就労移行支援とハローワークの違いは?対象者や料金を詳しく解説!

障害や病気があり働くことが難しい方や、休職している方の中には、「働きたいけれど、ひとりだとなかなか就職活動が進まない」や「就労移行支援とハローワーク、どちらを使えばいいの?違いが分からない」といった疑問を持っている方もいるかもしれません。

この記事では、就労移行支援事業所とハローワークの対象者や料金、利用期間などの違いや、就労移行支援やハローワーク以外に利用できる就職支援などについてご紹介していきます。

この記事の監修者

メンタルエイド代表。サービス管理責任者、社会福祉士、精神保健福祉士、ジョブコーチ、心理カウンセラー、幼稚園教諭。就労移行・就労定着支援サービスを行う事業所に12年従事。120名の障がい者就労の実績があり、面談は1,000人以上。多くの面談実績からオリジナルの上村式認知整理面談技法を発案。

目次

就労移行支援とハローワークの違いは?

就労移行支援とハローワークの大きな違いは、就労移行支援が障害や難病のある人へ向けた障害福祉サービスである一方で、ハローワークは障害の有無や程度に関わらず誰でも利用ができる公共機関である点です。

また就労移行支援では、生活リズムの管理や障害や病気に関する自己理解といった就職の枠にとどまらない支援を受けることができます。

このほかに、両者には年齢制限や利用料金等にも違いがあります。以下の表を見てみましょう。

就労移行支援ハローワーク
対象者一般企業等への就職を希望し、適性に合った職場への就労等が見込まれる障害や難病のある人誰でも
料金0円~37,200円/月(所得によって変動)無料
利用期間・回数原則2年間なし
年齢制限18歳~65歳未満なし
職業訓練ありなし(公共職業訓練等の提携機関への案内やサポートには対応)
就職後の定着サポートありなし
(引用:厚生労働省「障害者の利用者負担」

就労移行支援とハローワークの対象者の違い

就労移行支援の対象者は、主に障害や難病がある65歳未満の人で、かつ一般就労が可能と見込まれる人です。ただし、対象となる障害は事業所によって異なるため、事前の確認が必要です。

一方、ハローワークの対象者は広く、仕事を探している方であれば誰でも利用でき、特定の条件を満たす必要はありません。失業している人や障害のある人はもちろん、就職・転職希望者であれば就職している人でも利用できます。

就労移行支援とハローワークの利用料金の違い

ハローワークは、原則として無料で利用できます。一方就労移行支援施設は、以下の図のように、収入の状況によっては利用料金が発生します。

区分世帯の収入状況負担上限月額
生活保護生活保護受給世帯無料
低所得市町村民税非課税世帯※1無料
一般1市町村民税課税世帯(所得割16万円※2未満)
※入所施設利用者(20歳以上)・グループホーム利用者は除く※3
9,300円
一般2上記以外37,200円
(引用:厚生労働省「障害者の利用者負担」

※1 3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入がおおむね300万円以下の世帯。

※2収入が概ね670万円以下の世帯。

※3入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「一般2」扱い。

就労移行支援の利用料は通所するごとに500~1,200円程度発生しますが、ひと月ごとの自己負担の上限を超えた利用料はかかりません。

こちらの記事では、就労移行支援の料金のほか、通所中の経済的負担を減らす支援制度について詳しくご紹介しています。

就労移行支援とハローワークの利用期間・回数の違い

就労移行支援には原則2年間の利用期間が定められており、2年位内に就職に必要な技術を習得する必要があります。ただし、利用回数には制限がありません。たとえば就労移行支援を利用して就職後、退職をした場合は再度就労移行支援を利用することができます。

ただし、2回目に就労移行支援を利用する場合の利用期間は「24ヶ月-1回目の利用期間」となるため注意が必要です。※

例えば、1回目に5ヶ月通所した場合には、2回目の利用期間は19ヶ月になります。

一方、ハローワークには利用期間や利用回数の制限がありません。ハローワークは、働く希望を持つ若者・女性・高齢者・障害のある人をはじめとする全ての国民のための就職をサポートする機関ですから、必要であれば何度でも利用することができます。また、離職中・在職中にかかわらず、いつでも就職支援を受けることができます。

※市区町村によっては、就労移行支援を利用して就職した場合、利用期間がリセットされ、再度2年間利用できるところもあります。

就労移行支援とハローワークの年齢制限の違い

就労移行支援には利用できる年齢に18歳~64歳まで(65歳未満)という制限があります。ただし、65歳になる誕生日の前日までに利用を始めれば原則として65歳を超えても継続して通うことができます。

一方ハローワークには年齢制限はなく、何歳の人でも利用できます。ハローワークに掲載される求人は「男女雇用機会均等法」や「雇用対策法」などにより、年令や性別を限定してはいけないと定められているからです。ただし、例外によって年齢・性別が定められている求人もあるため、全ての求人に応募できるわけではありません。

就労移行支援とハローワーク以外の就職支援は?

障害のある人が利用できる就職支援は、就労移行支援やハローワークだけではありません。どのような方法があるのかチェックして、自分にあった就労支援を選びましょう。

①地域若者サポートステーション

地域若者サポートステーションは、若者の就労支援を行うための機関です。「サポステ」の愛称で知られており、就労や社会参加に困難を抱える若者を対象にしています。厚生労働省の委託事業として民間企業が運営し、グループワークや職業体験などさまざまな就労支援が受けられます。

対象となる人働くことに不安がある人全般
年齢制限15~49歳まで
利用できる期間定めなし
利用料金無料(一部プログラムは有料)
就労支援の例パソコン講座就活セミナービジネスマナー講座グループワーク など

②障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害や難病のある人が就労や日常生活を安定して送るための支援を行う施設で、全国に337ヶ所設置されています。就労に関する支援だけでなく日常生活へのアドバイスもしてくれるうえ、就職した会社で長く働くためのサポートも受けられます。

生活と就労の両面から支援を受けたい人に向いている期間です。

対象となる人障害や難病のある人
年齢制限15歳以上※地域や事情によって例外あり
利用できる期間定めなし
利用料金無料
就労支援の例就職に向けた準備支援職業実習のあっせん健康管理、金銭管理など生活面へのアドバイス など

③就労継続支援A型事業所

就労継続支援A型事業所は、障害のある人が働くための知識習得や作業訓練を受けられる施設です。実際に就労継続支援A型事業所と雇用契約を結ぶので、社会保険が適用されたり最低賃金が保証されたりといったメリットがあります。

パソコンを使ってのデータ入力やパン製造、配送業務など、事業所によってさまざまな仕事が用意されているのも嬉しい点です。

対象となる人就労支援を利用したものの就職できなかった人特別支援学校の卒業後、就労できなかった人就労経験はあるが、現在は就労していない人
年齢制限~64歳(65歳以上も要件を満たせば利用可能)
利用できる期間定めなし※事業所との雇用契約によっては契約更新の必要あり
利用料金0円~37,200円/月(所得によって変動)
就労支援の例就労機会の提供就労訓練 など

④就労継続支援B型事業所

就労継続支援B型事業所は、障害や難病などによって一般企業への就労が難しい人に向け、作業スキルの習得や社会生活、日常生活スキルの向上などをはかりつつ、生産活動の機会を提供する施設です。

就労継続支援A型事業所との大きな違いは、事業所と雇用契約を結ばない点です。前者は「一般的な就労は難しいものの雇用契約が結べる人」が対象で、就労継続支援B型事業所は「一般的な就労も雇用契約の締結も難しい人」が対象といえます。

また18歳以上という年齢制限はあるものの年齢の上限はありません。

対象となる人障害や難病により、雇用契約の締結が困難な人
年齢制限原則18歳以上
(18歳未満の場合、児童相談所長の意見書が必要)
利用できる期間定めなし
利用料金0円~37,200円/月(所得によって変動)
就労支援の例就労機会の提供就労訓練 など

⑤障害のある人の就労に特化した就職サイト・就職エージェント

障害のある人が就職を目指すにあたって、就職サイトや就職エージェントを利用する方法もあります。障害のある人に特化した就職サイト・就職エージェントは、障害の種別や症状に応じてよって求人が探しやすかったり、障害のある人の就労に精通したエージェントからのサポートを受けられたりします。

一般的には自分で求人を探すサービスが「就職サイト」、専任のエージェントがサポートをしてくれるのが「就職エージェント」です。

さまざまな事業者があり独自の強みを持っているので、いくつかのサービスを比較検討してみましょう。

対象となる人求職者全般
年齢制限サービスにより異なる
利用できる期間サービスにより異なる
利用料金サービスにより異なるが無料のものが多い
就労支援の例求人情報の提供履歴書作成や面接のサポート適した仕事の紹介 など

就労移行支援とハローワークのどちらを利用すればいいの?

ここまで就労移行支援とハローワークの違いについて解説しました。ここからは就労移行支援施設とハローワークのどちらを利用すべきか迷っている人に向け、それぞれおすすめの人を解説します。

就労移行支援とハローワークの併用もできるので、スキルや知識が習得できれば両方を利用するのもおすすめです。

就労移行支援がおすすめなのはこんな人

就労移行支援がおすすめの人の特徴を、以下にまとめました。

  • 就職のためのスキルを身に付けたい人
  • 就職活動の前にまずは生活リズムを整えたり体調管理の方法を身に付けたりしたい人
  • 就労に関する悩みを相談したい人
  • 自分自身の理解を深めたい人
  • 見学、職業体験などを通じて職場への理解を深めたい人、障害があって就職活動が不安な人

なんらかの障害のため就職や転職への一歩が踏み出せない人や、何度も就職活動に失敗してきた人にとって、就労移行支援のサービスは心強い味方です。

就労に必要な技術を習得したい人や、自分にどんな仕事が適しているのかわからない人にも就労移行支援の利用がおすすめといえます。

とはいえ、就労移行支援が提供するサービスが利用者の目的や希望と合っていなければ、思ったような成果が得られない場合もあります。就労移行支援を利用する前に、どのような支援が受けられるのかをチェックしましょう。

ハローワークがおすすめなのはこんな人

つづいては、ハローワークの利用がおすすめの人の特徴をご紹介します。

  • すぐに就職活動を始められる人
  • 無料で就職活動をしたい人
  • 職業適性検査を活用したい人
  • ハローワークの職員に面接に同行してもらいたい人
  • どんな求人があるのかまずは見てみたい人
  • 就労移行支援の利用対象者ではない人

就労移行支援は、収入状況によっては月々の利用料が発生します。一方ハローワークは厚生労働省が管轄する機関で、利用料はかかりません。職業適性検査も無料で受けられるので、費用をかけたくない人におすすめです。

また障害のある人にむけた専門の窓口もあり、ハローワークの職員が面接に同行してくれたり、就労後のサポートを受けられたりといった心強いサポートもあります。

就労移行支援事業所のおすすめの選び方

数ある事業所の中から、通ってみたい就労移行支援事業所の候補を探す方法はいくつかあります。

就労移行支援事業所の探し方
  • インターネットで検索
  • 事業所検索サイトを利用
  • 市区町村の障害福祉担当窓口に相談
  • ハローワークに相談
  • 障害者就業・生活支援センターに相談
  • 相談支援事業所に相談

就労移行支援事業所を検索できるサービスの活用も方法の1つで、「デイゴー就労支援ナビ」では、最寄り駅や障害の種類など細かい条件を設定して就労移行支援事業所を探せるほか、各事業所の空き状況や特徴なども比較できます。

最後に

今回は就労移行支援とハローワークに焦点を当て、両者の違いやそれぞれの特徴などを解説しました。

就労移行支援とハローワークの大きな違いとして、対象者が挙げられます。就労移行支援が障害のある人が対象である一方、ハローワークは障害の有無にかかわらず仕事を探している人全般が対象です。

また、就労移行支援には利用機関や年齢に一定の制限がありますが、ハローワークにはこうした制限はありません。

デイゴー就労支援ナビでは、お住まいの地域や駅から就労移行支援事業所を検索し、就職実績や交通費・昼食サポートの有無などで事業所を比較検討することができますので、ぜひご活用ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事を書いた人

就労継続支援B型事業所で職業指導員として勤務経験がある。そのほか、宿泊施設や工場、Webライターなどの仕事に従事。現在はフリーランスのWebライターとして活動中。

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