知的障害のある人が利用できる就労移行支援の一覧!就職先や就職率も紹介

知的障害のある人や、知的障害のあるお子さんをお持ちの人の中には、「知的障害のある人も利用できる就労移行支援事業所を知りたい」や「就労移行支援事業所を利用したらどんな仕事に就職できるの?」とお考えの方もいるかもしれません。

この記事では、就労移行支援事業所を利用した知的障害のある人の就職先や就職率、知的障害のある人が利用できる就労移行支援事業所を紹介していきます。

目次

知的障害のある人が利用できる就労移行支援とは

就労移行支援事業所は、一般企業で働くことを希望する障害や難病のある人が、訓練や実習等を通して、適性に合った職場への就労や定着を目指すサービスです。

知的障害のある人が就労移行支援事業所に通うことで、

  • 企業に就職するためのスキルが身に付く
  • 働く上での困りごとや対処方法に対する自己理解が進む
  • 就職活動のサポートを受けられる
  • 就職後も相談などのサポートを受けられる

といったメリットがあります。

就労移行支援を利用した知的障害のある人の就職率

「就労移行支援事業所に通ったら就職できるのだろうか?」と不安に思う人もいるかもしれません。ここでは、東京都の調査を例に、知的障害のある人で、就労移行支援事業所を利用して就職した人の割合をご紹介します。

以下の図のように、就労移行支援を利用した知的障害のある人の就職率は、2021年度に『42.1%』となっており、約2.5人に1人が就労移行支援を卒業した後に就職をしていることが分かります。

(東京都福祉局 令和2年度3年度4年度就労移行等実態調査より作成)

就労移行支援を利用して就職した知的障害のある人はどんな人?

公益財団法人日本知的障害者福祉協会の調査によると、2022年度に就労移行支援を利用して就職した知的障害のある人は、軽度が『222人』と最多で、次いで中度が『104人』です。一方、最重度は3年連続で『1人』となっています。

(公益財団法人日本知的障害者福祉協会 令和2~4年度全国知的障害児・者施設・事業実態調査報告書より作成)

知的障害のある人が就労移行支援を利用して就職する仕事

障害の程度や適性によって個人差があるため一概には言えませんが、一般的に知的障害のある人に向いている仕事は、同じ作業を繰り返す仕事やルールや環境の変化が少ない仕事などと言われています。

公益財団法人日本知的障害者福祉協会の「令和4年度全国知的障害児・者施設・事業実態調査報告書」によると、就労移行支援を利用した知的障害のある人の就職先は、『社会保険・社会福祉・介護事業』が最も多く、次いで『各種商品小売業,織物・衣服・身の回り品小売業,飲食品小売業,機械器具小売業,その他の小売業,無店舗小売業』、『食料品製造業,飲料・たばこ・飼料製造業』となっています。

就労移行支援を利用して就職した知的障害がある人の平均給料はいくら?

「就労移行支援を卒業して就職したら、給料はいくらもらえるの?」と疑問を持っている人もいるかもしれません。

公益財団法人日本知的障害者福祉協会の「令和4年度全国知的障害児・者施設・事業実態調査報告書」によると、就労移行支援を利用して一般企業等に就職した知的障害のある人の平均月額給与は『10万5,891円』となっています。

知的障害のある人が働くために利用できるサポート

就労移行支援事業所以外にも、知的障害のある人は働くために様々なサポートを受けることができます。ここでは、そうした就労支援の種類やそれぞれの特徴を紹介していきます。

就労移行支援以外で知的障害のある人が利用できる就労支援
  1. 障害者就業・生活支援センター
  2. 就労継続支援A型事業所
  3. 就労継続支援B型事業所

①障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害のある人の自立した雇用を図るために、就業と日常生活の両面からサポートする支援機関です。

就職に向けた準備や就職活動の支援といった就業面でのサポートのほか、生活習慣の形成や健康管理、金銭管理といった生活面でのサポートを受けることができます。

また、就労移行支援事業所やハローワーク、保健所などの関係機関との連絡調整も行ってくれます。

②就労継続支援A型事業所

就労継続支援A型は、一般企業等で働くことが難しい障害がある人等が、雇用契約を結んで最低賃金以上の給料をもらいながら働くことができるほか、能力等の向上のために必要な訓練を行うサービスです。

就労継続支援A型事業所で働く中で、一般就労に必要な知識や能力が高まった場合は、一般企業で働くためのサポートを受けることもできます。

また、就労継続支援A型事業所から就労移行支援事業所に移る人もいます。

③就労継続支援B型事業所

就労継続支援B型は、一般企業等で働くことや雇用契約に基づく就労が難しい障害のある人が、工賃をもらいながら働くことができるほか、能力等の向上のために必要な訓練を行うサービスです。

就労継続支援B型事業所へ通う中で、一般就労に必要な知識や能力が高まった場合は、一般企業で働くためのサポートを受けることもできます。しかし、一般就労への移行者割合は令和3年度時点で『10.1%』と、就労移行支援事業所や就労継続支援A型事業所に比べると低くなっています。

(参考:厚生労働省 就労移行支援に係る報酬・基準について

知的障害がある人に向けの就労移行支援事業所を一覧でご紹介

ここからは、知的障害がある人に向けて、就労移行支援事業所をご紹介していきます。ここでは一例として東京都の就労移行支援事業所を挙げていますが、デイゴー就労支援ナビではお住まいの都道府県や駅から就労移行支援事業所を探すことができます。

就労移行支援事業所 プレンティとしまく

就労移行支援事業所 プレンティとしまくのポイント
  • 昨年就職実績10名以上
  • 新大塚駅より徒歩3分
  • 在宅訓練も実施

HOPE神田

HOPE神田のポイント
  • 発達障がいや知的障がいの方が安心して通える環境
  • 定員20名に対して、福祉・企業経験の豊富な7名の職員がきめ細かく支援
  • 神田駅より徒歩4分

就労移行支援事業所かがやく学び舎

就労移行支援事業所かがやく学び舎のポイント
  • 亀戸駅より徒歩3分
  • 実際の現場で働くプログラムを用意
  • 公認心理師、精神保健福祉士と共に自立をサポート

就労移行支援事業所リスタート

就労移行支援事業所リスタートのポイント
  • 週1度、午後からだけでもOK
  • 交通費補助&昼食提供
  • 高田馬場駅より徒歩30秒

就労移行支援サービスLinkキャリアサポートセンター

就労移行支援サービスLinkキャリアサポートセンターのポイント
  • 9割が就職前に職場実習
  • 資格取得も支援
  • 東池袋駅より徒歩3分

知的障害のある人におすすめの就労移行支援事業所の選び方

知的障害がある人が就労移行支援事業所を選ぶ際には、以下の観点から事業所を比較してみるのがおすすめです。

  • 知的障害のある人への支援実績がどのくらいあるか?
  • 通所している人で、知的障害のある人の割合はどのくらいか?
  • 知的障害のある人向けのカリキュラムはあるか?

また、こうした知的障害のある人への支援実績のほかにも、駅からの距離や定員、一般就労移行率など、事業所によって様々な違いがあります。

デイゴー就労支援ナビでは、お住まいの地域や最寄り駅から通いやすい就労移行支援事業所を探し、対象となる障害や活動内容などを比較検討できますので、ぜひご活用ください。

就労移行支援事業所に関するよくある質問

就労移行支援事業所の利用条件・対象者は?

就労移行支援事業所は、以下の4つの条件を満たしている人が対象者とされています。

就労移行支援事業所の対象者
  1. 一般就労を希望している
  2. 障害・難病がある
  3. 65歳未満である※
  4. 適性に合った職場への就労等が見込まれる

サービスを利用できるかどうかの判断は市区町村が行っているため、「自分は就労移行支援事業所の利用対象者なのだろうか?」と不安の場合は、お住まいの市区町村の障害福祉担当部署にまずは相談してみてください。

※65歳以上の人は、以下の条件のいずれも満たしている場合は、65歳を過ぎても就労移行支援事業所を利用することができます。

65歳以上の人が就労移行支援を利用する条件

65歳に達する前5年間に障害福祉サービスの支給決定を受けていた人

65歳に達する前日までに就労移行支援の支給決定を受けていた人

就労移行支援事業所は利用料がかかるの?

就労移行支援を利用するためには、サービス全体にかかった費用のうち1割を支払う必要があります。ただし、所得に応じてひと月当たりの負担上限金額が決まっているため、自己負担額なしで就労移行支援事業所を利用する人も多いです。

厚生労働省によると、障害福祉サービスを利用している人(98.5万人)のうち、約92.7%が無料で利用していることが分かっています。

就労移行支援事業所では給料をもらえるの?

就労移行支援事業所は、就職するために必要な知識やスキルを身に付けたり、サポートを受けながら自分にあった職場を探したりすることを目的としたサービスのため、原則として給料は支払われません。

就労移行支援事業所は障害年金をもらいながら利用できるの?

就労移行支援事業所を利用する場合、障害年金に該当する状態であれば引き続き障害年金を受給することができます。

国民年金・厚生年金保険の「精神の障害に係る等級判定ガイドライン(平成28年9月)」には、知的障害のある人が就労した場合の等級判定で考慮すべき要素が以下のように示されています。

つまり、就労移行支援事業所に援助を受けながら通所している場合は、障害等級が1級または2級と見なされ、障害年金を受給できる可能性が高いということになります。

考慮すべき要素具体的な内容例
相当程度の援助を受けて就労している場合は、それを考慮する。就労系障害福祉サービス(就労継続支援A型、就労継続支援B型)及び障害者雇用制度による就労については、1級または2級の可能性を検討する。就労移行支援についても同様とする。
(国民年金・厚生年金保険の「精神の障害に係る等級判定ガイドライン(平成28年9月)」より作成)

就労移行支援事業所と就労継続支援事業所の違いは?

就労移行支援事業所と就労継続支援A型・B型事業所の大きな違いは、利用期間と一般企業等への就職率です。

就労移行支援が一般企業へ就職する人の割合が一番大きく、反対に就労継続支援B型が一般企業へ就職する人の割合が小さくなっています。

(公益財団法人日本知的障害者福祉協会 「令和4年度全国知的障害児・者施設・事業実態調査報告書」より作成)

また、就労移行支援事業所は利用期間が原則2年間となっていますが、就労移行支援事業所は利用期間に制限がありません。

就労移行支援と就労継続支援の違いについては、こちらの記事でも詳しく紹介しています。

最後に

ここまで、就労移行支援事業所を利用した知的障害のある人の就職先や就職率、知的障害のある人が利用できる就労移行支援事業所を紹介してきましたが、いかがでしたか。

知的障害のある人も利用できる就労移行支援事業所の中でも、人数の多さやスタッフの雰囲気など、様々な違いがあります。実際に事業所に行かないと分からないこともあるため、ぜひ見学や体験に行ってみた上で、通いたい事業所を選んでみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事を書いた人

監修者情報:メンタルエイド代表。社会福祉士、精神保健福祉士、ジョブコーチ、心理カウンセラー、幼稚園教諭。就労移行・就労定着支援サービスを行う事業所に12年従事。サービス管理責任者として個別支援計画をはじめ利用者との認知面談を中心にプログラム講師・支援機関連携・クリニック同行・企業開拓・面接同行・応募書類添削・定着支援・新規立ち上げ・スタッフ育成などを行う。120名の障がい者就労の実績があり、面談は1,000人以上。多くの面談実績からオリジナルの上村式認知整理面談技法を発案。

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