引きこもり状態の人が就労移行支援を利用して就職した事例|支援内容や手続きの流れも解説

家に引きこもり状態にある人や長い間働いていない人の中には、「引きこもり状態の人は就労移行支援を利用したら就職できるの?」や「就労移行支援を使うメリットはあるの?」といった疑問を持っている人もいるかもしれません。

この記事では、引きこもり状態の人が就労移行支援を利用して就職した事例や、就労移行支援を利用するメリット、受けられる支援内容について、元就労移行支援事業所のスタッフである筆者がご紹介していきます。

この記事の監修者

メンタルエイド代表。サービス管理責任者、社会福祉士、精神保健福祉士、ジョブコーチ、心理カウンセラー、幼稚園教諭。就労移行・就労定着支援サービスを行う事業所に12年従事。120名の障がい者就労の実績があり、面談は1,000人以上。多くの面談実績からオリジナルの上村式認知整理面談技法を発案。

目次

引きこもり状態の人が就労移行支援を利用するメリット

就労移行支援とは、病気や障害などがあって就労が困難な人に対して、働くための準備や就職活動を支援するサービスです。

家から出ることが怖くて引きこもり状態にある人が、1人で就職活動をするのはとても大変なことです。そのような人こそ、就労移行支援を利用するメリットがあります。

ここからは、引きこもり状態の人が就労移行支援を利用するメリットをご紹介していきます。

メリット① 生活リズムが安定する

家での生活が長くなると、生活リズムが乱れがちです。昼夜逆転になることも珍しくありません。

就労移行支援に通うことで、朝起きて身だしなみを整え、決まったところに行くという習慣が身につきます。

これは仕事をする上では必要不可欠なスキルの1つです。

メリット② 人に慣れることができる

就労移行支援は、就労に向けての様々な訓練プログラムを提供しています。プログラムの中には集団で受けるもの、複数人と話をしながら進めていくものがあります。

就労移行支援に通うことで人と関わる機会ができますので、自然と人に慣れるケースが多いです。

多くの就労移行支援では個別プログラムも用意しています。集団が苦手な人に対しては少しずつ慣れるようにサポートしますので、焦らなくても大丈夫です。

メリット③ 仕事や社会生活で必要なスキルを身につけられる

就労移行支援は就労に向けた訓練プログラムが充実しています。

プログラム内容は、パソコンやデザインのスキルといった、仕事に直結するスキルだけではありません。

ビジネスマナーやコミュニケーションなど、社会生活で必要なスキルを基礎から学べるプログラムがある就労移行支援もたくさんあります。

家族以外の人と話をしてなくてコミュニケーションに不安がある人でも、安心して受講できるでしょう。

引きこもり状態の人への就労移行支援の支援内容・プログラム

引きこもり状態の人が就労移行支援を利用した場合の支援内容について説明していきます。

生活リズムの安定

まずは生活リズムの安定を目標にして、決まった曜日・時間に通うことに慣れていきます。

週に1〜2日から利用できる就労移行支援も多いので、自分が無理しすぎず通えるペースから始めて、徐々に通所日数を増やしていきましょう。

多様なプログラムを受ける

就労移行支援事業所では多様なプログラムが用意されているので、通所に慣れないうちは、負担が少ない個別プログラムから受けることも可能です。

通所に慣れたら、複数人で会話するプログラムや、集団でのプログラムも受けられるようにスタッフがサポートします。

自己理解を深め、自分にあった仕事を探していく

プログラムを受け続けることで、仕事の向き不向きが理解できるようになっていくでしょう。

自分に合った仕事内容や職場環境を明確にしていき、それに合った職場を探していきます。

就職活動

求人検索、応募書類作成、企業見学、面接といった流れで就職活動を進めていきます。

就職活動が初めてという人も多いので、スタッフが個別でサポートすることが多いです。

わからないことや不安なことはスタッフに相談しながら、それぞれのペースで就職活動を進めていきます。

就職・定着支援

就職後も支援が継続します。少なくとも6ヶ月間は継続してサポートが受けられますので、就職後に困ったことがあれば、個別面談や電話相談を受けながらスタッフと一緒に問題解決していきましょう。

引きこもり状態の人の就労移行支援の就職・利用事例

ここからは、引きこもり状態の人が就労移行支援を利用して就職した事例や、就労移行支援の利用事例をご紹介します。ここでは千葉県の事例を挙げていますが、デイゴー就労支援ナビではお住まいの都道府県や駅から、就労移行支援事業所を探すことができます。

20代男性の就職事例

就労移行支援に通う前は何に対してもやる気がなく、食事や風呂はもちろん、寝ることすらも億劫で生活リズムが崩れていました。

趣味をする気力もなく、目的もなくずっとYouTubeで動画を見て過ごしているような状態です。

就労移行支援に通い始めて週に1回スポーツプログラムを受けることで、少しずつ体力がついてそれが自信につながっていきました。

そこから生活リズムが安定して朝から行動できるようになり、趣味が再開できました。自己分析のプログラムを受講することで調子を崩すことが減り、就職につながりました。これからも成長していきたいです。

30代男性の利用事例

就労移行に通う前は家から出ることがほとんどなく、家族以外の人と話す機会もなかったため、メンタルの浮き沈みが大きく社会復帰ができるかどうか不安でした。

通所を始めた頃は、体力がなくて毎日通うことが困難でしたが、段階的に日数を増やしていき、しっかりと毎日通所できるようになりました。

またイベントなどに積極的に参加して、人とコミュニケーションを取る機会も増えました。これから就職活動を進めていく予定です。

引きこもり状態の人が就労移行支援を利用するまでの流れ

ここからは、引きこもり状態の人が就労移行支援を利用するまでの流れを説明していきます。

ステップ①就労移行支援を探す

就労移行支援は全国に多数あります。インターネットなどでお近くの就労移行支援を調べてみてください。

事業所によって、通所している利用者や提供しているプログラム、支援制度などが異なります。

いくつかの事業所を比較してみると、自分に合いそうな就労移行支援が見つかりやすくなります。

ステップ②就労移行支援を見学・体験する

気になる就労移行支援が見つかったら、見学に行くことをおすすめします。

多くの就労移行支援は随時見学を受け入れています。快く見学を受け入れてくれる事業所がほとんどなので、一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。

事業所に電話することに抵抗があれば、メールやLINEで見学の相談ができるところもありますので、活用してみてください。

見学は、家族や支援者と一緒に行くことも可能です。

また、見学で事業所の雰囲気を見て「通ってみたい」と思ったら、体験利用をしてみましょう。

半日だけの体験利用も可能なことが多いので、スタッフと話し合って無理のない範囲で調整してみてください。

※ご家族だけでの相談も受け入れている事業所も多いです。また、いきなり事業所に足を運ぶのではなく、見学や体験の前にまずは在宅でZOOMなどを利用して何度か面談やヒアリングを行っている事業所もあります。

ステップ③障害者手帳や主治医の意見書等を取得する

体験利用をして通いたい就労移行が決まったら、就労移行支援に通うための手続きをします。

後述しますが、就労移行支援に通うためには障害福祉サービスの受給者証(以下、受給者証)が必要です。

受給者証の申請時には、障害者手帳または主治医の診断書・意見書のいずれかの提出が求められます。

障害者手帳をお持ちでない方は、この時点で主治医に診断書または意見書を取得しておくといいでしょう。

診断書または意見書を依頼する際は、まずは本人から主治医に「就労移行支援に通いたい」と相談してみてください。

相談して話し合った上、主治医が医学的知見から就労移行支援事業所に通うことが適切だと判断したら、その旨を診断書か意見書に記載してもらいましょう。

ステップ④受給者証を発行する

就労移行支援事業所に通所するためには受給者証が必要で、発行窓口はお住まいの市区町村です。

障害者手帳または診断書・意見書を持って市区町村の障害福祉課に行き、申請します。

その他、印鑑やマイナンバーの持参が必要なところもあります。必要なものは市区町村によって違いますので、事前に確認すると確実です。

ステップ⑤就労移行支援の利用開始

受給者証を申請してから発行までに、概ね1ヶ月程度かかることが多いです。市区町村の状況によってはそれ以上になることもあります。

受給者証を取得したら、就労移行支援と契約を結び、正式な利用開始となります。

まずは就労移行支援事業所へ相談からでも

受給者証がなくても、就労移行支援の見学は可能です。就労移行支援のスタッフは受給者証について詳しい人が多いので、わからなければ遠慮なく聞いてみてください。申請のサポートをしてくれる場合もあります。

受給者証の申請に必要な障害者手帳や、主治医の診断書・意見書についても、できる範囲でアドバイスやサポートをしてくれることがあります。

不安なことがあればまずは就労移行に相談してみてはいかがでしょうか。

もしあなたが就労移行支援の対象にならない場合だったとしても、他の適切な支援機関につないでくれるでしょう。

就労移行支援を探す際は、デイゴー就労支援ナビでお住まいの駅から近い事業所を探すことができますので、お役立てください。

就労移行支援に関するよくある質問

就労移行支援の利用対象者はどんな人?

就労移行支援の利用対象者は、一般就労等を希望し、訓練を受けることで就労が見込まれる65歳未満の障害のある人です。

障害者手帳は必ずしも必要ではなく、精神疾患などにより就労が困難で、医師が就労移行の利用が適切だと判断した場合は対象になることがあります。

就労移行支援の利用にはいくらかかる?

前年度の収入によって就労移行支援の自己負担額が変わります。収入がなかった人は利用料金がかからないケースがほとんどです。

就労移行支援は公的な福祉サービスなので利用料の1割が自己負担です。自己負担分は概ね1日あたり500〜1,400円程度ですが、1ヶ月の上限金額があります。

1ヶ月の上限金額は、収入によって0円〜37,200円で設定されます。

厚生労働省によると、障害福祉サービスを利用している人(98.5万人)のうち、約92.7%が無料で利用していることが分かっています。

就労移行支援では給料をもらえるの?

就労移行支援では、原則給料をもらうことはできません。ただし、一部の事業所では、訓練の作業に対する工賃を支払っている事業所もあります。

最後に

ここまで、引きこもり状態の人が就労移行支援を利用して就職した事例や、就労移行支援を利用するメリット、受けられる支援内容について、元就労移行支援事業所のスタッフである筆者がご紹介してきましたが、いかがでしたか。

就労移行支援事業所では、就職のためのスキルを身に付けるだけではなく、生活リズムを整えたり、自己理解を深めたりすることができます。いきなり見学をするのはハードルが高い場合は、まずはメールやインターネットからの問い合わせをしてみるのはいかがでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事を書いた人

社会福祉士。総合病院で医療ソーシャルワーカーとして8年間勤務した後に、就労移行支援事業所で12年間勤務。サービス管理責任者、生活支援員、職業支援員を担当。就労移行支援事業所では発達障害のある人を中心に約300人の支援に携わってきた。

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