就労継続支援B型で工賃をアップするには?工賃向上計画や平均工賃月額の算定方法も紹介

就労継続支援B型支援事業所の経営者・サービス管理責任者・管理者のみなさまの中には、「就労継続支援B型で工賃をアップするためにはどうすればいいの?」や「平均工賃月額の計算方法は?」、「工賃向上計画の内容は?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、就労継続支援B型事業所が工賃をアップするために生産活動収入を増やす方法や生産活動にかかる経費を減らす方法、平均工賃月額の算定方法についてご紹介していきます。

目次

就労継続支援B型の工賃アップは収益増加につながる

就労継続支援B型支援事業所の基本報酬は、「①平均工賃月額に応じた報酬体系」と「②利用者の就労や生産活動等への参加等をもって一律に評価する報酬体系」の2種類があります。

2024年度(令和6年度)の障害福祉サービス等報酬改定では、「①平均工賃月額に応じた報酬体系」について、平均工賃月額が高い区分の基本報酬の単価が引き上げられ、反対に低い区分の基本報酬の単価は引き下げられました

このように、就労継続支援B型支援事業所にとって平均工賃月額をアップさせることは、収益増加のためにも大切なポイントとなっています。

就労継続支援B型の平均工賃はいくら?

就労継続支援B型事業所の2022年度における平均工賃は月額で『17,031円』と、11年間でおよそ『1.2倍』に増えています。

(厚生労働省 令和4年度工賃(賃金)の実績についてより作成) 

就労継続支援B型事業所の平均工賃月額の新たな算定方法

2024年度(令和6年度)の障害福祉サービス等報酬改定では、より公正な評価を実現するために、就労継続支援B型事業所の平均工賃月額の算定方法が見直されました

事業所の1日あたりの平均利用者数を用いる新たな算定方法は以下のようになっています。

就労継続支援B型における前年度の平均工賃月額の算定方法
  1. 前年度の工賃支払総額を算出
  2. 前年度の開所日1日当たりの平均利用者数を算出(前年度の延べ利用者数÷前年度の年間開所日数)
  3. 前年度における工賃支払総額÷前年度における開所日1日当たりの平均利用者数÷12月により、1人あたりの平均工賃月額を算出

就労継続支援B型事業所の平均工賃月額の算定方法の注意点(Q&Aより)

新たな平均工賃月額の算定方法について、厚生労働省は令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.2で以下のような解釈を示しています。

  • 開所日数については、原則として、工賃の支払いが生じる生産活動の実施日を開所日数として含めていただき、レクリエーションや行事等生産活動を目的としていない日に関しては開所日として数えない。ただし、地域のバザー等の行事で利用者が作成した生産品等を販売した場合に関しては、開所日として算定して差し支えない。 
  • 「前年度における開所日1日あたりの平均利用者数」の小数点の取扱については、小数点第1位までを算出する。小数点第2位以降もある場合は小数点第2位を四捨五入する。(例:14.679人の場合⇒14.7人)
  • 平均工賃月額の小数点については、円未満を四捨五入する

就労継続支援B型事業所の工賃向上計画とは

就労継続支援B型事業所の工賃向上計画は、障害のある人が地域で自立した生活を送る基盤として工賃の水準を向上させるために、2012年度(平成24年度)以降、3年ごとに策定することが求められてきました。

2024年(令和6年)年3月29日の厚生労働省の通知では、「「工賃向上計画」を推進するための基本的な指針」が一部改正され、2024年度(令和6年度)から2026年度(令和8年度)までの工賃向上計画作成についての基本的な指針が示されました

この指針では「都道府県工賃向上計画」と「事業所工賃向上計画」について説明されているため、ここからは事業所工賃向上計画について説明していきます。

事業所工賃向上計画に盛り込む項目

事業所工賃向上計画に盛り込む基本的な項目は以下の3つです。

  1. 令和8年度までの各年度の目標工賃月額 
  2. 令和8年度までの各年度に取り組む具体的方策 
  3. その他の事項

事業所工賃向上計画の様式は都道府県によって異なりますが、例えば広島県の場合、

  • 事業所基礎情報(事業所番号、法人名等)
  • 作成者情報(管理者、担当者等)
  • 目標工賃月額の設定
  • 各年度ごとの目標工賃月額
  • 収支計画
  • 就労(生産)活動の内容
  • 就労(生産)活動の現状、課題、具体的な取組方策
  • 利用者の状況

を記載することになっています。

事業所工賃向上計画の作成時期

就労継続支援B型事業所は、2024年(令和6年)5月末までに、事業所工賃向上計画を策定し、各都道府県あてに提出する必要があります

事業所工賃向上計画を2024年4月に作成していない場合は、平均工賃月額に応じた報酬体系で人員配置6:1のイの就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)、人員配置が7.5:1のロの就労継続支援B型サービス費(Ⅱ)および人員配置が10:1のハの就労継続支援B型サービス費(Ⅲ)を算定することはできません。

就労継続支援B型事業所の工賃の計算方法

就労継続支援B型事業所は、生産活動収入から生産活動にかかる経費をひいた額を利用者に工賃として支払わなければなりません。

[生産活動収入]-[生産活動に係る経費] = [利用者に支払う賃金・工賃]

というのも、就労継続支援B型の運営基準で以下のように定められているためです。

(工賃の支払等)

第二百一条 指定就労継続支援B型の事業を行う者(以下「指定就労継続支援B型事業者」という。)は、利用者に、生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払わなければならない。

(引用:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準

生産活動によって余剰金がでた場合は、全て工賃として支払うこととされているため、生産活動の余剰金は原則として発生しません。

ですが、将来にわたって安定的に工賃を支給するためまたは安定的かつ円滑に事業を継続するために、一定の条件のもとに積立金を計上することが認められており、その年度に積み立てた金額までは、生産活動の余剰金が発生してもよいこととされています。

(参考:令和3年度 厚生労働省障害者総合福祉推進事業「就労支援事業会計の運用ガイドライン」)

就労継続支援B型で工賃をアップさせるための具体的な方法

就労継続支援B型事業所で工賃をアップさせるためには、生産活動収入を増やし、生産活動に係る経費を減らす必要があります

ここからは、生産活動収入を増やす方法と生産活動に係る経費を減らす方法をそれぞれご紹介していきます。

就労継続支援B型事業所で生産活動収入を増やす方法

就労継続支援B型事業所で生産活動収入を増やすためには、以下のような方法が考えられます。

就労継続支援B型事業所で生産活動収入を増やす方法
  • 販路を増やす(インターネット販売、イベント販売、小売店販売、幼稚園や介護施設等の大口の販路の開拓)
  • 生産力を向上させる(設備更新、作業訓練、勤労時間の拡大)
  • 共同受注窓口に参加する
  • 単価を見直す(請負・受託先の企業との価格交渉、競合を調査した上で価格改定)
  • 地域の企業や商工会議所、商店街と連携して取引先を増やす
  • 利益率の高い事業を拡大する

就労継続支援B型事業所で生産活動に係る経費を減らす方法

就労継続支援B型事業所で生産活動に係る経費を減らすためには、以下のような方法が考えられます。

就労継続支援B型事業所で生産活動に係る経費を減らす方法
  • 廃棄が多い商品を見直す、日持ちする商品を開発する
  • 固定費を見直す(家賃、光熱費、通信費)
  • 材料や包材の仕入れ先を見直す
  • 機材等のリース・レンタルを見直す
  • ペーパーレス化をすすめる

最後に

ここまで、就労継続支援B型事業所が工賃をアップするために生産活動収入を増やす方法や生産活動に係る経費を減らす方法、平均工賃月額の算定方法についてご紹介してきましたが、いかがでしたか。

就労継続支援B型事業所では平均工賃月額をアップさせると基本報酬が上がる仕組みとなっており、工賃の高さは利用者の確保にもつながります。この記事でご紹介した内容が皆様の事業所における工賃向上のお役に立てば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事を書いた人

監修者情報:メンタルエイド代表。社会福祉士、精神保健福祉士、ジョブコーチ、心理カウンセラー、幼稚園教諭。就労移行・就労定着支援サービスを行う事業所に12年従事。サービス管理責任者として個別支援計画をはじめ利用者との認知面談を中心にプログラム講師・支援機関連携・クリニック同行・企業開拓・面接同行・応募書類添削・定着支援・新規立ち上げ・スタッフ育成などを行う。120名の障がい者就労の実績があり、面談は1,000人以上。多くの面談実績からオリジナルの上村式認知整理面談技法を発案。

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