長い間働いていない人やニートの状態にある人の中には、「就労移行支援を使ったら就職できるの?」や「ニートの人がつかえる就職サポートには何があるの?」、「仕事をしてみたいけど何から手を付けていいのか分からない」といった疑問や悩みを持っている人もいるかもしれません。
この記事では、ニートの状態にある人が就労移行支援を利用して就職するまでの流れや、就労移行支援以外で使える就職のためのサポートなどについて元就労移行支援事業所のスタッフである筆者がご紹介していきます。
就労移行支援事業所はニートの状態にある人も使える?
就労移行支援事業所は、障害や難病がある人に対して就職を支援する機関です。
厚生労働省が定めている就労移行支援事業所の対象者は、「一般就労等を希望し、訓練を通じて適性に合った職場への就労が見込まれる65歳未満の障害者」となっています。
ここで注意することは、「障害者」とは必ずしも障害者手帳を持っている人だけを指すわけではないということです。
適応障害や社交不安障害など何らかの障害や病気によって就職が難しい状態にある人で、医師が記載した診断書や意見書があれば、就労移行支援事業所の対象者として認められることがほとんどです。
つまり、障害や病気のためにニートの状態にあるけれど、これから就職に向けてがんばりたいと思っている人であれば、就労移行支援事業所を利用できる可能性が高いです。
就労移行支援事業所に通っている人向けのアンケート調査によると、事業所に通う前はニートの状態、またはそれに準ずる状態だった人は『14.9%』でした。
ポイント:ニートの状態にある人は、適応障害や社会不安障害、睡眠障害等で医師の診断書がおりることも多いです。
(参考:厚生労働省「就労移行支援事業所について」、「就労系障害福祉サービスの利用者の支援ニーズ等の実態把握等に関する調査」)
ニートの状態にある人とは
厚生労働省は、ニートの定義について「15〜34歳で、非労働力人口(仕事をしていなくて、求職活動もしていない人)のうち家事も通学もしていない人」としています。総務省が実施した2023年の調査によると、ニートの状態にある人は59万人です。
(参考:厚生労働省、総務省統計局 労働力調査(基本集計)2023年(令和5年)平均結果)
ひきこもりの状態にある人も就労移行支援を使える?
「様々な要因の結果として、学校、仕事、交遊などを避けて6ヶ月以上にわたって概ね家にとどまり続けている状態」である、いわゆるひきこもりの人も診断書等があれば就労移行支援を使うことができます。
ご家族の方からの相談や見学を行っている事業所があるほか、まずは在宅での訓練から始める人もいます。
ニートの状態にある人が就労移行支援を利用して就職するまでの流れ
ここからは、ニートの状態にある人が就労移行支援事業所を利用して就職するまでの流れを説明していきます。
ステップ①就労移行支援を探す
就労移行支援事業所は全国各地に多数あります。事業所によって提供している訓練プログラムが違いますので、まずは各事業所のホームページや事業所検索サイトなどを参考にして情報収集をしましょう。気になる就労移行支援事業所を見つけたら、見学に行くのがオススメです。プログラム内容の詳細を聞き、事業所の雰囲気を見てから、実際に通うかどうか検討しましょう。
ステップ②障害者手帳や主治医の意見書等を取得する
就労移行支援事業所の利用対象者は、障害や難病のある人とされているため、障害者手帳または主治医の意見書の取得が必要になります。
「人間関係につまずいてしまう」や「自分でも頑張りたいのに頑張ることができない」といった悩みがある場合は、精神科や心療内科に相談してみるのがおすすめです。医師の判断によっては、意見書を受け取ることができる可能性もあります。
ニートの状態にある理由が障害や病気によるものでなく、障害者手帳や主治医の意見書の取得ができない場合は、地域若者サポートステーションなどの就労移行支援事業所以外の就職のためのサポート機関を利用する人もいます。
※障害者手帳や意見書等がない場合でも、就労移行支援の見学や体験はすることができます。就労移行支援のスタッフが、障害者手帳や意見書等の取得のサポートを行ってくれる場合もあります。
ステップ③就労移行支援の利用手続きを行う
就労移行支援事業所を利用するためには、市区町村で発行される「障害福祉サービス受給者証」が必要となります。
申請書や医師の診断書、障害者手帳(あれば)等の申請に必要な書類を持って、市区町村の窓口に行きましょう。申請してからおよそ1ヶ月前後で受給者証が発行されることが多いです。
受給者証が発行された後に、就労移行支援事業所と契約を結ぶことで、利用が可能となります。
ステップ④就職の準備
就労移行支援事業所では、就職に向けて必要なビジネスマナー、コミュニケーション、パソコンスキルなどの様々なプログラムが用意されています。こうしたプログラムを通して、生活リズムを整えることや社会性を身に付けていくことは、就労移行支援を利用するメリットと言えます。スタッフのサポートを受けながら、自分にとって必要なプログラムを受けて、就職に向けて準備を進めましょう。
ステップ⑤就職活動
就労移行支援事業所のプログラムを受け、精神的にも体力的にも就職に向けての準備が整ってきたら、就職活動を開始します。
就職活動には求人検索、応募書類作成、面接といった過程があります。就労移行支援事業所では、これら全ての過程でサポートが受けられます。
自分に合った仕事がわからない、履歴書の書き方がわからない、といった不安があればスタッフに相談してみてください。
ステップ⑥就職後のサポート
就労移行支援事業所を卒業して就職すると、就職後6ヶ月間継続してサポートが受けられます。就職後に何か困った時は、早めにスタッフに相談しましょう。問題解決のための支援を受けることができます。
就労定着支援サービスがある事業所の場合、就職後最大で3年6ヶ月間のサポートが受けられます。
就労移行支援以外にニートの状態にある人が利用できる就職支援
障害者手帳や主治医の意見書等が取得できない場合でも、ニートの状態にある人が利用できる就労支援はあります。ここでは、就労移行支援事業所以外で利用できる就職のためのサポートをご紹介していきます。
①ハローワーク
ハローワークは、仕事を探している人であれば誰でもサポートを受けることができ、全国に500ヶ所以上設置されています。
ハローワークが行っているのは求人紹介だけではありません。就職活動に関する有益なセミナーの開催や個別での就職相談などを実施しています。
②地域若者サポートステーション
地域若者サポートステーションは、働くことに悩みを抱える15〜49歳までの人に対して就労の支援を行っています。
厚生労働省の委託事業で全国177ヶ所に設置されており、利用料金は原則無料です。
個別面談のほか、ビジネスマナー講座等を開催しています。また、履歴書添削や面接練習、職業体験等、就職活動において幅広く支援が受けられます。
③ジョブカフェ
ジョブカフェは、概ね45歳未満で仕事を探している人に対して、就職に関する様々な困りごとのサポートをしています。就職セミナーや職場体験、キャリアカウンセリング、職業紹介まで、ワンストップの支援を受けることができるのが特徴です。
現在、46の都道府県が若者の就職支援のために設置している施設で、利用料金は無料です。
ジョブカフェの多くは県庁所在地にあり、ハローワークに併設されているところもあります。
就労移行支援に関するよくある質問
最後に
ここまで、ニートの状態にある人が就労移行支援を利用して就職するまでの流れや、就労移行支援以外で使える就職のためのサポートなどについてご紹介してきましたが、いかがでしたか。
就労移行支援事業所は、プログラムの内容から就職するまでの年数、就職先の職種など、事業所によって様々で、中には、生活リズムや健康管理に力を入れているところもあります。利用期間は2年間と決まっているため、ご自身にあった事業所に通って就職を目指すためには、いくつかの事業所を比較検討することが大切になってくるでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。