うつ病・ASD・社会不安障害のある30代男性の就職・転職事例|社会人経験がない中で疑似就労が自信に

年齢・性別:30代(男性)
障害・疾患:ASD(自閉スペクトラム症)、うつ病、社会不安障害
就労移行支援の利用期間:5ヶ月
就職先の職種:事務/オフィスサポート

就職・転職するまでの年表
2017年

大学時代に進路などのトラブルで体調を崩し、休学状態に。かかりつけの心療内科に勧められ、学生でも利用できる就労移行支援に月に1回のペースで通い始める。

2018年

大学に在籍しながら、週に1回のペースで就労移行支援に通い続ける。

2019年3月

大学を卒業したタイミングで、就労移行支援に週5日で通い始める。6月から就職活動を開始。

2019年8月

金融関連の特例子会社に事務補助として就職。

2024年

成長の機会を求めて株式会社エス・エム・エスに転職し、オフィスサポートに従事。社内外とのやり取りが増え、刺激になっている。

目次

極限まで頑張ってしまうタイプだった学生時代

どのような学生時代でしたか?

障害があることを認知はしていなかったのですが、昔から小さな違和感を感じているところはありました。

自分は周りを見て行動するタイプで、責任感を強く感じやすいところがあります。一方で、不安を感じやすいというところや、物事やロジックへのこだわりは割と強いという一面もありました。

そういったところで、そこまで物事について気にしない人と話すときには何となく違和感を感じてはいました。

また、極限まで頑張ってしまうタイプのため、特に中学では少し不登校になっていた時期もありました。

障害があることについていつ知りましたか?

大学3、4年生になって進路のことでトラブルがあり、体調を一気に崩してしまったことがきっかけでした。

私のケースの場合は、家庭の状況がエリート一族のような感じで、地方公務員以上あるいは大企業に就職するという前提条件のようなものがあり、自分の人生の中で縛られてるところがありました。

そうなると、ちょっと苦しいなっていうところは正直ありました。自分としてはオーバースペックになってしまって、何とかやり切ろうとすると、限界をむかえてしまう。落ち込んでしまい、休学に近い形になってしまいました。

いくつか心療内科を受診してお医者さんと関わり、ASD(自閉スペクトラム症)やうつ病の診断結果を見るにあたって、時間をかけながら障害について受容をしていきました。

まずは月に1回から就労移行支援に通い始めた

就労移行支援を知ったきっかけは何ですか?

かかりつけの医療機関の方が、おすすめの支援機関をいくつか教えてくれたことがきっかけです。

中でも、私が通った就労移行支援事業所は大学時代からでも週に1度だけ利用できるシステムが導入されていたので、大学時代から通い、卒業後にそのまま同じ就労移行支援に通所することになりました。

通った就労移行支援を選んだ決め手はありますか?

他の事業所と比べると、最初からカリキュラムやプログラムの内容を提示してくれていたところがよかったです。自分のペースに合わせて自主的に訓練をするという事業所もありましたが、自分は社会人としての経験がなくて、それが不安だったので、ある程度最初からプログラムが用意されて、しっかり教えてくれるのは魅力的でした。

就労移行支援での疑似的な社会体験が大きな経験に

就労移行支援ではどのようなプログラムがありましたか?

ビジネスマナーやソーシャルスキルなどを知るための講座と、基本的なPC業務スキルを高めるためのサポート体制がありました。

また、自分の特長や強み弱みをまとめ上げてみようというワークがありました。書き出してまとめるというのを繰り返す中で、何となく自分の中で「自分はどういう人間か」ということがある程度理解が進み、障害の特性としての受容が進んだかなというふうに思っています。

一番印象に残っているプログラムはありますか?

大学生までアルバイトもしたことがなかったので、疑似的な社会体験ができたっていうのが一番大きいかなと思っています。

オンライン店舗のような疑似的な店舗を開いて古本を売り出し、実際に取引をしてチームで連携を取りながら進めていくプログラムがあったので、これは一番いいなと思いました。

特に障害の特性上、アルバイトをしていないか、あるいは続かないという方も多かったとは思うんですけども、就労移行支援で学びながら、ある程度周りが見てくれるような中で体験をして、フィードバックをもらいながら成長していけるっていうのは、職場体験のステップとしてのところがやっぱり一番良かったかなと思います。

自分の特徴を活かした職種へ就職

いつ頃から就職活動を始めましたか?

通所を始めた3月・4月はビジネスマナーやPCスキルといったプログラムに参加していましたが、ゴールデンウイーク明けから履歴書や面接練習を始めました。実際に就職活動を本格的に始めたのは通所して約4ヶ月経過した6月からです。

就職活動を始めるタイミングは、最初の1、2カ月の動向や経験値を見ながら、支援員の方と相談し、自分の感触でいけそうだなという時にスタートをしました。

どのような軸で就職活動をしていましたか?

自分の特性・特徴を理解する中で、割とコツコツと作業を継続してできるというタイプで、事務系作業やオフィスサポート系というのは特徴とあっているという話があったので、事務系をメインで何社か見て回りました。

就職活動ではどのようなサポートがありましたか?

事前準備の段階では、履歴書の作成や面接関係の対策をこまめにしてくれました。

また、実際に実習や面接が始まったら、特に面接に一緒に来てもらえるのは一番心強かったですね。ひとりで面接に行くというのは私は全然大丈夫だったのですが、要するにプッシュしてくれるんですよね。

自分の面接が終わったあとに、もちろん100点で全部話すことができたとは限らないので、そういったところを支援者の方が会社の方に「大丈夫そうだ」という印象を裏付けしてくれました。

その結果、事務系職種に就職されたんですね

金融関連の特例子会社に事務補助として就職をしました。8時40分から17時10分まで、1日7時間半勤務でした。

初めての就職だったので、職場で自分がきちんと仕事ができるか、周りの人とうまく協調して仕事ができるか、週35から40時間くらい働くので、それでも仕事を安定して、続けられるかというところは気になっていました。

就職後の定着支援はどうでしたか?

就職後も、定着支援として、就労移行支援の支援員の方と面談をして大丈夫そうかどうかを確認してもらっていました。

以前から付き合いのある支援員の方は話しやすいという環境があったので、特に最初のときは、毎週、毎月話をさせていただいて、不安感の解消には繋がったかなというふうに思います。

実際、定着支援の続いた3年間は、いろいろ相談をすることがあったので結構良かったです。

さらなる成長の機会を求めて転職活動も

3年間勤務したあとに、転職をされたんですね

特例子会社で経験を積んだあとに、今度はオープン就労でエス・エム・エスに転職をして、事務やオフィスサポートをしています。

もちろん前職の方もしっかり仕事を進められていいなと思ってはいたんですけども、やはり自分の中で、もう少し挑戦といいますか、さらに成長する機会を求めているという自分の気持ちに嘘はつけませんでした。

そのため、なるべくオープンのところで、一段階ステップアップしていきたいなという気持ちになり、転職活動を始めました。

現在はどのような仕事をしていますか?

前職と現職の仕事内容で大きな違いは、窓口応対がかなり増えたことです。特例子会社だと配慮の面がだいぶ多くなるので、特に社外や窓口カウンター、電話応対、郵便物関係といったタイプの仕事はある程度制約が入って、そこまで多くやることではありませんでした。

しかし、現職では、オフィスサポートやIT関係のサポートで、社内はもちろん社外との応対や確認が増えてきました。

対人で仕事をするという割合が増えたのは、自分としては刺激になってるかなと思います。

今後はどのような仕事をしていきたいですか?

今はチームのメンバーとして働いているのですが、リーダー関係、マネジメント関係の業務も、また前職から続いて本格的にできればなというふうには思っています。

オープン就労になるので、多少難易度が上がる可能性はありますけれども、現職のサポート体制が整っており、相談しやすい環境ではあるので、チャレンジしてみようかなと思っています

働くことに悩んでいる人へ伝えたいことはありますか?

あまり最初から大きな階段をあまり登ろうとはしないで、一段ずつうまくステップを刻みながら進めていくと、結果的には上の階までいけたみたいな、そんな感じになることはできると思います。

なので少しずつ毎日頑張っていく、自分のできる範囲で一つ一つ上にのぼっていく、という意識を持つとことがいいのかなと思います。

この記事を書いた人

デイゴー求人ナビ・就労支援ナビ編集部は、障害や難病のある人が働く上で役立つ情報や、就労移行支援、就労継続支援A型・B型における事業所運営のノウハウを発信しています。就労移行支援事業所の管理者経験者も在籍し、有識者にもご協力いただいています。

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