就労移行支援の職場実習・企業実習の目的とメリット、参加の流れを解説

就労移行支援の利用を検討している人の中には、「就労移行支援では職場実習に参加できるの?」や「実習に参加するとどんなメリットがあるの?」といった疑問を持っている人もいるかもしれません。

この記事では、就労移行支援事業所の職場実習・企業実習の目的とメリット、参加の流れをご紹介していきます。

この記事の監修者

メンタルエイド代表。サービス管理責任者、社会福祉士、精神保健福祉士、ジョブコーチ、心理カウンセラー、幼稚園教諭。就労移行・就労定着支援サービスを行う事業所に12年従事。120名の障がい者就労の実績があり、面談は1,000人以上。多くの面談実績からオリジナルの上村式認知整理面談技法を発案。

目次

就労移行支援における企業実習・職場実習の目的

就労移行支援事業所の企業実習・職場実習は一般企業で実際の業務を行う就業体験です。必要に応じて実習中に就労移行事業所のスタッフのサポートを受けられるため、利用者は安心して実習に取り組むことができます。

企業実習・職場実習では、一般企業で働く体験を通して就労移行支援事業所で習得した知識、経験を実践の場で試すことができるだけではなく、実習で得た体験を通じて利用者が自分の新たな課題を発見することも目的の一つです。

また、数日間の職場実習を通して適性があれば雇用されるという、就職活動における選考過程の一部である場合もあります。

就労移行支援の企業実習・職場実習に参加するメリット

就労移行支援事業所の企業実習・職場実習に参加するメリットは、以下のように利用者が就労移行支援事業所のサポートを受けながら実習を進められることです。

  • 事前打ち合わせ
  • 実習への同席
  • 実習中の相談、サポート
  • 実習終了後のフィードバック

一般企業での仕事経験がない、または経験が少ない利用者にとっては実習への参加が不安な方もいるのではないでしょうか。

必要に応じて就労移行支援事業所のスタッフが企業の担当者との事前打ち合わせや実習に同席することで、安心して実習に臨めることはメリットの一つです。

また、実習終了後にはスタッフと振り返りを行い、改善点を就労移行支援事業所のプログラムや就職活動に反映させることで、より効率的に就職準備を進めることができます。

就労移行支援の企業実習・職場実習の参加の流れとスケジュール

それでは、就労移行支援事業所に通所中に、企業実習・職場実習に参加するまでの流れを3つのステップに分けてみていきましょう。

ステップ①実習内容の検討

実習に入る前に実習場所、 実習期間、業務内容などの諸条件について企業の担当者、就労移行支援事業所のスタッフ、利用者の3者で打ち合わせを行います。打ち合わせをする際に職場見学を行う場合もあります。自分が希望する条件と相違が無いか慎重に確認をしましょう。

ステップ②実習の開始

事前に決めた日程に沿って実習を行います。通勤の練習など準備が必要な場合には実習開始日までに余裕を持ったスケジュールを組みましょう。

また、実習の目的を明確にしてから臨むことで成果が測りやすくなります。

ステップ③実習終了後の振り返り

実習の期間終了後、事前打ち合わせと同様に面談を行います。 実習を体験して感じたことや改善点などを振り返りながら、今後の就職活動の方向性について検討していきます。

就労移行支援の企業実習・職場実習の内容

就労移行支援事業所の企業実習・職場実習ではどのような仕事があるのでしょうか。

さまざまな種類の仕事がありますが、ここでは「事務職」「IT関連職」「軽作業」の3つの職種についてご紹介していきます。

事務職の例

  • データ入力、データ照合
  • データスキャン(紙の書類のPDF化)
  • 資料作成(Exel、PowerPoinを使用t)
  • 郵便対応(郵便物の仕分け、封入、風乾、発送)

IT関連職の例(エンジニア・デザイナー等)

  • Webサイトの制作(ホームページのデザイン構成など)
  • イラスト作成
  • 建築CADオペレーター(建築設計補助、設計図作成・修正)
  • メディア運営(Web、SNS、アプリ等の更新・情報発信)

軽作業の例

  • 清掃(拭き掃除、掃き掃除、ごみ捨て)
  • 倉庫内作業(段ボール運搬、商品の棚卸し)
  • 調理補助業務(洗い場、仕込み、料理の盛り付け)
  • 介護業務(入浴、食事、排泄)

就労移行支援の企業実習・職場実習に参加して就職した事例

ここでは、企業実習・職場実習に参加した後に一般企業へ就職した事例をご紹介します。実習前・実習中に感じていた不安について、利用者がスタッフのサポートを受けながらどのように乗り越えられたのかご参照ください。

20代女性(精神障害)の事例

就労移行支援を利用して10ヶ月後に障害者雇用枠で就職週5フルタイムで勤務しています。

就労継続支援A型事業所に通えなくなり、高校の先生が紹介してくれたのが通所のきっかけです。最初は不安でしたが、居心地が良く支援員の方が優しく接してくれたことで体調の安定にも繋がりました。

薬局での実習が自信を持ち就職に繋がりました。苦手なものも少しずつ出来るようになり、お仕事が続けられるように体調管理をこれからもしていきたいです。

20代(精神障害)の事例

就労移行支援の様々なプログラムに参加することで、心身の健康を大切にしたいと思えるようになったことと障害を持っている自分を受け入れようと思えるようになったことが自分自身の大きな変化となりました。

 実習期間は弱音を吐いていたこともありましたが、抱えていた悩みなどを全部聴いてもらえたこと、その上で「自分のペースで進めばいい」と言ってもらえたことで、卒業まで通い続けることができました。 利用前とは全く違う自分に変わることができたと胸を張って言えるくらい自信を持つことができました。

30代女性(発達障害)の事例

なかなか仕事が続かず、定職につけない時期があり病院に相談したところ、就労移行支援事業所を紹介してもらいました。 以前の職場では指示に対して理解できないことが多くて、それでミスをしてしまい怒られることが多かったです。

就労移行支援事業所では、ビジネススキルの講義の中で確認や報告をすることの大切さを学びました。外部実習に行った時に簡単なミスをしてしまって何度か落ち込むことがありましたが、職員さんとの面談で悩みを分かってもらえました。 

そのあと、事業所でも報告の習慣をつけるトレーニングをすることになりすごく心強かったです。 今は建設関係の企業で各支店の郵送物管理・発送の部署で勤務していて、自分に合っていると感じています。

30代女性(発達障害)の事例

「企業で働くうえでは必ず役に立つ」というのが、就労移行支援事業所に通所をした印象でした。 日常的な会話やスタッフとのコミュニケーションなどが、全てオフィス内で働く時の模擬訓練になっています。

また、私は自分の強みとなる業務を持ち合わせていませんでした。しかし、就労移行支援でパソコンスキルを身に付け実習を体験することで、PCのデータ入力など自分の得意スキルを見つけることができました

さらに、大企業の特例子会社から、若いIT企業の障害者雇用枠まで、特性や要望に合わせた幅のある応募先を紹介してもらえるのもありがたかったです。

就労移行支援の企業実習・職場実習に関するよくある質問

どんな企業・職場で実習ができるの?

実際にどのような業種や規模で実習が行われるのか「公益財団法人東京しごと財団」が作成した資料を参考にご紹介します。

2024年10月1日現在の受入れ企業数は415社となっており、業種、規模ともに多様な企業があります。

「株式会社JALグランドサービス」「株式会社サンリオエンターテイメント」「佐川急便株式会社」などの一般企業だけではなく「LINEビジネスサポート株式会社」のように特例子会社でも実習の受入れを行っています。

利用者の興味がある業種や企業規模、実習内容で検討することはもちろんですが、障害のある方の受入れ実績が豊富な特例子会社での実習を選択肢に入れることで更に選択の幅が広がります。

また、希望する職種や業種で実施が可能かどうかは、受入れ企業側の都合や求められる条件にもよります。事前に就労移行支援事業所のスタッフへご相談ください。

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企業名事業内容従業員数実習内容の例
株式会社JALグランドサービス航空機地上支援業務2,271名航空機の機内にて使用する機内用品の倉庫セッティング業務
株式会社サンリオエンターテイメントテーマパーク運営262名(アルバイト、出演者除く)事務補助(PC作業、シュレッダー等)清掃全般(オフィス、外周等)その他、全社から依頼された軽作業
佐川急便株式会社運送業52,403名荷物の仕分け、伝票の仕分けや梱包作業の手伝い、営業所の清掃など事務補助職、映像検証
LINEビジネスサポート株式会社配送、美化作業およびマッサージ事業を含む各業務(特例子会社)53名(うち、障害のある人は44名)社内美化(会議室、カフェテリア、ウォーターサーバーの清掃)
(参考:公益財団法人 東京しごと財団「(公財)東京しごと財団 職場体験実習 受入れ企業一覧」より一部企業を抜粋して作成)

他にも以下のような業種で実習の受入れを行っています。

  • 小売業
  • 製造業
  • 接客業
  • 建設業
  • 清掃業
  • 農業
  • 介護・福祉業

企業実習・職場実習先が合わないと感じたら?

実習に参加してみて、「事前に確認していた業務内容と相違がある」「業務内容が思っていたよりも難しい」など、実習の継続に困難を感じた場合には、まずは就労移行支援事業所のスタッフに相談してみてください。

スタッフが、利用者が担当する業務内容の変更、または企業側からの要求水準を見直すなど実習先の担当者と相談して作業内容の再調整を行います。必要に応じて実習の中止や実習場所の変更を検討する場合もあります。

就労移行支援の企業実習・職場実習は何日くらい?

企業実習・職場実習の日数は企業や都道府県によってさまざまですが、1日から実習をするところもあれば、3週間実習をするところもあります。

例えば埼玉県では、以下のような職業訓練を行っています。

実習期間内容
10日オフィス内サポート作業
15日製造工場内サンテナ洗浄
12日学童保育施設内作業
(参考:埼玉県「令和6年度 障害者委託訓練のご案内」より作成)

就労移行支援の企業実習・職場実習に参加したら賃金はもらえる?

企業実習・職場実習は実習先企業と雇用契約を締結しません。そのため、賃金や交通費の支払いはありません。

企業実習・職場実習で企業は何を見ているの?

企業実習・職場実習は「実習のみ」の場合と「実習後の採用を検討するための実習」があります。後者のように実習が選考の場である場合、企業側では以下の点を注視しています。

  • 仕事のスキルは充分か?
  • 職場のルールは守れるか?
  • コミュニケーションスキルは充分か?
  • 勤怠は安定しているか?

上記のように利用者側が「業務を遂行するために必要な条件」を満たしているかどうかも重要になりますが、受入れ側の企業としても利用者に活躍してもらうための配慮が行えるかどうかを判断する材料も確認することになります。

最後に

ここまで、就労移行支援事業所の職場実習・企業実習の目的とメリット、参加の流れを解説させていただきました。一般企業への就職、定着という目標に向けてご自身の職業適性を知ることは大切です。

企業実習・職場実習の体験を通して自己理解を深め、自分に合った仕事内容、働き方を検討していきましょう。

就労移行支援事業所選びでお困りの際は、ぜひお気軽に事業所検索サイト『デイゴー就労支援ナビ』をご活用ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事を書いた人

社会保険労務士、社会福祉士。大学卒業後、出版社や不動産会社で営業を経験。現在は外資系人材サービス会社で障害者雇用の採用、研修、労務管理担当として勤務中。

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