仕事が長く続かない・長い間仕事をしていない50代の人の中には、「50代の人も就労移行支援を利用すれば就職できるの?」という疑問を持っている人もいるかもしれません。
この記事では、50代で就労移行支援を利用できる人の条件や、実際に50代で就労移行支援を利用して就職した人の事例もご紹介していきます。
就労移行支援事業所は50代の人も利用できる
就労移行支援事業所は、障害者総合支援法における障害福祉サービスの1つです。障害や病気のある人が、一定期間、就労に必要な知識や能力の向上のために訓練を受けることができるほか、就職活動のサポートをしてもらうことができます。就労移行支援事業所は、50代の人でも以下の利用条件を満たしていれば利用することができます。
- 一般企業等で働くことを希望している
- 障害・難病がある※1
- 65歳未満である※2
- 適性に合った職場への就労等が見込まれる
※1
障害者手帳がない場合でも、主治医の意見書や指示書があれば利用することができます。
※2
65歳以上の人でも、65歳に達する前の5年間に障害福祉サービスの支給決定を受けており、65歳になる前日までに就労移行支援の支給決定を受けていた場合は、就労移行支援を引き続き利用することができます。
50代の人が就労移行支援事業所を利用するメリット
50代の人が就労移行支援事業所を利用するメリットはたくさんありますが、代表的なものは以下のとおりです。
- 一定期間の通所により基礎体力が向上する
- 模擬就労プログラム等を通して就労ブランクの不安を解消できる
- 障害について専門性の高い支援員からアドバイスを受けることができる
- 障害への自己理解が高まり、困りごとへの対処法を身に付けることができる
- 同じ目標に向かう仲間ができ、充足感が増す
- スタッフのサポートを受けながら就職活動をすることができる
このように、心身の状態を維持向上させるだけでなく、ご自身の障害に応じた働き方についてアドバイスを受けたり、企業とのマッチングを手助けしてくれたりといったメリットがあります。また、就労移行支援事業所には、就労ブランクがある利用者が多く通っているため、就職を目指す仲間と切磋琢磨できる環境でもあります。
50歳以上で就労移行支援事業所を利用している人はどのくらい?
下記のグラフは、2012年12月から2022年12月までの就労移行支援事業所利用者数を2年ごとに表したものです。若干の減少が見られる年もありますが、ここ数年は右肩上がりに利用者数が増えています。それに伴い、18歳以上30歳未満の若い年代の利用が増えていると同時に、50歳以上の利用も増加傾向にあり、2022年には約4,000人の50歳以上の方が就労移行支援を利用しています。
50代で就労移行支援事業所を利用したら就職できるの?
就労移行支援事業所から一般企業へ就職した人の割合は、2022年時点で57.2%となっており、約1.8人に1人が一般企業等への就職を果たしていることが分かります。
また、厚生労働省の「障害種別、年齢別のハローワークにおける雇用状況について」によると、障害があり50歳以上で就職した人の割合は、2016年時点で全体の26.3%を占めています。このように、50代でも就労移行支援事業所を利用し就職をしている実績があります。
50代で就労移行支援事業所を利用して就職できなかったら?
原則として、就労移行支援事業所の利用は、24か月と定めがあります。では、もしも利用期間内に就職ができなかった場合はどうしたらよいでしょうか。代表的な選択肢をご紹介します。
別の就労系障害福祉サービスを利用
- 就労継続支援A型・・・雇用契約に基づく就労の機会を提供するサービスです一般就労に必要な知識、能力が高まった場合は、一般就労への移行に向けて支援を実施します。
- 就労継続支援B型・・・雇用契約は結ばず、就労や生産活動の機会を提供するサービスです。一般就労に必要な知識、能力が高まった場合は、一般就労等への移行に向けて支援を実施します
障害者就業・生活支援センターを利用
利用者の身近な地域において就業面と生活面の一体的な相談・支援を行います。例えば、職業準備の訓練や職場実習のあっせん、利用者の障害特性、能力に合った就職先の選定や就職活動の支援などです。
地域障害者職業センターを利用
ハローワーク等の地域の就労支援機関との密接な連携のもと、障害者に対する専門的な支援を行う施設として、全国47都道府県に設置された機関です。利用者一人ひとりのニーズに応じて、職業準備の訓練などを行います。また、事業主に対しても雇用管理に関する専門的な助言や支援を実施します。
50代で就労移行支援を利用して就職した人の体験談・事例
就労移行支援事業所を利用して就職をした50代の皆さんの体験談をご紹介します。就労移行支援事業所の利用を迷っている方は、是非参考にしてみてくださいね。
50代男性(精神障害)
就労移行支援事業所に通う前は、何に対してもやる気が出ない、疲れやすい、不安感が取れない、行動することが億劫という、様々な症状に悩まされていました。そんな状態のため、ほとんど部屋に閉じこもっていました。このままうつ病が治らずに社会復帰できないのではないか?そうしたらどうやって生活して行こうか?と、悩みの悪循環に陥ってしまったのでした。
就労移行支援事業所に通い始め、悩みの悪循環が無くなりました。毎日通所して色々なプログラムをこなすうちに、自分にも何か出来ることがあるのではと考え、将来に希望を持ち始めたためです。また、通所することで、普段から身だしなみを気にかけるようになり、体力回復のために『歩く』ことも始めました。速度はゆっくりではありますが毎朝2.5㎞くらい歩いています。
その結果、気持ちが前向きになって趣味を持てるようになりました。プライベートの時間に絵を描くことを始めたのです。通所がきっかけでいろんな人と話すようになり、脳が刺激を受けたようです。最後に、もう絶対に前の生活には戻りたくないと強く思うようになりました。
50代女性(精神障害)
以前は就労継続支援B型に6年間通っていました。体調面、メンタル面が落ち着いてきて就職を考え始めた時に、支援員の方から就労移行支援事業所を紹介していただきました。3日間の体験利用の中で、自分が学習したいパソコンスキルや資格取得のプログラムの動画などを見て、ここで学習したいと思い、通い始めました。
私は50代なので、本当に就職できるだろうか?と不安もありましたが、就労移行支援事業所の支援員の方が笑顔で「大丈夫ですよ」と励ましてくださり、その言葉をモチベーションに毎日通うことができました。また、ついつい頑張りすぎてしまう私に「休むことも大切です」と優しい言葉をかけてくださったことや日々の出来事を相談していくうちに、より厚い信頼関係を築くことができました。就労移行支援事業所を利用したことで、これまで気付けなかった自分の得意、苦手を知ることにもつながりました。
たくさんの就労移行支援がありますが、自分に合ったところに出会えたこと、様々な場面で支えてくださった支援員の皆様にお礼と感謝を伝えたいです。 本当にありがとうございました。 これからは無理なく、長くお仕事を続けていきます。
50代男性(精神障害)
前職に勤めていたときに色々考えて会社に居座り続けるのはしんどいと感じ、退職しました。その後、就職活動をどう進めていいかわからずにいると、前職の上司に就労移行支援事業所を教えていただきました。通院先のワーカーに相談し、ある事業所を実際に見学。ここだったら信用できるなと感じました。通院先のワーカーさんからの紹介もありますが、一番の理由は、就職実績がある事業所であること、設備や人の印象が良かったことです。
通所し始めてから生活のリズムが整ってきました。また、履歴書の書き方をはじめ就職活動の細かい動き方がわかりませんでしたが、一から教えていただきとても助かりました。自身のこだわりによって空回りしていたとき、支援員の方から適切な声掛けをしていただき、冷静に就職活動を進めていくことが出来ました。
就職した当初は先々のことを意識し過ぎて、しんどい時期がありましたが、自分が理想とするところに到達するには今どうすればいいかを冷静に考えることが出来ました。 これまで高い目標設定でしんどい思いをしてきたので、じっくり時間をかけて徐々にステップアップしていければと今は考えることができています。
50代の人がご自身にあった就労移行支援を選ぶために
就労移行支援事業所は、24か月の利用期限があります。ご自身に合った事業所を利用することで、限りある時間を有意義に過ごし、より良い就労につながると言えます。
ここからは、50代の人がご自身に合った就労移行支援事業所を選ぶためのポイントをご紹介していきます。
自身の課題整理
まず、就労に向けて自身の課題は何か、どういった訓練をしたいかを考え、整理します。例えば、働く体力がないため運動プログラムを取り入れている事業所が良い、PCスキルが不足しているのでExcelやWordの勉強ができる事業所が良い、などです。自分ひとりで考えることが難しいようであれば、通院先の医師やワーカー等へ相談をしても良いでしょう。
情報収集
ご自身の課題が整理できたら、事業所のHPや比較検討サイトを活用し、以下の情報を収集することをお勧めします。
- プログラム内容
- 就労実績(年齢・障害種別・就労先など)
- どのような支援員が在籍しているか
- 利用者の障害種別割合
- その他アピールポイント(その事業所の特色)
見学・体験利用
通ってみたい事業所が見つかったら、見学・体験利用の申し込みを行いましょう。実際に事業所へ出向くことで雰囲気を知ることができ、より自分に合っているかどうかを判断しやすくなるでしょう。
数ある就労移行支援事業所の中から、自身に合った事業所を見つけることは容易ではありません。就労移行支援事業所の検索サイト『デイゴー就労支援ナビ』では、お住まいの地域や駅から就労移行支援事業所を探し、就職実績、職員の専門性、プログラム内容などを比較することができますので、ぜひご活用ください。
就労移行支援事業所に関するよくある質問
就労移行支援と就労継続支援の違いは?
就労移行支援事業所と就労継続支援A型・B型事業所の大きな違いは、利用期間と一般企業等への就職率です。
一般企業等へ就職する人の割合は、就労移行支援が『57.2%』と高く、反対に就労継続支援A型は『26.2%』、就労継続支援B型は『10.7%』と低くなっています。
また、就労移行支援事業所は利用期間が原則2年間となっていますが、就労継続支援事業所は利用期間に制限がありません。
就労移行支援と就労継続支援の違いについては、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
就労移行支援事業所は障害者手帳がなくても使える?
就労移行支援事業所を利用する際は、主治医の意見書や自立支援医療受給者証等があれば、障害者手帳を持っていなくてもサービス利用の申請をすることができます。
就労移行支援事業所は65歳以上も利用できるの?
就労移行支援事業所の利用に年齢制限はあり、65歳以上の人は原則利用することはできません。ただし、以下の条件のいずれも満たしている場合は、65歳以上でも就労移行支援を利用することができます。
- 65歳に達する前5年間に障害福祉サービスの支給決定を受けていた人
- 65歳に達する前日までに就労移行支援の支給決定を受けていた人
就労移行支援事業所に通いながらバイトはできるの?
就労移行支援事業所を利用中にバイトすることは原則として認められていません。ただし、「アルバイトをしないと生活が本当に苦しい人」など、自治体が認めた場合は就労移行支援事業所に通いながら短時間のアルバイト等が可能なこともあります。
原則としては認められていませんが、自治体によって対応が異なりますので、お住まいの自治体に相談してみてください。
最後に
就労移行支援事業所を利用し就労に結び付いた50代の方は、ご自身に合った事業所と巡り合い、訓練を積み重ねてきたという共通点があります。比較検討サイトを活用することで、数多の情報を一括で見ることができ、より自身に合った就労移行支援事業所を利用することにつながります。
就労移行支援事業所の検索サイト『デイゴー就労支援ナビ』では、お住まいの地域や駅から就労移行支援事業所を探し、就職実績、職員の専門性、プログラム内容などを比較することができますので、ぜひご活用ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。