障害があるために長い間働いていない方や休職している方などで、「就労移行支援事業所ってなんだろう?」や「障害者が就労移行支援事業所に通うメリットとデメリットは何?」などの疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
そのような皆さんに向けて、この記事では、就労移行支援事業所での活動内容・カリキュラムや、就労移行支援事業所に通うメリット・デメリットなどについてご紹介していきます。
就労移行支援事業所とは?
就労移行支援事業所とは、「一般企業で働く」ことを希望する障害のある人が、訓練や実習等を通して、適性に合った職場への就労や定着を目指すサービスです。
利用期間は原則24ヶ月(2年)以内で、所得によって利用料が発生する場合もあります。
障害者総合支援法に基づいて就労移行支援事業所は設けられており、就労に必要な知識やスキル向上のためのトレーニングを行い、個々の適性に合った職場を開拓し、就職後も職場での定着のために必要な相談などのサポートを行うことが目的とされています。
就労移行支援事業所はどんな人が使えるの?対象者は?
就労移行支援事業所は、以下の4つの条件を満たしている人が対象者とされています。
- 一般就労を希望している
- 障害・難病がある
- 65歳未満である
- 適性に合った職場への就労等が見込まれる
就労移行支援事業所の利用料金はいくら?
就労移行支援事業所の利用者が負担する料金は、サービス全体にかかった費用のうち1割で、1日あたりおよそ500円〜1,400円です。
ただし、以下のように所得に応じてひと月当たりの負担上限金額が決まっているため、自己負担額なしで就労移行支援事業所を利用する人も多いです。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯※1 | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満※2) | 9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
※1:3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入がおおむね300万円以下の世帯が対象。
※2:収入がおおむね670万円以下の世帯が対象。
※3:入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「一般2」に該当。
就労移行支援の利用料金については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
就労移行支援事業所の利用期間は決まっているの?
就労移行支援事業所のサービスを利用できる期間は、原則として最大2年(24ヶ月)までとなっています。
就労移行支援はそれぞれの適性にあった職場に就職するまでの中間ステップと位置付けられているため、利用期間に期限が設けられています。
就労移行支援事業所の活動内容・カリキュラムは?
「就労移行支援では具体的に何をするの?」と疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。就労移行支援事業所では、個別支援計画をもとに、個々の体調や適性に合わせながら、一般企業に就職するまでに大きく分けて3つのステップを踏んでいくことになります。
ここからはそれぞれの段階における活動内容を具体的にご紹介していきます。
通所前期(基礎訓練期)
まずは、就職についての希望や現在の症状などについてスタッフと面談を行い、個別の支援計画を立てます。
その上で、継続的に就労移行支援事業所に通えるように生活リズムを整えることや、自身の障害に関する理解や適性を把握することなど、企業で働くための基礎的な訓練を行っていくことになります。
- 定期的な運動
- 栄養バランスの見直し
- 生活習慣の記録(睡眠リズム、日中の活動時間)
- スタッフとの面談
- 就労移行支援事業所への安定した通所
- メンタルケア
- 認知行動療法
- 社会認知トレーニング
通所中期(実践的訓練期)
基礎体力の向上や自身の適性や課題の把握が進んできたら、ビジネスマナーの習得や職場実習などの企業で働くための実践的な訓練を行います。
また、通所するだけでなく、自宅からオンラインで支援を受けることができる事業所もあります。
こうした活動は、事業所によって様々な違いがあるため、通い始める前に活動内容をよく比較検討することでミスマッチを防ぐことができます。
- 挨拶や服装などビジネスマナーの習得
- グループワーク・ディスカッション
- SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)
- Word/Excel/PowerPointの操作
- 文書作成
- 電話応対
- プログラミング
通所後期(就職準備期)
一般企業などへの就職に向けて、自身の希望や特性にあった職場を見つけるために、事業所のスタッフによるサポートを受けながら求職活動を行います。
また、企業に就職してから半年間は、スタッフとの定期的な面談を通して働く上での不安や悩みを相談することができます。
- 企業見学
- 企業実習
- 企業研究
- 就職活動の計画作成
- 履歴書など応募書類の添削
- 面接の練習
- 就職活動
就労移行支援の事業所数と利用者数の推移
就労移行支援事業所の事業所数の推移を見てみると、過去8年間はおおむね横ばいとなっており、2022年の事業所数は3,393事業所です。
一方、就労移行支援事業所の利用者数の推移を見てみると、過去8年間で増加傾向となっており、就労移行支援サービスは広がりを見せていることが分かります。
就労移行支援事業所に通うメリット
ここからは、就労移行支援事業所に通うメリットを5つご紹介していきます。
- 生活リズムが整う
- 企業に就職するためのスキルが身につく
- 働くための自己理解が進む
- 就職活動のサポートを受けられる
- 就職後も相談などのサポートを受けられる
①生活リズムが整う
就労移行支援事業所に通所することで、朝起きて日中に活動をし、適切な時間に寝るという生活リズムが徐々に整っていきます。
はじめは毎日通うことに難しさを覚える方も多いかもしれませんが、週に2回、3回と目標を上げて事業所に慣れていくことで、徐々に通所できる日が増えていくでしょう。
また、事業所に通所することで、多くの人と接することになります。そのため、自分のペースだけではなく、事業所のルールや周りの人に合わせることで、社会性も培われていきます。
②企業に就職するためのスキルが身につく
就労移行支援事業所では、挨拶や服装などのビジネスマナー、事務処理作業、Word・Excel・PowerPointといったパソコン操作など、企業に就職するための基礎的なスキルを身に付けることができます。
それだけでなく、プログラミングやデザイン、動画編集などの専門的なスキルを習得することができる事業所もあります。
③働くための自己理解が進む
就労移行支援事業所では、スタッフとの定期的な面談や訓練を通して、自身の強みや特性の把握を行っていきます。
自己理解と自己管理が進むことで、就職活動の際にも企業の採用担当者に、自身の障害の特性やどのような配慮が必要なのかなどを言語化できるようになるでしょう。
④就職活動のサポートを受けられる
企業で働くためのスキルを身に付けるだけでなく、履歴書や職務経歴書といった提出書類の作成や面接の練習など、就労移行支援事業所のスタッフによる就職活動のサポートを受けることができます。
また、事業所によっては個々の適性に合った企業における職場実習を行っている場所もあります。
⑤就職後も相談などのサポートを受けられる
一般企業に就職した後に、「この仕事を続けていけるのだろうか?」や「職場の雰囲気に慣れるのが難しい」など、悩みを抱える瞬間があるかもしれません。
就労移行支援事業所では就職後6ヶ月間は定着支援を行うため、なじみの関係にあるスタッフに相談などのサポートをしてもらうことができます。
就労移行支援事業所に通うデメリット
このようにメリットも多くある一方で、就労移行支援事業所に通うデメリットと考えられる点もありますので、ご紹介していきます。
- 給料・工賃が発生しない
- 事業所のカリキュラムや雰囲気にマッチしない可能性も
①給料・工賃が発生しない
就労移行支援事業所は自身にマッチした一般企業へ就職するための準備をするための施設です。そのため、一部の事業所を除き、ほとんどの事業所では給料・工賃が支給されません。
就労移行支援事業所に通っている間は収入がない状態が続くため、失業保険や傷病手当などを利用するか、場合によっては貯金を取り崩していくことになります。
②事業所のカリキュラムや雰囲気にマッチしない可能性も
就労移行支援事業所は、基礎的なビジネスマナーを学ぶ事業所からプログラミングなどITに特化している事業所まで、それぞれの事業所に特色があります。また、就職者数や就職後の定着率にも違いがでてきます。
いざ入所してみたら「事業所のカリキュラムや雰囲気が思っていたものと違っていた!」となってしまう可能性もあります。
「どんなスキルを身に付けたいか?」や「どんなキャリアを築いていきたいか?」など、ご自身の希望によって選ぶべき事業所が変わってくるため、いくつかの就労移行支援事業所を比較検討した上で通所する事業所を選ぶのがおすすめです。
就労移行支援に関するよくある質問
最後に
ここまで、「就労移行支援事業所はどんなことをする場所なのか」や「通うことで得られるメリットやデメリット」についてご紹介してきました。
就労移行支援事業所は、自身の適性に合った一般企業へ就職するための訓練やサポートを受けられる場所です。納得のいく就職を実現するためにも、まずはご自身が通ってみたいと思う就労移行支援事業所を探してみるのはいかがでしょうか。
デイゴー就労支援ナビでは、お近くの就労移行支援事業所の特徴や空き状況などの比較検討を行うことができますので、ぜひご活用ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。