就労継続支援B型事業所の工賃・給料の平均は?生活できないって本当?

就労継続支援B型事業所で働くかどうか迷っている皆さんの中には、「就労継続支援B型事業所の賃金ってどのくらいなのか?」や「就労継続支援B型事業所の工賃だけだと生活できないんじゃないか?」といった疑問や不安をお持ちの方もいるかもしれません。

この記事では、そのような皆さんに向けて、就労継続支援B型事業所で働くともらえる工賃の金額や、就労継続支援B型事業所に通いながら生活するために利用できる制度、工賃が高い就労継続支援B型事業所の探し方などについてご紹介していきます。

目次

就労継続支援B型事業所ではいくら工賃・給料がもらえるの?

就労継続支援B型事業所では雇用契約を結ばないため、作業を行った対価として、賃金ではなく「工賃」が利用者に支払われることになります。

2022年度の平均工賃は、月額(月収)で『17,031円』、時間額(時給)で『243円』です。

就労継続支援B型事業所の平均工賃
月額17,031円
時間額243円
(厚生労働省 令和4年度工賃(賃金)の実績についてより作成)

また、工賃は都道府県ごとに違いがあり、2022年度の一月あたりの平均工賃は東京都が『16,320円』、平均工賃が一番高い徳島県では『22,361円』、平均工賃が一番低い山形県では『14,037円』となっています。

都道府県ごとの一月あたりの平均工賃
東京都16,320円
徳島県(一番高い)22,361円
山形県(一番低い)14,037円
(厚生労働省 令和4年度工賃(賃金)の実績についてより作成)

ここからは、就労継続支援B型事業所の平均工賃が過去11年間でどのように変わってきたかを詳しく見ていきましょう。

就労継続支援B型の一月あたりの平均工賃(月収)は上がっている

就労継続支援B型事業所の一月あたりの平均工賃は年々上がっており、11年間でおよそ『1.2倍』になりました。

(厚生労働省 令和4年度工賃(賃金)の実績についてより作成) 

就労継続支援B型の一時間あたりの平均工賃(時給)も上がっている

また、就労継続支援B型事業所の一時間あたりの平均工賃も年々上がっており、11年間でおよそ『1.3倍』になりました。

(厚生労働省 平成24年度~令和4年度工賃(賃金)の実績についてより作成)

就労継続支援B型事業所に最低工賃・賃金はあるの?

就労継続支援B型事業所では雇用契約を結ばないため、利用者は最低賃金の対象外となりますが、その代わりに『平均工賃は月額3,000円以上』というルールがあります。

厚生労働省はこのルールについて、以下のように取り決めています。

(工賃の支払等)

2 前項の規定により利用者それぞれに対し支払われる一月当たりの工賃の平均額は、三千円を下回ってはならない。

(引用:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準)

ここで注意したいのは、3,000円を下回ってはならないのは、あくまで事業所における一月当たりの工賃の平均額であるという点です。

ですから、ひとりの利用者の一月あたりの工賃が2,000円だった場合でも、事業所全体で工賃の平均額が3,000円を上回っていれば、問題ないということになります。

就労継続支援B型事業所の工賃だけだと生活できない?

一月あたりの平均工賃が『17,031円』ということを考えると、就労移行支援事業所B型事業所の工賃だけで生活をするのは難しいと言わざるを得ないかもしれません。

ですから、就労移行支援事業所B型事業所で働く皆さんは、ご家族の援助や公的なサポートを受けている人も多いです。

ここからは、就労移行支援事業所B型事業所に通いながら生活をしていくための様々な制度・支援などをご紹介していきます。

お金の負担を減らす制度の例①食材料費のみの負担

市町村民税非課税世帯や市町村民税課税世帯(所得割16万円未満)の場合、就労継続支援B型をふくむ障害福祉サービスでの食費は、原則、食材料費のみを負担することになります(事業所で食事や弁当が提供される場合のみに限る)。

ただし、事業所によっては一律で100円のみ負担する場合や、無料の場合もあります。

こうした食費の軽減は、該当者に対して自動で割引を適用してもらえるため、申請が不要です。

(参考:厚生労働省「障害者の利用者負担」)

お金の負担を減らす制度の例②精神通院医療

自立支援医療(精神通院医療)は、通院が必要な症状のある精神疾患がある人が利用できる制度で、通院にかかる医療費の自己負担額が原則1割になります。

ただし、世帯の収入状況に応じて自己負担に上限額が設けられています。

例えば、市区町村民税非課税世帯で本人または保護者の収入が年80万円以下の場合は、負担上限月額は『2,500円』、生活保護を受給している場合は負担上限月額は『0円』となります。

また、精神通院医療の対象となる精神疾患は以下のようになっています。

精神通院医療の対象となる精神疾患
  1. 病状性を含む器質性精神障害
  2. 精神作用物質使用による精神及び行動の障害
  3. 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害
  4. 気分障害
  5. てんかん
  6. 神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害
  7. 生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群
  8. 成人の人格及び行動の障害
  9. 精神遅滞
  10. 心理的発達の障害
  11. 小児期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害

※1~5は高額治療継続者(いわゆる「重度かつ継続」)の対象疾患

お金の負担を減らす制度の例③障害年金

就労継続支援B型事業所を利用する場合でも、障害年金に該当する状態であれば引き続き障害年金を受給することができます

国民年金・厚生年金保険の「精神の障害に係る等級判定ガイドライン(平成28年9月)」には、精神障害・知的障害・発達障害のある人が就労した場合の等級判定で考慮すべき要素が以下のように示されています。

考慮すべき要素具体的な内容例
相当程度の援助を受けて就労している場合は、それを考慮する。就労系障害福祉サービス(就労継続支援A型、就労継続支援B型)及び障害者雇用制度による就労については、1級または2級の可能性を検討する。
(国民年金・厚生年金保険の「精神の障害に係る等級判定ガイドライン(平成28年9月)」より作成)

つまり、就労継続支援B型事業所で援助を受けながら働いている場合は、障害等級が1級または2級と見なされ、障害年金を受給できる可能性が高いということになります。

お金の負担を減らす制度の例④生活保護

就労継続支援B型事業所で働いている場合でも、その収入と資産が最低生活費に満たない場合には、生活保護を受給することができます

最低生活費は、お住まいの地域や世帯の構成等により異なるため、詳しくはお住いの地域を所管する福祉事務所の生活保護担当にご相談ください。

また、障害年金をもらっている場合でも生活保護を受け取ることができますが、その場合は最低生活費から障害年金を差し引いた差額が支給されることになります。

お金の負担を減らす制度の例⑤グループホームの家賃助成

就労継続支援B型事業所へ通っている人の中には、グループホーム(共同生活援助)を利用している人もいます。

そうしたグループホームの利用者(生活保護または低所得の世帯)は、1人あたり月額1万円を上限に家賃の助成を受けることができます

さらに、自治体独自で家賃助成の制度を設けているところもあります。例えば東京都では、グループホームの入居者(知的障害、身体障害、難病等に限る)の所得の状況に応じて、以下のように入居者が支払った家賃の一定額を助成しています。

入居者の所得額助成額
月額73,000円未満月額24,000円
月額73,000円以上97,000円未満月額12,000円

また東京都では、精神障害のある入居者の家賃や更新料などを助成するために、施設借上費として月額69,800円を支給しています。

(参考:厚生労働省 障害者の利用者負担

工賃が高い就労継続支援B型事業所の探し方のコツ

できるだけ工賃が高い就労継続支援B型事業所で働きたいと思っている人も多いのではないでしょうか。

ここからは、高い工賃がもらえる就労継続支援B型事業所の探し方のコツをご紹介していきます。

①工賃が高い生産活動を選ぶ

就労継続支援B型事業所は、清掃・封入発送・農作業・クリーニング・菓子製造など、事業所によって生産活動の内容は様々です。

こうした生産活動は内容ごとに工賃に違いがあるため、少しでも多く収入を得たい場合は工賃が高い生産活動をしている事業所にしぼって選ぶのも一つの手です。

例えば、以下の図を見ると、クリーニングは『25,761円』ですが、出版関連(三つ折りや袋詰め等)は『8,569円』と、平均工賃月額に約3倍の差があります。

(厚生労働省 就労系障害福祉サービスにおける経営実態等調査より作成)

一方で、無理なく仕事を続けていくという観点では、工賃だけではなく、ご自身の興味のある生産活動や得意な作業内容を選んでみても良いかもしれません。

②通いたい地域の事業所の平均工賃を比較する

「家から行きやすい」など既に通いたい地域がある場合は、就労継続支援B型事業所の数が限られてきてしまうため、平均工賃を比較してみるといいかもしれません。

デイゴー就労支援ナビでは、スマートフォン・PCからお近くの就労継続支援B型事業所の平均工賃や労働時間、送迎の有無などの比較検討を行うことができますので、ぜひご活用ください。

最後に

ここまで、就労継続支援B型事業所で働くともらえる工賃の金額や、就労継続支援B型事業所に通いながら生活するために利用できる制度、工賃が高い就労継続支援B型事業所の探し方などについてご紹介してきましたが、いかがでしたか。

生産活動の内容や工賃の額は事業所によって差がありますから、ぜひデイゴー就労支援ナビでご自身にあった事業所を見つけてみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事を書いた人

監修者情報:メンタルエイド代表。社会福祉士、精神保健福祉士、ジョブコーチ、心理カウンセラー、幼稚園教諭。就労移行・就労定着支援サービスを行う事業所に12年従事。サービス管理責任者として個別支援計画をはじめ利用者との認知面談を中心にプログラム講師・支援機関連携・クリニック同行・企業開拓・面接同行・応募書類添削・定着支援・新規立ち上げ・スタッフ育成などを行う。120名の障がい者就労の実績があり、面談は1,000人以上。多くの面談実績からオリジナルの上村式認知整理面談技法を発案。

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