就労移行支援の選び方の8つのポイントとよくある失敗談

障害や病気があり働くことが難しい方や、休職している方の中には、「就労移行支援事業所に興味があるけど、どうやって選べばいいんだろう?」や「それぞれの就労移行支援事業所にはどんな違いがあるの?」やといった疑問を持っている方もいるかもしれません。

この記事では、就労移行支援事業所の選び方の8つのポイントや、事業所選びでよくある失敗談、事業所を探すための具体的な方法について紹介していきます。

目次

就労移行支援事業所の選び方の8つのポイント

就労移行支援事業所は、一般企業で働くことを希望する障害や難病のある人が、訓練や実習を通して、適性に合った職場への就職や定着を目指すサービスで、利用期間は原則2年間と決められています。

ですから、利用期間内に悔いのないような就職をするためには、ご自身に合った事業所選びをすることが何よりも大切になってくるのではないでしょうか。

ここでは、就労移行支援事業所の選び方の8つのポイントをご紹介していきます。

就労移行支援事業所の選び方の8つのポイント
  1. 就職実績
  2. スタッフの資格や経験
  3. プログラムの内容
  4. 主な支援対象の障害・病気
  5. 駅からの距離・通いやすさ
  6. 交通費や昼食費の補助
  7. 在宅・オンラインでの支援
  8. 就職後の定着支援

ポイント①就職実績

就労移行支援事業所に通う目的は、適性に合った職場へ就職し、できるだけ長く働くことですから、就職実績は事業所を比較する上でも大きなポイントになります。就職実績の中でも、以下のような観点を比較してみるのがおすすめです。

  • 直近数年間で何人の利用者が就職をしているのか
  • どのような職種に就職しているのか
  • 正社員や契約社員などどのような雇用形態で就職しているのか
  • 就職後の職場定着率はどのくらいなのか
  • 事業所を利用した人が就職するまでの平均期間はどのくらいか

ただし、開設して間もない事業所に関しては、就職実績がない場合がほとんどです。

ポイント②スタッフの資格や経験

スタッフの資格や経験は、例えば、社会福祉士の資格を持っている20代のスタッフ、エンジニアとしての現場経験が10年ある30代のスタッフ、心理カウンセラーや臨床心理士の資格を持っている40代のスタッフなど、事業所によって様々です。

見学や体験を通してスタッフの資格や経験、人柄を確認し、「こういう経験を持った人の講座を受けたい」や「このスタッフから訓練を受けたい」と思う事業所を見つけられるといいかもしれません。

ポイント③プログラム・カリキュラムの内容

就労移行支援事業所は、社会人経験がない人にイチからビジネスマナーやPCスキルを教えてくれるところもあれば、ある程度のITに関する知識・経験がある人にプログラミングやWebデザインの技能を教えてくれるところまであり、プログラム内容は様々です。

ホームページや事業所検索サイトなどにある程度プログラムの内容は掲載されていますが、ミスマッチを事前に防ぐためにも、ご自身に合ったレベル感でカリキュラムがあるかどうかを見学や体験の際にスタッフに相談するのがおすすめです。

ポイント④主な支援対象の障害・病気

事業所によっては、「発達障害のある人の支援実績が豊富」や「精神障害や発達障害のある人が多い」など、主な支援対象の障害・病気がある場合もあります。

そういった事業所は、特定の障害や病気に関する理解や困りごとに対する対処法といった知識があるところも多いです。

ポイント⑤駅からの距離・通いやすさ

安定的に就労移行支援事業所へ通っていることが就職活動でのアピールポイントにもなるため、在宅での訓練が主な一部の事業所を除き、週5日の通所を目指す場合が多いです。

ですから、駅からの距離や駐車場の有無など、自宅から事業所までの通いやすさは大事なポイントになってきます。例えば車いすを利用している人の場合、駅にエレベーターが設置されておらず通所できないという場合もあり得るため、一度実際に事業所へ足を運んでみて、通い続けられそうか確かめてみてください。

ポイント⑥交通費や昼食費の補助

就労移行支援事業所に通っている間は、原則アルバイトなどで働くことができません。少しでも利用者の経済的な負担を減らす観点から、交通費の補助や昼食の提供を行っている事業所もあります。

また、交通費や昼食費のほかにも、就職活動で有利になる資格取得費用の補助がある場合もあります。

ポイント⑦在宅・オンラインでの支援

事業所によっては、最初から週5での通所が厳しい場合や体調を崩して通所での訓練が難しい場合、在宅での就職を目指す場合などに、自宅からオンラインで訓練を受けることができるところもあります。

ただし、在宅で支援を受けることができる条件や日数は事業所によって違いがあります。

ポイント⑧就職後の定着支援

就労移行支援事業所では、就職後6ヶ月まではどの事業所でも利用者が職場に定着するための支援を行ってくれます。また、就労移行支援の義務である就職後6ヶ月サポートの後、最大3年間の就労定着支援サービスを行っている事業所もあります。最大3年間の就労定着支援サービスを行っている就労移行支援事業所は、全体のうち52%です(2023年4月)。

定着支援では、就職した企業へ訪問し、企業と利用者をつなぎながら、利用者が安心して働けるようサポートを行ってくれます。就職をすると環境や生活リズム、人間関係が大きく変わりますから、顔なじみの支援員に相談できる環境があると心強いと感じる人は、就労定着支援サービスを行っている事業所を選ぶのが良いかもしれません。

定着支援は所得によっては別途料金がかかる場合もあります。

就労移行支援事業所選びでよくある失敗談

「就労移行支援事業所に通ってみたけれど、自分には合わなかった」というように、事業所選びがうまくいかなかった人も少なくありません。ここでは、就労移行支援事業所を選ぶ際のよくある失敗談をご紹介していきます。

講座・訓練のレベルが合わなかった

プログラムの内容は事前に確認できていたけれど、レベル感が合わなかったという例もあります。

例えばパソコンスキルの場合、パソコンで仕事をしたことがほとんどない初心者にタイピング等の基礎から教えてくれる事業所がある一方で、ある程度のパソコンの知識があることを前提としてカリキュラムが進んでいく場合や、eラーニングや動画を活用した自習のみの場合もあります。

いざ通ってみたらレベルが高すぎた、低すぎたとならないように、事前にご自身の知識や経験を伝えた上で、スタッフに相談してみるのがおすすめです。

事業所の雰囲気が合わなかった

「スタッフとの相性が良くなかった」や「利用者の人数が多くて落ち着かなかった」など、事業所の雰囲気が合わない場合もあります。

若くて明るいスタッフが多い事業所や、女性の利用者の割合が高い事業所、一日あたりの利用者が少ない事業所など、様々な違いがありますので、ぜひ実際に事業所へ足を運んで確かめてみてください。

自宅から事業所へアクセスしにくかった

「自宅から事業所が遠い距離にあって週5で通うのにはきつかった」や「事業所の最寄り駅から事業所までの距離が遠すぎた」など、アクセスの面で通所が厳しくなってしまう場合もあります。

何をもって通いにくいのかは人によって様々ですが、見学や体験のときに事業所へ実際に足を運ぶ際には、駅からの距離や電車の混み具合、電車に乗る時間の長さは問題なさそうかといった観点で、この先通えそうかどうかを判断するのがおすすめです。

失敗しない就労移行支援事業所の選び方・探し方

数ある事業所の中から、通ってみたい就労移行支援事業所の候補を探す方法はいくつかあります。

就労移行支援事業所の探し方
  • インターネットで検索
  • 事業所検索サイトを利用
  • 市区町村の障害福祉担当窓口に相談
  • ハローワークに相談
  • 障害者就業・生活支援センターに相談
  • 相談支援事業所に相談

まずは気になる就労移行支援事業所の見学から!

気になる就労移行支援事業所を見つけたら、まずは問合せをしてみてください。問い合わせをすると、事業所のスタッフが見学や体験の日程調整を行ってくれるほか、事業所を利用するための必要な手続きなどについて説明をしてくれます。

デイゴー就労支援ナビでは、通いたい駅近くの就労移行支援事業所の就職実績や空き状況などを比較検討し、見学の問合せをすることができます。

就労移行支援事業所を選ぶときによくある質問

就労移行支援事業所を利用するまでの流れは?

通いたい就労移行支援事業所を決定する前には、2〜3つの事業所の見学や体験に行き、比較検討することも多いです。

見学・体験をおこなって通いたい事業所が決まったら、利用契約を結び、通所がスタートします。

障害福祉サービス受給者証を持っている場合は、時間をおかずにサービスの利用を開始できますが、受給者証を持っていない場合は市区町村へ受給者証の発行を申請する必要があります。

就労移行支援事業所を利用するまでの流れについては、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。

就労移行支援事業所はどんな人が利用できるの?

就労移行支援事業所は、以下の4つの条件を満たしている人が利用できます。

就労移行支援事業所の対象者
  1. 一般就労を希望している
  2. 障害・難病がある
  3. 65歳未満である
  4. 適性に合った職場への就労等が見込まれる

また、障害者手帳を持っていない場合でも、主治医の意見書等があれば就労移行支援を利用することができます。

就労移行支援事業所は1回いくらの料金がかかるの?

就労移行支援事業所は1回あたりおよそ500円〜1,400円の利用料金がかかります。ただし、所得に応じてひと月当たりの負担上限金額が決まっているため、自己負担額なしで就労移行支援事業所を利用する人も多いです。

厚生労働省によると、障害福祉サービスを利用している人(98.5万人)のうち、約92.7%が無料で利用していることが分かっています。

就労移行支援事業所と就労継続支援事業所の違いは?

就労移行支援事業所と就労継続支援A型・B型事業所の大きな違いは、利用期間と一般企業等への就職率です。

一般企業等へ就職する人の割合は、就労移行支援が『56.3%』、就労継続支援A型が『22.0%』、就労継続支援B型が『10.1%』と、違いは大きいです。※

また、就労移行支援事業所は利用期間が原則2年間となっていますが、就労継続支援事業所は利用期間に制限がありません。

※参考:厚生労働省 「就労移行支援に係る報酬・基準について」より

就労移行支援事業所の利用期間が2年過ぎたらどうなるの?

就労移行支援事業所の利用期間は原則2年間です。ただし、2年間の標準利用期間が経過してしまった場合でも、市町村による個別審査で必要性が認められた場合は、最大1年間、利用期間を更新することができます。

最後に

ここまで、就労移行支援事業所の選び方の8つのポイントや、事業所選びでよくある失敗談、事業所を探す具体的な方法について紹介してきました。

事業所を選ぶ上で大事なポイントは人それぞれですが、これだけは外せないという条件をご自身の中で優先順位をつけた上で、気になる就労移行支援事業所の見学・体験に足を運んでみるのはいかがでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事を書いた人

監修者情報:メンタルエイド代表。社会福祉士、精神保健福祉士、ジョブコーチ、心理カウンセラー、幼稚園教諭。就労移行・就労定着支援サービスを行う事業所に12年従事。サービス管理責任者として個別支援計画をはじめ利用者との認知面談を中心にプログラム講師・支援機関連携・クリニック同行・企業開拓・面接同行・応募書類添削・定着支援・新規立ち上げ・スタッフ育成などを行う。120名の障がい者就労の実績があり、面談は1,000人以上。多くの面談実績からオリジナルの上村式認知整理面談技法を発案。

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