統合失調症の人がリワークプログラムで復職する流れや体験談をご紹介!

統合失調症を発症して休職中の人の中には、「リワークプログラムを受けるメリットは何?」や「社会復帰支援プログラムを受けたら、復職できるの?」といった疑問をお持ちの方もいるかもしれません。

この記事では、統合失調症の人がリワークプログラムを受けるメリットや、リワークプログラムの種類、リワークプログラムを利用して復職するまでの流れや体験談をご紹介していきます。

この記事の監修者

メンタルエイド代表。サービス管理責任者、社会福祉士、精神保健福祉士、ジョブコーチ、心理カウンセラー、幼稚園教諭。就労移行・就労定着支援サービスを行う事業所に12年従事。120名の障がい者就労の実績があり、面談は1,000人以上。多くの面談実績からオリジナルの上村式認知整理面談技法を発案。

目次

統合失調症の人が復職を目指すリワークプログラムとは?

リワークプログラムとは、統合失調症などの精神疾患によって休職している人が、心と身体のリハビリテーションを行うことを言います。休職によって乱れてしまった生活サイクルを整え、会社へ通勤するイメージを掴みやすくし、社会復帰を目指すのが目標です。

統合失調症で働いている人や休職している人はどのくらい?休職期間は?

統合失調症は、100人に1人の割合で発症すると言われている疾患です。2023(令和5 )年に厚生労働省が行った調査によると、精神障害のある人で企業に雇用されているのは推定約21万5千人で、このうち統合失調症の人は約12%で推定2万6,230人となっています。

一方で、精神障害があり企業に雇用されている人の中で1ヶ月以上休職している人の割合は、約6%と、体調を崩し、休職を余儀なくされるケースも少なくないことが分かっています。

休職期間は人によって異なりますが、一度休職すると長期的な治療が必要になるため、医師と相談した上で期間を決めることが多いとされています。

統合失調症の人の症状とリワークプログラムを受けるメリット

統合失調症は、妄想や幻覚症状によってまわりの人から悪口を言われているように感じたり、考えがまとまらず一貫性のない思考に悩まされたりするという特徴があります。

また、楽しさや嬉しさなどの感情が湧きにくく、人の感情に共感することが苦手です。意欲も低下し、引きこもりがちになったり、入浴や食事といった普段の生活で必要な行為もできなくなったりするケースも多いです。

さらに、判断力の低下や集中力の低下によって、作業を覚えるのに時間がかかったり、ミスが増えたりすることもあります。

このような特徴を持つ統合失調症の人は、まわりの人と同じように仕事をこなすのは非常に負担が大きく、体調を崩しやすくなってしまう可能性が高いのです。

リワークプログラムは、休職をしてしまうケースが多い統合失調症の人が、時間をかけて社会復帰できるように、     リハビリテーションを行います。そのため、復職後の再休職を防ぎ、自分の特性を理解しながらストレスへの耐性を身につけられるというメリットがあります。

統合失調症の人が利用できるリワークプログラムの種類

統合失調症の人が利用できるリワークプログラムは、医療機関によるリワークや就労移行支援のリワーク、地域障害者職業センターによるリワークや企業が独自に行うリワークの4種類に大きく分かれています。

医療リワーク就労移行支援リワーク職業センターリワーク企業リワーク
実施機関医療機関就労移行支援事業所障害者職業センター企業
対象休職者休職者休職者と事業主休職者

統合失調症の人が利用できるリワークプログラムの内容

ここでは、「医療機関によるリワークの内容」と「就労移行支援によるリワークの内容」について紹介していきます。

医療機関によるリワークの内容

医療機関によるリワークは、プログラムを通して復職後の再休職の予防を最終目標として行われ、休職を余儀なくされた病状の回復と安定を目指します。

プログラムは、復職支援に特化した内容となっており、診療報酬上の枠組み(精神科デイケア・精神科ショートケア・精神科デイ・ナイトケア・精神科作業療法・通院集団精神療法など)の中で、医師や看護師、精神保健福祉士や作業療法士、心理士など多職種による医学的なリハビリテーションが行われます。

費用の一部負担はあるものの、健康保険制度や自立支援医療制度も利用できます。

就労移行支援によるリワークの内容

就労移行支援によるリワークは、事業所によって内容は異なりますが、生活リズムを整えたり、不調の原因を明らかにしたうえで対策を考えたりするプログラムを行います。

就労に向けた生活面での相談にも乗ってもらえるほか、復職後に最大3年間の定着支援サービスを行っている事業所もあるため、仕事に追われて体調を崩しやすい統合失調症の人でも、復職後の再休職を防ぐことが可能です。

また、就労移行支援によるリワークでは、統合失調症だけでなく身体障害のある人などに対しても、復職をサポートする体制が整っています。

統合失調症の人が利用できるリワークプログラムの料金

医療機関におけるリワークでは健康保険が適用されるため、利用料金は3割負担になります。さらに、自立支援医療を利用すれば原則的に1割負担でプログラムを受けることができます。そのほか、低所得世帯の方や、一定負担能力があっても継続的に相当額の医療費負担が生じる方々については、1月あたりの自己負担に上限額が設定される負担軽減策があります。(例:市町村民税非課税世帯であって受給者の収入が80万円より上の場合の上限月額は5,000円)。

一方、就労移行支援によるリワークは、所得によっては利用料が無料になる場合もあります。ただし、前年度の世帯収入が300万円〜670万円以下の人は月額の自己負担の上限が9,300円、前年度の世帯収入が670万円を超える人は、月額の自己負担の上限が37,200円になります。

医療機関によるリワーク就労移行支援によるリワーク
費用3割負担1割負担(自立支援医療利用の場合)無料(生活保護世帯、世帯収入300万以下)9,300円(世帯収入が300万~670万以下)37,200円(上記以外の世帯)

統合失調症の人のリワークプログラムの利用期間

医療機関によるリワークでは、平均3ヶ月〜7ヶ月の利用期間になります。しかし、休職中の病状の度合いによって、短い人だと数週間、長い人だと年単位で利用するケースもあります。

一方、就労移行支援によるリワークでは、平均半年〜1年の利用期間で復職をしていくケースが多いとされています。ただし、就労移行支援は原則的に2年の利用が可能なので、時間をかけて復職を目指すこともできるでしょう。

統合失調症の人がリワークを利用して復職をするまでの流れ

ここからは、統合失調症の人が就労移行支援のリワークを利用して復職をするまでの流れを説明していきます。

統合失調症の人がリワークを利用して復職するまでの流れ
  1. 主治医と会社への相談
  2. リワークを行っている就労移行支援を見学・体験
  3. リワークを行っている就労移行支援の利用申請
  4. リワークプログラム開始
  5. 復職へ

ステップ①主治医と会社への相談

職場への復職を考え始めたら、最初のステップとして、病状を把握している主治医にリワークの利用について相談し、意見書をもらいましょう。

就労移行支援のリワークを受ける場合は、「医療では対応できない福祉的サービスを受ける必要がある」や「生活リズムを整えるために通所訓練が必要である」、「人と接する機会を増やす」など、就労移行支援のリワークでなければならない旨を記載してもらいます。

また、主治医からの意見書のほかに、リワークプログラムを受けるためには休職中の会社からの許可が原則必要になります。

ステップ②リワークを行っている就労移行支援を見学・体験

次に、リワークを実施している就労移行支援事業所に、インターネットや電話などで見学の予約をします。

主治医からの診断書や障害者手帳などを持っていない場合でも見学をすることができますから、気になる事業所があれば気軽に連絡をしてみてください。

見学では、施設内の雰囲気を見たり、リワークの内容の説明を受けたりするほか、休職に至った経緯などもヒアリングが行われます。希望によっては、見学のあとに体験通所ができる事業所もあります。

ステップ③リワークを行っている就労移行支援の利用申請

見学や体験を通して、実際に就労移行支援のリワークの利用をしたい場合は、市町村の窓口に「障害福祉サービス受給者証」の申し込みをしましょう。受給者証は、就労移行支援を利用するために必要な証書で、申請からおよそ1ヶ月程度で発行されることが多いです。

受給者証が発行されたら、就労移行支援事業所と利用契約を結ぶことで、リワークプログラムに参加することができるようになります。

ステップ④リワークプログラム開始

実際にリワークプログラムが開始されると、「オフィスワーク(個人作業)」や「グループワーク」、「ミーティング」、「内省(休職原因の振り返り)」、「認知行動療法」、「軽スポーツ」、「作業療法」など、一人ひとりの希望や状態に合わせて、毎日規則正しいプログラムを進めることになります。

ステップ⑤復職へ

施設でのリワークプログラムと並行し、復職の為の訓練として会社までの通勤訓練や週1日会社で昼休憩を過ごすなどの訓練も行うことがあります。また復職時は主治医や産業医の診断書が必要になるケースがほとんどですから、復職の準備ができているかどうかを主治医と話し合い、許可をもらいましょう。もちろん、ご自身で病状の理解ができていることは多いですが、第三者の視点で復職の判断をしてもらうことが大切です。

また、本人が希望する場合は就労移行支援事業所のスタッフが復職の意思を企業に伝えてくれたり、復職後の労働時間や日数などの交渉に応じてくれたりするケースもあります。自分ひとりでは企業に言いにくいという人は、ぜひスタッフに相談してみましょう。

すべてのプログラムを修了し、復職の予定が決まれば退所になります。

精神障害がある人が就労移行支援を利用して復職した事例

最後に、統合失調症等の精神障害がある人が就労移行支援を利用し、復職した事例を紹介します。自分の症状や希望などと照らし合わせながら、参考にしてください。

精神障害で復職した人の体験談①(50代)

職場の上司との関係悪化から体調を崩しました。職場からも足が遠のいており次の道を考えていた時、就労移行支援施設に通所を始めました。週に1回の面談や日々のコミュニケーションを通して会社に無理なく復帰できるようにサポートをしていただきました。無事に復職してからも仕事の悩みなどを聞いてもらいストレスなく働くことができています。

精神障害で復職した人の体験談②(50代)

去年の冬から通所開始。こぢんまりとして落ち着いた雰囲気が気に入ったのと、スタッフの方々の人柄と雰囲気が自分には合っていると思い、体験通所を経て通所することを決めました。

通所以前は休職を何回か繰り返しており、どうやったら継続して働いていけるかを目的に色々模索している中、家族に勧められて就労移行支援施設という存在を知り、自分で考えていることの手詰まり感もあって、利用しようと思いました。

通所を始めてからは、プログラムの心理教育やSSTによって、自分の思考を“見える化”して、自分の精神的な部分の最適化につなげることが出来た事が大きかったです。

また、ワークトレーニングでは、自分の働き方の強み、弱みを知って、改善につなげられたことも良かったです。

スタッフの皆さんや他の通所者さんとの交流もどこか家庭的な雰囲気もあり、必要な知識・技術を習得しながら、学校とはまた違う環境の中で学べる、とてもアットホームな施設です。

最後に

ここまで、統合失調症の人がリワークプログラムを受けるメリットや、リワークプログラムの種類、リワークプログラムを利用して復職するまでの流れや体験談をご紹介してきましたが、いかがでしたか。

休職中に「早く復職しなきゃ」といった焦りを感じている人も少なくないでしょう。復職後に安定的に働くためにも、ぜひ主治医と相談の上で、ご自身の状態や希望に合わせたリワークプログラムを選んでみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事を書いた人

心理カウンセラー、精神保健福祉士、社会福祉士。大学卒業後、カウンセリングセンターにて、メンタルヘルスに関する講座やセミナーの講師、 個人カウンセリングに携わる。その後、精神科病院でソーシャルワーカー兼カウンセラーとして患者様やご家族のカウンセリング、助言や相談などの仕事に従事。

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