精神障害・疾患のある人がリワークを利用して復職する流れは?利用期間や料金も紹介

うつ病や統合失調症などの精神障害・疾患があって休職をしている人の中には、「復職するためにリワークプログラムを受けてみたい」や「リワークプログラムを利用したらどのくらいの期間で復職できるの?」、「リワークプログラムの利用料金や利用方法を知りたい」といった疑問を持っている人もいるかもしれません。

この記事では、精神障害・疾患のある人がリワークプログラムを利用して復職するまでの流れや、復職までの期間、利用料金などについてご紹介していきます。

目次

精神障害・疾患のある人が利用できるリワーク・復職支援とは

リワークは「Return To Work」の略称で、うつ病や統合失調症などの精神疾患によって休職している人が、心と身体のリハビリテーションを行うことで復職を目指すためのプログラムです。

生活リズムを整え、会社で働くイメージをつかみやすくするほか、復職後も安定的に働き続けることを目的にしています。

休職者の同じ企業における休職回数は、平均で2.08回となっており、復職後にもう一度休職を余儀なくされる場合も珍しくありません。復職後に働き続けるためにも、リワークプログラムを経験してみるのがおすすめです。

精神障害・疾患で休職している人の数

厚生労働省の令和5年度障害者雇用実態調査によると、精神障害のある人で企業に雇用されているのは推定約21万5千人です。このうち、1ヶ月以上にわたり休職している人の割合は『5.7%』と、推定約12,200人の人が体調の変化などにより休職していることが分かっています。

ただし、これは障害者雇用枠で働いている人のうち休職している人数ですので、障害者雇用枠以外で働いている人で休職をしている人の数を含めると、実際の休職者の数はもう少し多いでしょう。

精神障害・疾患で休職した人の診断名

精神障害・疾患により休職を余儀なくされた人の、休職開始時の診断名は以下のようになっており、『うつ病・うつ状態』の人が約58%と半数以上を占めていることが分かります。

グラフ
(障害者職業総合センター「2021年 職場復帰支援の実態等に関する調査研究」より作成)

精神障害・疾患で休職している人が復職するまでの期間

精神障害・疾患で休職している人が復職をするまでの期間は、平均で17.5ヶ月となっています。

一方、最短だと3ヶ月、最長だと47ヶ月の場合もあり、休職中の症状の度合いによって復職までの期間は様々であることが分かります。

(参考:障害者職業総合センター「2021年 職場復帰支援の実態等に関する調査研究」)

精神障害・疾患のある人が利用できるリワーク・復職支援の種類

精神障害・疾患のある人が利用できるリワーク・復職支援には、以下の図のようにいくつかの種類があります。ここからは、それぞれのプログラム内容を紹介していきます。

医療リワーク就労移行支援のリワーク職リハリワーク
実施主体医療機関就労移行支援事業所地域障害者職業センター
対象休職者休職者
※ただし、就労移行支援は離職者も利用可能
休職者、事業主

※このほかに、企業内で実施される職場リワークや自立訓練(生活訓練)によるリワークもあります。

①医療リワーク

医療リワークは、精神科や心療内科といった医療機関のデイケアなどで実施されるプログラムで、利用期間は約3ヶ月〜7ヶ月ほどになります※。医師や看護師、臨床心理士などの専門職が、規則正しい生活リズムを取り戻すための支援や、認知行動療、集団でのソーシャルスキルトレーニングなどを行い、復職を目指します。精神科治療や再休職予防が主な目的となっています。

※症状の度合いによって個人差があり、短い人だと数週間、長い人だと年単位で利用する場合もあります。

②就労移行支援によるリワーク

就労移行支援事業所が提供するリワークプログラムは、事業所ごとにプログラム内容が様々で、利用期間は約半年〜1年の場合が多いです※。就職後の職場定着に対するノウハウを多く持っており、就職後の定着支援サービスを行っている事業所もあります(最大3年間)。

また、もしも復職ではなく転職をしたいと考えが変わった場合にも、就職活動のサポートを行ってくれます。

※就労移行支援は、原則2年間まで利用することができるので、時間をかけて復職を目指すこともできます。

③職リハリワーク

職リハリワークは、全国47都道府県に設置されている地域障害者職業センターが実施するプログラムで、利用期間は約3ヶ月〜6ヶ月ほどです。主治医や企業の担当者と連携しながら、リワークの支援計画に基づいて職場への復帰を目指します。

生活リズムの再構築を行いながら、地域障害者職業センターに通って講座(ストレスマネジメント、リラクゼーション等)や作業課題(物品請求書作成、数値チェック等)といったプログラムを受講するほか、必要に応じて職場との調整によるリハビリ出勤を行います。

精神障害・疾患のある人向けのリワークプログラムの対象者

リワークプログラムの対象者は、精神障害や疾患により休職中で復職を希望している人が主です。具体的な対象者の条件はリワークプログラムの種類によって異なります。

医療リワークの対象者

精神疾患により休職中で、主治医の許可を得ている人

就労移行支援によるリワークの対象者

精神疾患により休職中で、以下のいずれにも当てはまる人

  • 企業、地域における就労支援機関や医療機関等による復職支援の実施が見込めない場合、または困難である場合 
  • 本人が復職を希望し、企業および休職に係る診断をした主治医が、就労系障害福祉サービスによる復職支援を受けることにより復職することが適当と判断している場合
  • 休職中の障害者にとって、就労系障害福祉サービスを実施することにより、より効果的かつ確実に復職につなげることが可能であると市区町村が判断した場合

職リハリワークの対象者

民間企業等の雇用保険適用事業所に雇用されている休職中の人で、精神疾患の診断を受けており、復職する意思がある人

※ただし、雇用保険加入の事業所に雇用されている従業員が対象となるため、国、地方公共団体、行政執行法人及び特定地方独立行政法人の職員は利用することができない。

精神障害・疾患のある人向けのリワークプログラムの料金

リワークプログラムの料金は、利用するプログラムの種類や所得に応じて異なります。

医療リワークの料金

医療リワークは医療保険に基づいて行われるため、原則3割の料金を自己負担する必要があります。

通院が必要な精神疾患やてんかんのある人が利用できる自立支援医療(精神通院医療)が適用された場合、通院にかかる医療費の自己負担額が原則1割になります。ただし、世帯の収入状況に応じて自己負担額に上限が設けられており、世帯の範囲は健康保険証の場合と同じです。

所得区分重度かつ継続以外重度かつ継続
市町村民税所得割235,000円以上(年収約833万円以上)対象外20,000円
市町村民税所得割33,000円以上235,000円未満(年収:約400~833万円未満)総医療費の1割または高額療養費(医療保険)の自己負担限度額10,000円
市町村民税所得割33,000円未満(年収約290~400万円未満)5,000円
市町村民税非課税(「本人又は障害児の保護者の年収80万円以下の世帯」を除く)5,000円
市町村民税非課税(本人又は障害児の保護者の年収80万円以下)2,500円
生活保護世帯0円
(厚生労働省「自立支援医療の患者負担の基本的な枠組み」より作成)

就労移行支援によるリワークの料金

就労移行支援は障害者総合支援法に基づいて定められた障害福祉サービスのうちのひとつで、利用料金は1日あたりおよそ500円〜1,400円です。ただし、前年度の所得に応じてひと月当たりに支払う上限金額が決まっているため、自己負担額なしで就労移行支援を利用する人も多いです。

区分世帯の収入状況負担上限月額
生活保護生活保護受給世帯0円
低所得市町村民税非課税世帯0円
一般1市町村民税課税世帯(所得割16万円未満)ただし、入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除く※9,300円
一般2上記以外37,200円
(出典:厚生労働省「障害者の利用者負担」により作成)

※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「一般2」に該当。

職リハリワークの料金

職リハリワークの利用料金は無料です。ただし、通所する際の交通費は自己負担となります。

精神障害・疾患のある人がリワークを利用して復職するまでの流れ

精神障害・疾患のある人がリワークプログラムを利用して復職するまでの一般的な流れを、就労移行支援のリワークを利用する場合を例として、ご紹介していきます。

精神障害のある人がリワークを利用して復職するまでの流れ
  1. 主治医と会社へ相談
  2. リワークを行っている就労移行支援を見学・体験
  3. リワークプログラムの申請手続き
  4. リワークプログラムの受講
  5. 復職へ
  6. 復職後のフォロー

①主治医と会社へ相談

まず、主治医と相談し、リワークプログラムの利用が適切かどうかを確認します。

職場への復職を考え始めたら、最初のステップとして、病状を把握している主治医にリワークの利用について相談し、意見書をもらいましょう。

就労移行支援のリワークを受ける場合は、「医療では対応できない福祉的サービスを受ける必要がある」や「生活リズムを整えるために通所訓練が必要である」、「人と接する機会を増やす」など、就労移行支援のリワークでなければならない旨を記載してもらいます。

また、主治医からの意見書のほかに、リワークプログラムを受けるためには休職中の会社からの許可が原則必要になります。

※所属している会社が、提携先のリワークプログラムを紹介してくれる場合もあり、その場合は就労移行支援ではなく会社が紹介したリワークプログラムを受けることがほとんどです。

ステップ②リワークを行っている就労移行支援を見学・体験

次に、リワークを実施している就労移行支援事業所に、インターネットや電話などで見学の予約をします。

主治医からの診断書や障害者手帳などを持っていない場合でも見学をすることができますから、気になる事業所があれば気軽に連絡をしてみてください。

見学では、施設内の雰囲気を見たり、リワークの内容の説明を受けたりするほか、休職に至った経緯などもヒアリングが行われます。希望によっては、見学のあとに体験通所ができる事業所もあります。

③リワークプログラムの申請手続き

見学や体験を通して、実際に就労移行支援のリワークの利用をしたい場合は、市町村の窓口に「障害福祉サービス受給者証」の申し込みをしましょう。受給者証は、就労移行支援を利用するために必要な証書で、申請からおよそ1ヶ月程度で発行されることが多いです。

受給者証が発行されたら、就労移行支援事業所と利用契約を結ぶことで、リワークプログラムに参加することができるようになります。

④リワークプログラムの開始

就労移行支援のリワークプログラムが始まると、事業所への通所を通して規則正しい生活リズムを取り戻し、復職準備を進めることになります。

リワークプログラムでは、例えば、「休職にいたった経緯の振り返り」、「コミュニケーショントレーニング」、「健康管理」、「認知行動療法」など、一人ひとりの状態に合わせてプログラムを進めていきます。

⑤復職

事業所内でのリワークプログラムと並行し、復職の為の訓練として会社までの通勤訓練や週1日会社で昼休憩を過ごすなどの訓練も行うことがあります。

また復職時は主治医や産業医の診断書が必要になるケースがほとんどですから、復職の準備ができているかどうかを主治医と話し合い、許可をもらいましょう。

また、本人が希望する場合は就労移行支援事業所のスタッフが復職の意思を企業に伝えてくれたり、復職後の労働時間や日数などの交渉に応じてくれたりするケースもあります。自分ひとりでは企業に言いにくいという人は、ぜひスタッフに相談してみましょう。

すべてのプログラムを修了し、復職の予定が決まれば退所になります。     

⑥復職後のフォロー

復職後も就労移行支援事業所や企業、主治医からの継続的な支援を受け、安定した就労を目指します。就労移行支援事業所のスタッフは定期的な面談や、職場への訪問を通して、復職後の困りごとの解決のサポートをしてくれます。

また、復職後もいきなりフルタイムで働くのではなく短時間勤務をする人や、処遇変更を伴わない異動をする人、残業や休日勤務を制限して働く人など、再休職を防止するための環境整備をする場合も多いです。

精神障害・疾患のある人のリワーク体験談

ここからは、精神障害・疾患のある人がリワークプログラムを通して復職を果たした体験談をご紹介していきます。

適応障害・30代の復職体験談

通所中、担当支援員の心理師さんから「自分の心だけでなく、身体の変化にも関心を向けること」というアドバイスがとても心に残っています。今までは、自分の体調の変化に興味がなかったため、就労ができなくなるまで自分を追い込んだことを反省して、今後は毎日自分の体調や気持ちに関心を向けて、どちらの健康も欠けることなく過ごしたいという意識が高まりました。

復職面談のための資料作成がかなり大変でしたが、たくさんのアドバイスとお力添えをいただき無事完成することができました。担当支援員の心理師さんが親切に何でも相談にのってくれたので、とても心強かったです。

双極性障害(躁うつ病)・適応障害・20代の復職体験談

通う前は生活リズムが崩れていて、眠れないことが多い日々を送っていましたが、通所をし始め、生活習慣の乱れを改善する「ブレインフィットネスプログラム」を受けることで生活リズムが整っていきました。そして、物事への柔軟性を高める「FITプログラム」では考え方の柔軟さを身に付けることができ、感情に振り回されずに論理的に考えられるようになりました。

職場への復帰の段階では、リワーク活動報告書を職場に提出してもらえたことで、活動の状況をスムーズに把握してもらうことができ、リハビリ勤務につなげることができました。リハビリ勤務期間中は担当支援員の心理師さんに沢山話しを聞いてもらえたことが、心の支えになりました。

最後に

ここまで、精神障害・疾患のある人がリワークプログラムを利用して復職するまでの流れや、復職までの期間、利用料金などについてご紹介してきましたが、いかがでしたか。

復職するまでの期間は疾病の状態によって様々です。復職後に安定して働き続けるためにも、ひとりであせって復職に踏み切るよりは復職支援の専門家のもとでプログラムを受けてみるのがおすすめです。

デイゴー就労支援ナビでは、リワークプログラムのある就労移行支援事業所を、お住いの地域や駅から探すことができますので、ぜひご活用ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事を書いた人

監修者情報:メンタルエイド代表。社会福祉士、精神保健福祉士、ジョブコーチ、心理カウンセラー、幼稚園教諭。就労移行・就労定着支援サービスを行う事業所に12年従事。サービス管理責任者として個別支援計画をはじめ利用者との認知面談を中心にプログラム講師・支援機関連携・クリニック同行・企業開拓・面接同行・応募書類添削・定着支援・新規立ち上げ・スタッフ育成などを行う。120名の障がい者就労の実績があり、面談は1,000人以上。多くの面談実績からオリジナルの上村式認知整理面談技法を発案。

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