労移行支援事業所は就職を目指して通うところなので、就職実績はとても大切なポイントです。過去の就職者数は各ホームページやデイゴー就労支援ナビ等で確認できます。

しかし就職先まで知ることは難しい場合が多いので、もし見学に行く機会があれば、自身が就職したい業界に就職した卒業生がどの程度いるかを遠慮せずに聞いてみてください。

就職実績が多いほどその業界のつながりが多く、就職に有利な情報を持っている可能性があります。また、業界の状況を理解しているスタッフが多いほど、その業界に就職するための具体的なアドバイスがもらいやすいです。

ポイント②訓練の内容

就労移行支援事業所ごとによって訓練内容は大きく違うので、自身が学びたいことが学べるかどうか、事前にしっかり確認しましょう。

生きづらさの要因となっている障害や疾病について理解を深め、よりよく生きるヒントを得たいのであれば、障害特化型の就労移行支援事業所が適しています。各ホームページやデイゴー就労支援ナビ等を参考にして、どのような障害や疾病に特化し、理解を深めるプログラムがどの程度あるか調べてみましょう。

特定の業界に就職希望があるならば職業特化型の就労移行支援事業所を探し、自身が学びたいスキルが学べるかどうか、訓練内容を確認してみてください。

ポイント③訓練のレベル感

訓練の内容を確認したら、レベル感もチェックしておきましょう。

例えば、「パソコン講座」は多くの就労移行支援事業所で実施していますが、レベル感はかなり違います。WordやExcelの基礎的な操作方法を学ぶところがあれば、プログラミングやWebデザインのスキルを専門的に学ぶところもあります。

自身が学びたいことのレベル感を確認しておくことで、後から「こんなはずではなかった」と後悔する可能性が低くなります。

ポイント④在宅・オンラインでの訓練

今は在宅勤務が珍しくないため、在宅・オンラインでの訓練があると、仕事の幅が広がる可能性があります。特にIT系の仕事ではオンライン会議が行われる可能性もあるので、オンラインに慣れておくと就職後に役立つことがあります。

また障害や疾病の特性上外出が難しい状況の時に、オンラインでプログラムや面談が受けられる環境があれば、途切れなく支援が受けられます。

しかし、在宅・オンラインでの支援を受ける際には市区町村の許可が必要な場合があります。オンライン訓練が受けられるかどうかは、お住いの市区町村や各就労移行支援事業所に聞いてみましょう。

ポイント⑤駅からの距離・通いやすさ

就労移行支援事業所でオンライン訓練が受けられたとしても、ほとんどの事業所では通所がメインであることに変わりありません。訓練や支援が途切れないように安定して通所することで、よりよい結果につながっていきます。

また、就職活動をする際に、企業が重視しやすいのは「勤怠の安定」です。就労移行支援事業所に休みなく通所していたという実績は、就職活動で有利となります。

安定して通所するためには、通いやすさが重要なポイントです。いくらプログラム内容が充実していても、通所に片道2時間かかる就労移行支援事業所であれば、毎日通い続けることが難しいと感じる人が多いのではないでしょうか。ですから、無理せずに通い続けることができる範囲で、就労移行支援事業所を探してみましょう。

ポイント⑥事業所の環境や雰囲気

環境や雰囲気というとあいまいではありますが、「自身にとって不快ではない空間であること」は意外に大事なポイントです。

例えば、発達障害のある人で音に敏感な方だと、空調の音がどうしても気になってしまい、訓練に集中できない場合があります。その他、匂い、照明の明るさ、部屋の広さ等、自身にとって不快でないかどうか、事前に見学をして確かめることをおすすめします。

特化型でおすすめの就労移行支援事業所10選

ここからは、特化型の就労移行支援事業所をご紹介していきます。ここでは一例として東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の就労移行支援事業所を挙げていますが、デイゴー就労支援ナビではお住まいの都道府県や駅から、就労移行支援事業所を探すことができます。

ITに特化した就労移行支援事業所6選

IT就労ビズウェル 新宿校 東京都

IT就労ビズウェル 新宿校のポイント
  • Excel、Word、プログラミング、Webデザイン等が学べる
  • 新宿御苑前駅から徒歩1分
  • 現場エンジニアによる直接指導も可能

manaby秋葉原事業所 東京都

manaby秋葉原事業所のポイント
  • 独自に開発したe-ラーニングでITスキルが学べる
  • 末広町駅、御徒町駅、秋葉原駅、上野御徒町駅、湯島駅から徒歩可
  • デスクごとに仕切りがあり、集中できる環境

就労移行ITスクール横浜駅西口 神奈川県

就労移行ITスクール横浜駅西口のポイント
  • Microsoft Office、Web系言語、Adobe、ITパスポート等が学べる
  • 元エンジニア、Webディレクター、経営者等、経験豊富なスタッフが在籍
  • 利用者一人ひとりに合わせたカリキュラムを提供

ダイアモンドマーリン 神奈川県

ダイアモンドマーリンのポイント
  • プログラミングコース、デザインコース、Webコースの3コースがある
  • Microsoft MOSやAdobeを含め、無料で資格取得ができる
  • 個別対応で、専門スタッフが個々に対応

就労移行ITスクール柏 千葉県

就労移行ITスクール柏のポイント
  • 未経験者でもIT系の資格取得が目指せる
  • 柏駅から徒歩5分
  • 実際の就労を想定した訓練で、実践的なパソコンスキルを身につける

就労移行支援事業所COCOCARA所沢オフィス 埼玉県

就労移行支援事業所COCOCARA所沢オフィスのポイント
  • Webデザインや写真・映像編集が学べる
  • 年間20名ほどの就職者を輩出
  • 1人1台パソコンを無料貸与し、在宅トレーニングを実施

発達障害のある人の支援に特化した就労移行支援事業所4選

ディーキャリア芝浦オフィス 東京都

ディーキャリア芝浦オフィスのポイント
  • 発達障害の特性に応じたコンテンツ
  • 直近2年職場定着率100%
  • 模擬職場でトレーニングを実施

HOPE神田 東京都

HOPE神田のポイント
  • コミュニケーションスキルやマナー等のプログラムが充実
  • 一般就労移行率100%(2023年)
  • 多種多様な事務作業、軽作業の経験ができる

ブライトさいたま 埼玉県

ブライトさいたまのポイント
  • コミュニケーションが苦手な人も安心できる静かな環境
  • 「やりたいこと」「できること」を分析して就職につなげる
  • eラーニングが充実

atGPジョブトレ秋葉原第2 東京都

atGPジョブトレ秋葉原第2のポイント
  • 就職後も自身の障害とうまく付き合うスキルが身につく
  • 事務職で活躍するためのプログラムが多数
  • 同じ障害と向き合う仲間同士でのグループワークを実施

都道府県別!おすすめの特化型就労移行支援

都道府県ごとにおすすめの特化型の就労移行支援事業所をまとめていますので、こちらも合わせてご覧ください。

都道府県別でおすすめのIT特化型就労移行支援

就労移行支援に関するよくある質問

特化型の就労移行支援に通うメリットは?

職業に特化した就労移行支援に通うと、特定の職種に必要なスキルを集中的に学ぶことができるため、専門性の高い職種に就職できる可能性が高くなります。

また、特定の障害に特化した就労移行支援では、特定の障害や病気を理解するためのプログラムが充実しているほか、同じ障害や病気のある人同士でよくある困りごとへの対処法などを話し合うことができるメリットがあります。

就労移行支援はどんな人が利用できる?

就労移行支援は、以下の4つの条件を満たしている人が利用できます。

  1. 一般就労を希望している
  2. 障害・難病がある※
  3. 65歳未満である
  4. 適性に合った職場への就労等が見込まれる

※主治医の意見書や指示書があれば障害者手帳がなくても利用可能です。

就労移行支援と就労継続支援の違いは?

就労移行支援は一般企業への就職を目指して、原則2年間という期間限定で就職活動の支援をする制度です。賃金や工賃は発生しません。

一方で、就労継続支援は一般企業への就職が難しい人に対して働く機会を提供し、作業に対して賃金や工賃を支払う制度です。利用期間の定めはありません。

就労移行支援は利用料金がかかるの?

利用者本人、または世帯(配偶者)の収入によって異なります。

原則は利用したサービス料の1割が本人負担分で、1日あたり「500〜1,400円」程度です。しかし、利用者やその世帯の所得によって1ヶ月の利用料の上限が定められています。

前年度に収入がなかった利用者は1ヶ月利用料が「0円」になることが多いです。収入があった利用者やその世帯は1ヶ月の上限が「9,300円」または「37,200円」と設定され、その範囲内で利用料を支払います。

厚生労働省によると、障害福祉サービスを利用している人(98.5万人)のうち、約92.7%が無料で利用していることが分かっています。

最後に

ここまで、10の特化型の就労移行支援事業所をご紹介したほか、就労移行支援事業所で働いていた筆者の経験から、特化型と一般型の違いや、職種や特定の障害に特化した就労移行支援事業所を選ぶ上でのポイントを解説してきましたが、いかがでしたか。

特化型の就労移行支援事業所は、プログラムの内容や支援対象の障害以外にも、事業所の雰囲気や訓練のレベル感など、様々な違いがあります。デイゴー就労支援ナビでは、通いたい駅から近い就労移行支援事業所を探せるほか、就職人数や就職後の定着率といった就職実績を比較することができますので、ぜひご活用ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事を書いた人

社会福祉士。総合病院で医療ソーシャルワーカーとして8年間勤務した後に、就労移行支援事業所で12年間勤務。サービス管理責任者、生活支援員、職業支援員を担当。就労移行支援事業所では発達障害のある人を中心に約300人の支援に携わってきた。

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