障害や病気があり働くことが難しい方や、休職している方の中には、「就労移行支援に通いながらバイトをすることはできるの?」や「就労移行支援事業所を利用中にバイトをしているのがバレてしまったらどうなるの?」といった疑問を持っている人もいるかもしれません。
この記事では、就労移行支援事業所に通いながら働くことができる人の条件や、就労移行支援を利用中のバイトが事業所側にばれてしまったらどうなるかなどについて紹介していきます。
就労移行支援事業所に通いながらバイトはできないの?
「就労移行支援事業所に通いながらバイトしたい」と思っている人は多いと思います。特に、金銭的な不安がある人にとっては切実な問題です。
しかし、就労移行支援事業所を利用中にバイトすることは原則として認められていません。
厚生労働省が定める就労移行支援事業所の対象者は、「単独で就労することが困難で就労の支援が必要な人」で、バイトをすることができる人は利用対象者ではないと解釈できるからです。
ただし、「アルバイトをしないと生活が本当に苦しい人」など、自治体が認めた場合は就労移行支援事業所に通いながら短時間のアルバイト等が可能なこともあります。
原則としては認められていませんが、自治体によって対応が異なりますので、お住まいの自治体に相談してみてください。
生活・体力面でも就労移行支援とバイトの併用はおすすめできない
制度的な面だけではなく、生活的な面からも、就労移行支援事業所とバイトの併用はおすすめできないことが多いです。
就労移行支援事業所では、一般企業への就職を目指した訓練を提供しています。今まで学んだことがないことを学び、さまざまなことを体験することで良い刺激を受けるでしょう。これは成長に必要なことではありますが、「思った以上に疲れる」と感じる人は少なくありません。
多くの就労移行支援事業所の終了時間は16:00前後のところが多く、一般企業に勤めるよりも帰宅時間が早い傾向にあります。しかし、それでも「帰宅後は疲れが出てついつい一眠りしてしまう」というのはよく聞きます。そのような状況で無理してバイトを入れてしまっては、体調を崩すきっかけになりかねません。
また、バイトをしたいからといって就労移行支援事業所の通所日数を減らすのは本末転倒です。
少しでも早く一般就労につなげたいならば、体調や生活リズムを安定させ、休まず就労移行支援事業所に通所することが重要です。
このように生活面から考えても、就労移行支援事業所に通う間はバイトしないで通所に集中するほうが理想的だと言えます。
就労移行支援事業所の利用者は単発のバイトもできない?
単発のバイトも就労には変わりありません。よって、「単独で就労することが困難」な人を対象にしている就労移行支援事業所の対象者とは認められない可能性があります。
最終的に可否を判断するのは、お住まいの市区町村です。バイトを考えているのであれば、必ず市区町村と就労移行支援事業所に確認しましょう。
就労移行支援事業所に通いながら働くことができる人の条件就労移行支援事業所に通いながら働くことが認められている条件は、3つあります。
【就労移行支援事業所に通いながら働くことができる人の条件】
- 就労移行支援事業所を利用して一般企業に雇用され、その企業で勤務時間を延長していく場合
- 休職中の人が復職をする場合
- 就労移行支援事業所を利用して10時間未満の仕事に就き、勤務時間の延長または新たな職種へステップアップをしていきたい場合
先述したように、「アルバイトをしながら就労移行支援に通って企業への就職を目指す」場合は原則働くことができませんが、勤務時間を延長する場合の体力作りや復職を目的とする場合は就労移行支援を利用することができます。
ここからは、それぞれの条件について詳しくご紹介していきます。
①就労移行支援を利用して一般企業に就職し、勤務時間を延長していく場合
週に10時間以上20時間未満の短時間勤務で一般企業に採用され、勤務時間を20時間以上に延ばすために継続して支援が必要だと認められた場合、勤務と就労移行支援事業所の併用が認められます。
ただし、就労移行支援事業所が作成した就労時間延長のための計画書があり、それを企業と市区町村が認めた場合に限ります。
ポイント:フルタイム以外で就職が決まっている人が対象
②休職中の人が復職をする場合
休職から復職する際に、就労移行支援事業所の利用が認められる可能性があります。
ただし、在籍している企業・主治医・市区町村が、就労移行支援事業所の利用によって本人が円滑に職場復帰できると判断した場合に限ります。
ポイント:企業に雇用されており休職中の人が対象
③10時間未満の仕事に就いて勤務時間の延長または新たな職種への就職を希望する場合
週に10時間未満の短時間勤務で一般就労した後も、就労移行支援事業所で引き続き訓練を受けながら働くことによって、勤務時間の延長や新たな職種へステップアップできる可能性があると認められる場合は、就労移行支援事業所の利用が認められます。
他のサービスや支援機関ではなく、就労移行支援事業所を利用することが適切であると市区町村が認めた場合に限ります。
ポイント:勤務時間を増やすための体力作りをする人、新たな職種へステップアップする人が対象
就労移行支援事業所を利用中のバイトがバレたらどうなるの?
就労移行支援事業所を利用中にバイトをしていることが判明した場合は、急に退所を勧告されることは少ないかもしれませんが、退所の方向で事業所との話し合いが持たれる可能性は十分にあります。
また、就労移行支援事業所がバイトの存在を知ってしまった以上、市区町村に報告しないわけにはいきません。市区町村に報告し、その判断次第で退所となる可能性もあるでしょう。
就労移行支援事業所の利用中に生活費に困ったら?
現実的には、収入がない状態で就労移行支援事業所に通い続けるのが難しい人もいると思います。
生活費に困った場合は、なるべく早い段階で就労移行支援事業所の支援員か市区町村に相談することが大切です。利用可能な支援制度についてアドバイスを受けられる可能性があります。以下に支援制度の一例を挙げます。
自治体の交通費助成
就労移行支援事業所に通うための交通費は実費ですが、一部の自治体では交通費の助成制度があります。
失業保険
会社に勤めていたけれど何かしらの理由で退職した場合は、条件を満たせば失業保険の受給ができます。
傷病手当金
健康保険の被保険者が病気や障害のために仕事の継続ができなくなった場合は、傷病手当金の受給対象者になる可能性があります。
障害年金
障害があって就労が著しく制限される状態だと認められると、障害年金が受給できる場合があります。
生活保護
収入も資産もなく、生活に困窮する場合は、生活保護を受けられる可能性があります。
工賃が支払われる就労移行支援事業所もある
就労移行支援事業所に通所しても、基本的に給料は発生しません。しかし、一部の事業所では訓練中に行う作業に対して工賃が支払われることがあります。工賃はわずかな金額であることが多いですが、それでも生活費の助けになるかもしれません。
具体的な事業所は別の記事で紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
最後に
ここまで、就労移行支援事業所に通いながら働くことができる人の条件や、就労移行支援を利用中のバイトが事業所側にばれてしまったらどうなるかなどについて紹介してきましたが、いかがでしたか。
就労移行支援事業所は一般企業等への就職に向けた準備や訓練をする場所で、利用期間も2年間と限られています。ご自身にあった企業へ就職をするためにも、生活費等の支援制度を活用しながら就職活動への準備を進めていくことが大切です。
最後までお読みいただきありがとうございました。