障害があるために長い間働いていない方や休職している方などで、「就労移行支援と就労継続支援A型・B型の違いが分からない」や「就労移行支援事業所と就労継続支援事業所は併用できるの?」といった疑問をお持ちの方もいるかもしれません。
そのような皆さんに向けて、この記事では、就労移行支援事業所と就労継続支援A・B型事業所の対象者や賃金の有無等の違いや、どんな人にどのサービスが向いているのかなどについてご紹介していきます。
就労移行支援と就労継続支援A・B型の違い
就労移行支援事業所と就労継続支援A型事業所、就労継続支援B型事業所には、対象者、雇用契約の有無、賃金の有無、利用期間などに違いがあります。
まずは、これらの違いを以下の表で確認してみましょう。
就労移行支援 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
---|---|---|---|
対象者 | 一般企業等への就職を希望し、適性に合った職場への就労等が見込まれる障害のある人 | 通常の事業所へ雇用されるのが困難で、適切な支援があれば雇用契約に基づく就労が可能な障害のある人 | 就労移行支援等を利用したが一般就労へ結びつかない場合等に、就労することで知識・能力の向上や維持が期待される障害のある人 |
雇用契約 | なし | あり | なし |
賃金 | なし | あり(最低賃金以上の給与) | あり(月額3,000円以上の工賃) |
利用期間 | 原則2年間 | 制限なし | 制限なし |
年齢制限 | 65歳未満(65歳以上も要件を満たせば利用可能) | 65歳未満(65歳以上も要件を満たせば利用可能) | なし |
利用料 | 月額0円~37,200円(所得に応じて変動) | 月額0円~37,200円(所得に応じて変動) | 月額0円~37,200円(所得に応じて変動) |
一般就労への移行者割合※ | 56.3% | 22.0% | 10.1% |
一般就労への移行者割合がそれぞれのサービス種別によって違うことからも分かるように、就労移行支援が一般企業へ就職する人の割合が一番大きく、反対に就労継続支援B型が一般企業へ就職する人の割合が小さくなっています。
「はじめから就労移行支援に通う」という人もいる一方で、「いきなり就労移行支援に行く自信がないため、まずは就労継続支援A型に通ってみてスキルや体力が向上してきたら就労移行支援に通って一般企業への就職を目指す」など、一般就労へのステップは人によって様々です。
就労系障害福祉サービスの種類
ここでは、就労移行支援事業所や就労継続支援A型・B型事業所などの就労系障害福祉サービスの種類やその目的などについて改めてご紹介していきます。
【就労系障害福祉サービスの一覧】
- 就労移行支援
- 就労継続支援A型
- 就労継続支援B型
- 就労定着支援
就労移行支援事業所とは
就労移行支援事業所とは、一般企業等で働くことを希望する障害のある人が、訓練や実習等を通して、適性に合った職場への就労や定着を目指すサービスです。
就労に必要な知識やスキル向上のためのトレーニングや、個々の適性に合った職場選び、就職後も職場での定着のために必要な相談などのサポートを受けることができます。
就労継続支援A型(雇用型)事業所とは
就労継続支援A型(雇用型)事業所とは、一般企業等で働くことが難しい障害がある人等が、雇用契約を結んで就労の機会を得るとともに、能力等の向上のために必要な訓練を行うサービスです。
就労継続支援A型事業所で働く中で、一般就労に必要な知識や能力が高まった場合は、一般企業で働くためのサポートを受けることもできます。
就労継続支援B型(非雇用型)事業所とは
就労継続支援B型(非雇用型)事業所とは、一般企業等で働くことや雇用契約に基づく就労が難しい障害のある人が、就労の機会を得るとともに、能力等の向上のために必要な訓練を行うサービスです。
就労継続支援B型事業所へ通う中で、一般就労に必要な知識や能力が高まった場合は、一般企業で働くためのサポートを受けることもできます。しかし、先ほどご紹介したとおり一般就労への移行者割合は令和3年度時点で『10.1%』と、他の就労系障害福祉サービスに比べると低くなっています。
就労定着支援とは
就労定着支援とは、就労移行支援や就労継続支援等から一般就労へ移行した障害のある人が、就労に伴う生活面の課題に対応するためのサポートを受けることができるサービスです。
就労定着支援のスタッフが原則月に1回以上、自宅や就職先の企業等を訪問することになっており、利用者は日常生活や社会生活面の悩みをスタッフに相談し、解決のためのサポートを受けることができます。
就労移行支援と就労継続支援を併用することはできるの?
複数の障害福祉サービスを組み合わせて利用することについて、厚生労働省は「介護給付費等に係る支給決定事務等について(令和5年4月版)」で、複数の日中活動サービスを組み合わせて利用することは可能だが、同じ日に別のサービスを複数利用することはできないと示しています。
日中活動サービスについては、その効果的な支援を図る観点から、通常、同一種類のサービスを継続して利用することが一般的であると考えられるが、障害者の効果的な支援を行う上で市町村が特に必要と認める場合には、複数の日中活動サービスを組合せて支給決定を行うことは可能である。なお、複数の日中活動サービスの支給決定を受けている場合でも、日中活動サービスに係る報酬は一日単位で算定されることから、同一日に複数の日中活動サービスを利用することはできない(同一日に同一サービスを異なる事業所で利用した場合を含め、同一日においては、一の事業所以外は報酬を算定できない。)。ただし、市町村が日中活動サービスの利用と併せて宿泊型自立訓練が特に必要と認めた場合を除く。
介護給付費等に係る支給決定事務等について(令和5年4月版)
一方、鳥取県鳥取市の「鳥取市 障害福祉サービス支給決定基準(令和3年9月改正)」では、就労移行支援と就労継続支援の併用は不可とされています。
このように、厚生労働省は就労移行支援と就労継続支援の併用について明確に禁止はしていませんが、市区町村が禁止している例も多く、実際には併用する例は少ないようです。
就労移行支援と就労継続支援、どちらに通えばいい?
就労移行支援か就労継続支援か、どちらのサービスに通えばいいのか分からないと感じている方もいらっしゃるかもしれません。
人によって障害も働くことへの希望も様々ですので一概には言えませんが、一般的にどんな人にどのサービスが向いているのかご紹介していきます。
※2027年4月以降は、新たに就労継続支援A型/B型事業所を利用する場合、原則として「就労選択支援」を受ける必要があります。
就労移行支援事業所がおすすめな人
- できるだけ早く一般企業等へ就職したい
- 現職を休職中である
- 1人で就職活動をしているが、就職先が決まらなくて不安
- 就労継続支援で力をつけたので、一般就労を目指したい
- 前職を退職後ブランク期間があり、すぐの就職に不安がある方
就労継続支援A型事業所がおすすめな人
- すぐに一般企業で働くのは難しいかもしれないが、適切な配慮を受けながらいずれは一般就労を目指したい
- 就労移行支援を利用したが、一般企業等への就職に結びつかなかった
- 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、一般企業等への就職に結びつかなかった
就労継続支援B型事業所がおすすめな人
- まずは生活リズムを整えたい
- 企業や就労継続支援A型での就労経験があるが、年齢や体力の面で就職が難しい
- 障害基礎年金1級を受給している
就労移行支援事業所、就労継続支援事業所ともに、それぞれの事業所に様々な特色があり、スタッフや利用者によって雰囲気も変わってきます。通所する事業所を決める際は、いくつかの事業所について調べ、比較検討してみてください。
就労移行支援・継続支援に関するよくある質問
最後に
ここまで、就労移行支援事業所と就労継続支援A・B型事業所の対象者や賃金の有無等の違いや、どんな人にどのサービスが向いているのかなどについてご紹介してきました。
一般企業で働くことへの自身の希望や、年齢・体力面の違いなどによって、どの就労系障害福祉サービスを選ぶのかが変わってきます。適切な事業所を選ぶためにも、いくつかの事業所を比較検討してみてください。
デイゴー就労支援ナビでは、お近くの就労移行支援事業所や就労継続支援A型・B型事業所の特徴や空き状況などをチェックすることができますので、ぜひご活用ください。
最後までお読みいただきありがとうございました!