発達障害があるために就職が難しいと感じている方や休職している方の中には、「就労移行支援事業所は発達障害のある人も使えるの?」や「発達障害がある人向けの就労移行支援事業所にはどのようなものがあるの?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、発達障害のある人が利用できる就労移行支援事業所の一覧やカリキュラム、発達障害のある人におすすめな就労移行支援事業所の選び方をご紹介していきます。
発達障害のある人が利用できる就労移行支援事業所とは
就労移行支援事業所は、一般企業で働くことを希望する障害や難病のある人が、訓練や実習等を通して、適性に合った職場への就労や定着を目指すサービスです。
利用期間は原則24ヶ月(2年)以内で、就労に必要な知識やスキル向上のためのトレーニングや個々の適性に合った職場の開拓、就職活動のサポートを受けることができます。
就労移行支援事業所の利用対象となる発達障害は?
以下の4つの条件を満たしている場合に就労移行支援事業所を利用することができ、自閉スペクトラム症や注意欠陥多動性障害、学習障害といった発達障害も対象の障害になっています。
また、障害者手帳を持っていないグレーゾーンの方の場合でも、主治医の意見書等があれば就労移行支援を利用することができます。
- 一般就労を希望している
- 障害・難病がある
- 65歳未満である
- 適性に合った職場への就労等が見込まれる
就労移行支援を利用した発達障害のある人の就職率
「就労移行支援事業所を利用したら本当に就職できるの?」と疑問に思う人もいるかもしれません。ここでは、東京都の調査を例に、発達障害のある人で、就労移行支援事業所を利用して就職した人の割合をご紹介します。
以下の図のように、就労移行支援を利用した発達障害のある人の就職率は、2021年度に『51.4%』となっており、約半数が就労移行支援を卒業した後に就職をしていることが分かります。
発達障害がある人向けの就労移行支援を利用して就職するまでの流れ
就労移行支援事業所では一般企業に就職するまでに、基礎訓練期(通所前期)・実践的訓練期(通所中期)・就職準備期(通所後期)と、大きく分けて3つのステップを踏んでいくことになります。
①:基礎訓練期(通所前期)
基礎訓練期では、個別の支援計画をもとに、自分の障害特性についての理解を深めることや障害特性による苦手への対策を練ること、生活リズムを整えることなど、企業で働くための基礎的な訓練を行います。
また、
- 自己認知・自己肯定感を上げる方法
- コミュニケーションの取り方
- アンガーコントロールの方法
- 日常におこる課題の解決する手がかりを得るためのロールプレイイング
といったプログラムを行う事業所もあります。
②:実践的訓練期(通所中期)
基礎体力の向上や自身の適性や課題の把握が進むと、ビジネスマナーの習得や職場実習などの企業で働くための実践的な訓練を行います。
また、発達障害のある人に向けて、
- 自分の長所・短所の理解と伝え方
- 自分の取扱説明書の作成
- 他者理解(どんな行動をしたら相手はどう思うのか?を学ぶ)
といったプログラムを行う事業所も多いです。
③:就職準備期(通所後期)
一般企業などへの就職に向けて、自身の希望や特性にあった職場を見つけるために、事業所のスタッフによるサポートを受けながら求職活動を行います。
企業へ依頼する合理的配慮や志望理由を一緒に考えることや、履歴書などの応募書類の添削といったサポートを受けることができます。
発達障害がある人も利用対象の就労移行支援事業所の一覧
ここからは、発達障害に特化した就労移行支援事業所をご紹介していきます。ここでは一例として東京都の就労移行支援事業所を挙げていますが、デイゴー就労支援ナビではお住まいの都道府県や駅から、発達障害のある人が利用できる就労移行支援事業所を探すことができます。
ディーキャリア芝浦オフィス
- 発達障害の特性に応じたコンテンツ
- 直近2年職場定着率100%
- 模擬職場でトレーニングを実施
就労移行支援事業所 Pinto
- 流山おおたかの森駅より徒歩2分
- リワークプログラムあり
- 一般就労移行率94%(2022年)
ラルゴ神楽坂
- 職場定着率は100%(2021年、2022年)
- 最大3年間の定着支援
- ハローワークと連携
就労移行支援事業所 プレンティとしまく
- 在宅訓練も実施
- 復職にも力を入れて対応
- 新大塚駅から徒歩3分
ディーキャリアITエキスパート 中野オフィス
- 発達障害の特性に応じたコンテンツ
- 全スタッフが国家資格取得者
- 直近1年職場定着率100%
HOPE神田
- 発達障害がある人の通所が85%
- オフィスワークに適応するための訓練プログラム
- 多種多様な事務・軽作業を経験できる
発達障害のある人におすすめの就労移行支援事業所の選び方
発達障害がある人が就労移行支援事業所を選ぶ際には、以下のような観点から事業所を比較してみるのがおすすめです。
- 発達障害のある人への支援実績がどのくらいあるか?
- 通所している人で、発達障害のある人の割合はどのくらいか?
- 発達障害のある人向けのカリキュラムはあるか?
デイゴー就労支援ナビでは、お住まいの地域や最寄り駅から通いやすい就労移行支援事業所を探し、対象となる障害や活動内容などを比較検討できますので、ぜひご活用ください。
就労移行支援事業所に関するよくある質問
発達障害のある大学生も就労移行支援事業所を利用できる?
大学在学中であっても、以下の条件を満たす場合は就労移行支援事業所を利用することができます。
- 大学や地域における就労支援機関等による就職支援の実施が見込めない場合、又は困難である場合
- 大学卒業年度であって、卒業に必要な単位取得が見込まれており、就労移行支援の利用に支障がない者
- 本人が就労移行支援の利用を希望し、就労移行支援の利用により効果的かつ確実に就職につなげることが可能であると市町村が判断した場合
発達障害のグレーゾーンは就労移行支援事業所を利用できる?
発達障害の特性がみられるものの発達障害の診断を受けていない、いわゆるグレーゾーンの場合は、障害福祉サービス受給者証を発行できれば就労移行支援事業所を利用できます。
ただし、障害福祉サービス受給者証を発行するためには、医師の意見書等が必要のため、まずはお住いの市区町村の障害福祉課に相談してみましょう。
障害者手帳なしでも就労移行支援事業所を利用できる?
就労移行支援事業所を利用する際は、主治医の意見書や自立支援医療受給者証等があれば、障害者手帳を持っていなくてもサービス利用の申請をすることができます。
就労移行支援事業所は利用料がかかる?
就労移行支援事業所の利用者が負担する料金は、1日あたりおよそ500円〜1,400円です。ただし、所得に応じてひと月当たりの負担上限金額が決まっているため、自己負担額なしで就労移行支援事業所を利用する人も多いです。
厚生労働省によると、障害福祉サービスを利用している人(98.5万人)のうち、約92.7%が無料で利用していることが分かっています。
就労移行支援事業所には何年通えるの?
就労移行支援事業所のサービスを利用できる期間は、原則として最大2年(24ヶ月)までとなっています。
就労移行支援と就労継続支援の違いは?
就労移行支援事業所と就労継続支援A型・B型事業所の大きな違いは、利用期間と一般企業等への就職率です。
発達障害のある人で一般企業等へ就職する人の割合は、就労移行支援が『51.4%』、就労継続支援A型が『4.2%』、就労継続支援B型が『3.2%』と、違いは大きいです。※
また、就労移行支援事業所は利用期間が原則2年間となっていますが、就労移行支援事業所は利用期間に制限がありません。
就労移行支援と就労継続支援の違いについては、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
※参考:厚生労働省 「就労移行支援に係る報酬・基準について」、東京都福祉局「令和4年度就労移行等実態調査」より
最後に
ここまで、発達障害のある人が利用できる就労移行支援事業所の一覧や、発達障害のある人におすすめな就労移行支援事業所の選び方をご紹介してきましたが、いかがでしたか。
就労移行支援事業所にはカリキュラムから対象となる障害の種類まで、様々な違いがあります。ぜひご自身にあった事業所を選ぶためにも、いくつかの就労移行支援事業所へ見学・体験に行ってみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。