就労移行支援の利用期間は何年?期限切れの場合はどうするの?

就労移行支援事業所の利用を迷っている皆さんの中には、「就労移行支援には何年まで通えるの?」や「利用期限が切れて卒業できなかったらどうしよう」といった疑問や不安をお持ちの方もいるかもしれません。

この記事では、就労移行支援事業所を利用できる年数や、期限切れになったときの対処法、利用期間ごとのスケジュールの例などについてご紹介していきます。

目次

就労移行支援事業所の利用期間は何年?

就労移行支援事業所のサービスを利用できる期間は、原則として最大2年(24ヶ月)までとなっています。

就労移行支援は、一般企業への就職を希望する障害のある人が、就職するために必要な知識やスキルを身に付けたり、サポートを受けながら自分にあった職場を探したりすることができるサービスです。それぞれの適性にあった職場に就職するまでの中間ステップと位置付けられているため、利用期間に期限が設けられています。

就労移行支援事業所の平均利用期間は?

就労移行支援事業所には利用期間に期限があることを知ると、「自分は利用期間内に就職できるのだろうか?」と心配になる人もいるかもしれません。事業所によって平均利用期間や就職率などに差がありますので、事業所選びの際にチェックしてみましょう。ここでは、就労移行支援事業所の平均利用期間をご紹介していきます。

就職者の平均利用月数は15.9ヶ月

厚生労働省によると、就労移行支援事業所の利用期間は2年以下が93.5%と最多で、このうち就職者の平均利用月数は『15.9ヶ月』となっています。

(厚生労働省 就労移行支援・就労定着支援に係る報酬・基準についてより作成)

最短だと6ヶ月未満で利用を終了している就職者も

東京都の令和4年度就労移行等実態調査によると、令和3年度の就職者のうち、『6ヶ月以上1年未満』が24.5%と最多、次いで『1年以上1年6ヶ月未満』が23.9%、『1年6ヶ月以上2年未満』が22.3%となっています。

また、『6ヶ月未満』という短期の利用で就職をした利用者も、少数ですが13%ほどいます。

(東京都 令和4年度就労移行等実態調査より作成)

就労移行支援事業所の利用期限が切れたらどうする?

就労移行支援事業所の利用期間内に適性に合った就職先が見つからず、2年間の利用期限が切れてしまった場合にはどうすればいいのでしょうか。いくつか対処法をご紹介していきます。

利用期間の更新・延長を申請する 

2年間の標準利用期間が経過してしまった場合でも、市町村による個別審査で必要性が認められた場合は、最大1年間、利用期間を更新することができます

例えば、北海道札幌市では、利用期間の延長が認められる条件について、以下のように示しています。

ただし、トライアル雇用、精神障がい者ステップアップ雇用、採用を前提とした職場実習中の方等は、当該期間中又は入社までの間に限り延長可能です。

札幌市 就労系サービスに関する手引き(Q&A集)

また、東京都立川市では、標準利用期間を超える更新決定の取り扱いについて、以下のように示しています。

更新時点で、一般就労への具体的な見通しがあること。(採用が内定している、現在、職場実習中である、 今後具体的な職場実習の予定があるなど) 

立川市 標準利用期間を超える更新決定の取り扱いについて

このように、就職への見通しが立っている場合は就労移行支援事業所の利用期間の更新が認められるとしている市町村が多いようです。

他の就労系障害福祉サービスを利用する

就職活動を続けるのが難しい場合は、就労継続支援A・B型事業所のような就労移行支援事業所以外の就労系障害福祉サービスを利用しながら、将来的には一般企業への就職を目指すという選択肢もあります。

就労継続支援A型事業所とB型事業所は雇用契約の有無や一般就労への移行者割合などに違いがあるので、ご自身の状況に応じて事業所を選びましょう。

就労移行支援事業所は2回目の利用ができるの?

厚生労働省は就労移行支援の2回目の利用について明確な規定をしていませんが、一度就労移行支援を利用した人がもう一度利用する事例もあります

就労移行支援サービスの2回目の利用については、市区町村によって個別に判断されることになるため、まずはお住まいの地域の障害福祉課にご相談ください。

就労移行支援事業所の利用期間ごとのスケジュール例

就労移行支援事業所の利用期間や活動内容は人によって様々です。ここでは、利用期間が半年の場合と2年の場合を例として、就職までのスケジュールにどのような違いがあるのか見ていきましょう。

就労移行支援を半年で卒業する場合の例

就労移行支援を半年で卒業したSさんの場合、3ヶ月目までが就職までの準備期間でした。Sさんはスタッフとの面談の結果、就職準備として、就労移行支援事業所への通所による作業訓練と、症状との付き合い方や対処方法を検討することにしました。

3ヶ月目以降は実際に企業への見学や実習を行います。4ヶ月目以降は履歴書の添削や面接の練習、適性に合った職場の開拓などといったスタッフによるサポートを受けながら就職活動を進め、無事に内定を得て6ヶ月目に就労移行支援事業所を卒業することになりました。

就労移行支援を2年(24ヶ月)で卒業する場合の例

就労移行支援を2年(24ヶ月)で卒業したTさんの場合、10ヶ月目までが就職までの準備期間でした。Tさんはスタッフとの面談の結果、まずは施設の雰囲気に慣れること、定期的に通所できるようになることを目標にしました。定期的な通所ができるようになったら、生活リズムの改善や考え方の見直し、仕事での不安や困りごとへの対処方法を検討することにしました。

10ヶ月目以降は、企業見学や実習を何社か行います。実習とそれに対するフィードバックを受けることを何回か繰り返す中で、働くイメージがついてきたTさんは、18ヶ月目以降に本格的に就職活動を開始しました。いくつかの会社に応募しましたが、採用を見据えたインターンの提案を受けた会社の実習と面接を経て、就職が決まりました。

就労移行支援に関するよくある質問

そもそも就労移行支援とは?

就労移行支援事業所とは、一般就労を希望する障害・難病のある人に対し、就職活動を支援する事業所です。長期就労を目指して必要な訓練プログラムを提供し、就職後も継続してサポートします。

就労移行支援と就労継続支援の違いは?

就労移行支援は一般企業への就職を目指して、原則2年間という期間限定で就職活動の支援をする制度です。賃金や工賃は発生しません。

一方で、就労継続支援は一般企業への就職が難しい人に対して働く機会を提供し、作業に対して賃金や工賃を支払う制度です。利用期間の定めはありません。

就労移行支援を利用できる人・対象者は?

就労移行支援事業所は、以下の4つの条件を満たしている人が対象者とされています。

就労移行支援事業所の対象者
  1. 一般就労を希望している
  2. 障害・難病がある
  3. 65歳未満である
  4. 適性に合った職場への就労等が見込まれる

就労移行支援の利用料金はかかるの?

就労移行支援事業所の利用者が負担する料金は、サービス全体にかかった費用のうち1割で、1日あたりおよそ500円〜1,400円です。

ただし、所得に応じてひと月当たりの負担上限金額が決まっているため、自己負担額なしで就労移行支援事業所を利用する人も多いです。

就労移行支援を利用するための手続き・流れは?

就労移行支援を利用するまでの流れは以下のようになっており、手続き方法が分からない場合は、就労移行支援事業所のスタッフがサポートしてくれる場合もあります。

就労移行支援を利用するまでの流れ
  • 就労移行支援を探す
  • 就労移行支援を見学・体験する
  • 障害者手帳や主治医の意見書等を取得する
  • 受給者証を発行する
  • 就労移行支援の利用開始

就労移行支援では給料をもらえるの?

就労移行支援事業所は就労継続支援事業所とは違い、訓練に対して原則給料をもらうことはできません

ただし、一部の就労移行支援事業所では作業に対して工賃を支払っているケースがあります。

休職中でも就労移行支援は利用できるの?

就労移行支援は就職している人は原則対象外ですが、条件を満たせば休職中でも利用が可能です。

休職中の人が就労移行支援に通うことで、復職後の安定した就労を目指すことができます。

最後に

ここまで、就労移行支援事業所を利用できる期間や、期限切れになったときの対処法、利用期間ごとのスケジュールの例などについてご紹介してきましたが、いかがでしたか。

就労移行支援事業所を利用できる期間は原則、2年間と決まっています。2年以内の就職を目指すためには、就職率・障害特性の支援実績・身につくスキルなどの観点から、自分にあった事業所を選ぶことが大切になってくるでしょう。

デイゴー就労支援ナビでは、お近くの就労移行支援事業所の特徴や空き状況などの比較検討を行うことができますので、ぜひご活用ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事を書いた人

デイゴー求人ナビ・就労支援ナビ編集部は、障害や難病のある人が働く上で役立つ情報や、就労移行支援、就労継続支援A型・B型における事業所運営のノウハウを発信しています。就労移行支援事業所の管理者経験者も在籍し、有識者にもご協力いただいています。

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