就労移行支援で「いじめ」に遭遇したら?元支援員が実態と対処法を解説

就労移行支援の利用を検討している皆さんの中には、「就労移行支援事業所で人間関係のトラブルがあったら、ましてや『いじめ』や『ハラスメント』に遭遇したらどうしよう」という不安がある人もいるかもしれません。

この記事では、就労移行支援事業所の元支援員である筆者が、就労移行支援事業所で「いじめ」や「ハラスメント」に遭遇したときの対処法や相談先、問題のある事業所を選ばないためのポイントを解説していきます。

この記事の監修者

メンタルエイド代表。サービス管理責任者、社会福祉士、精神保健福祉士、ジョブコーチ、心理カウンセラー、幼稚園教諭。就労移行・就労定着支援サービスを行う事業所に12年従事。120名の障がい者就労の実績があり、面談は1,000人以上。多くの面談実績からオリジナルの上村式認知整理面談技法を発案。

目次

就労移行支援で「いじめ」に遭遇するケースはある?

多くの就労移行支援は、「いじめ」を防ぐためにスタッフが様々な配慮を行っています。

しかし一部の事業所では、スタッフの配慮が届かない部分で稀に「いじめ」のような問題が発生することもあります。

また、スタッフから威圧的な態度を取られるなど、ハラスメントを受けるケースもあります。

ここでは、利用者同士やスタッフとの間で発生する「いじめ」やハラスメントについて、それぞれの例を挙げ、原因を説明します。

利用者の例

就労移行支援には、年齢層や障害特性が違う人が通っています。社会人経験の有無も違います。

この違いが、いじめの要因となることがあります。例えば、次のようなケースが挙げられます。

  • 社会人経験が豊富な利用者が、経験の浅い利用者に「そんなことも知らないのか」と見下すような発言をする
  • 他の利用者に「あいつは何も知らない。就職なんてできるわけない」と陰口をいわれる
  • 「やってみろよ」とわざと難しい役割を与えられ、失敗を期待される

スタッフの例 

就労移行支援のスタッフは、利用者の就職活動をサポートする役割を持っています。

しかし、利用者の体調や状況によって就職活動が進められないとスタッフが判断した時に、就職活動をストップするようなアドバイスをすることがあります。

これらのアドバイス中に、「ハラスメント」と受け止められるのは、以下のような態度や発言が挙げられます。

  • 就職活動をしたいとスタッフに申し出たら「今のあなたにできるわけがないでしょう」と取り合ってくれなかった
  • 希望職種を伝えたら「それは、あなたにできる仕事ではない」といわれた
  • 苦手な作業を割り当てられたので「この作業はできない」と申し出たところ、「あなたのためだから」と無理やり続けさせられた。

就労移行支援で「いじめ」やハラスメントを受けた時の対処法

就労移行支援で「いじめ」や「ハラスメント」を受けていると感じた時には、一人で抱えないことが重要です。

信頼できる人や支援機関に相談しましょう。相談の方法や窓口について、例を挙げます。

利用者の「いじめ」に対処する方法

まずは、事業所内の信頼できるスタッフに相談しましょう。

スタッフはいじめに気づいていないことが多いため、あなたがいじめと感じた事実をしっかりと伝えることが大切です。

事実がうまく伝わるように、事前に整理しておくことをおすすめします。

相談の前にしておくこと
  • いつ、どこで、誰に、どのようなことをされたかをメモしておく
  • LINEなどのやりとりがあれば、それを保存する

相談しても改善されない場合は、すぐに事業所外の相談窓口に連絡しましょう。

事業所外の苦情の窓口は「市区町村における障害福祉の担当課」です。

市区町村に窓口がない場合、もしくは市区町村に相談してもトラブルが解決しない場合は、各都道府県に設置している「運営適正化委員会」が窓口になります。

相談先
  • 事業所内のスタッフ
  • 市区町村の障害福祉の担当課
  • 運営適正化委員会

スタッフの「いじめ」・ハラスメントに対処する方法

スタッフの対応に対する苦情窓口は、事業所内の「相談窓口」に相談しましょう。契約時に手渡された重要事項説明書に記載があります。

相談窓口の担当者は、多くの場合は施設長やサービス管理責任者になっています。不適切な対応をした該当スタッフに対して指導し、改善を図ってくれるでしょう。

事業所内の人にはいいにくい、もしくは相談したけど解決しなかった場合は、すぐに事業所外の相談窓口に相談してください。

前項と同じように、「市区町村における障害福祉の担当課」もしくは「運営適正化委員会」が窓口になります。また、相談支援専門員も事業所と利用者の間に立って問題解決を図ってくれる相談先です。

相談先
  • 重要事項説明書に記載の苦情相談窓口
  • 市区町村の障害福祉の担当課
  • 運営適正化委員会
  • 担当の相談支援専門員

就労移行支援事業所を変更する方法

ここまで、いじめやハラスメントに対する対処法を説明しましたが、どうしても解決ができない場合は、就労移行支援の事業所を変更する選択肢もあります。

ただし、利用期間には注意が必要です。就労移行支援が利用できるのは、原則で最大2年間で、事業所が変わっても利用期間は通算されます。つまり、今の就労移行に1年間通ったのであれば、新しい事業所で通える期間は1年間です。

就労移行支援を変更する流れは以下のとおりです。

就労移行支援事業所を変更する方法
  1. 新しく通う就労移行支援を探す
  2. 現在の就労移行支援に退所することを伝え、退所日を決める
  3. 市区町村に連絡する
  4. 退所日に退所手続きをする
  5. 計画相談支援事業所またはセルフプランによる支援計画の作成をする
  6. 新しく通う就労移行支援と契約をする

新しく通う就労移行支援を探す

【事業所選びのポイント】

  • 相談の際には必ず残りの利用期間を伝えましょう。残りの期間が短いと対応できないこともあります。
  • 利用者の雰囲気や距離感について質問してみるといいでしょう。プログラム以外で利用者同士の交流が少ないほうが、トラブルは減る傾向にあります。
  • スタッフの対応に違和感がないか、しっかりと見極めましょう。疑問に感じたことは遠慮なく聞きましょう。

現在の就労移行支援に退所することを伝え、退所日を決める

退所の意向を伝えてから退所する日までの期間は、事業所ごとによって違います。

契約書に記載がありますので、確認しましょう。

市区町村に連絡する

受給者証発行の窓口に、就労移行支援を変更する旨を伝えましょう。

その後の対応は市区町村によって異なります。

退所日に退所手続きをする

事前に指定された書類を持って事業所に行きます。

退所手続きは難しいものではなく、その日のうちに手続きを済ませることができます。

事業所に行きたくない場合は郵送での対応も可能なことがあるので、スタッフに相談しましょう。

新しく通う就労移行支援と契約をする

新しい就労移行支援と契約を結んで、通所を開始します。

ご自身にあった就労移行支援事業所の選び方

見学だけではいじめやハラスメントなどの問題がある就労移行支援事業所を見分けることは難しいかもしれませんが、以下のポイントを見て、少しでも雰囲気がいい事業所を選びましょう。

  • スタッフの雰囲気が明るく、利用者に対して積極的に話しかけている
  • 利用者同士がいい距離感で関わっており、表情がいい
  • 快適な環境を提供するためにスタッフが努力しており、事業所内がきれいに保たれている

最後に

ここまで、就労移行支援事業所の元支援員である筆者が、就労移行支援事業所で「いじめ」や「ハラスメント」に遭遇したときの対処法や相談先、問題のある事業所を選ばないためのポイントを解説してきましたが、いかがでしたか。

人間関係に問題がある事業所を避けるために、この記事でご紹介した自分にあった就労移行支援事業所を選ぶためのポイントも参考にしつつ、見学・体験をしてみてください。また、万が一、通う中で違和感がある場合は、市区町村の障害福祉課や相談支援専門員等の外部の機関に相談をしてみましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事を書いた人

社会福祉士。総合病院で医療ソーシャルワーカーとして8年間勤務した後に、就労移行支援事業所で12年間勤務。サービス管理責任者、生活支援員、職業支援員を担当。就労移行支援事業所では発達障害のある人を中心に約300人の支援に携わってきた。

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